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生命保険募集人の矜持 後編

公開日:2023-06-12 06:00

目次

※前編の続編となります。

■人生の質を問う

クオリティ・オブ・ライフ(人生・生活の質)の視点から言えば、がんは死に方としては恵まれたカタチだと言われることがあります。

別れも思いも告げられない、いわゆる突然死ではなく、ある程度は死に対する準備ができること、そして家族や大切な方に、想いを伝える時間や機会が残されていると考えられるからです。

●闘病のためのファイティングマネーとして

リビングニーズを「回復されるためのファイティングマネーとして、活用されませんか?」とご本人と奥さまに提案したものの、やはり即答はされませんでした。そりゃそうですよね。ある意味では、死(余命宣告)を受け入れるに等しいのですから。

それからも何度もお会いし、先生のご家族さまの保険も見直しながら、リビングニーズの諾否を待ちました。

そして約1月後に改めてご自宅によばれ、リビングニーズの手続きをお願いしたいとのお申し出をいただきました。

●病気のこと以外に気をつかわせてしまう

ただし、先生ご本人の覚悟は決まったものの、別の気がかりがあったようです。

主治医の先生がその分野では高名であることから、余命宣告をお願いすることで気分を害されないか。また、その先生はかなり多忙を極めているとのことで、私の申し出を届ける機会があるかどうか、を非常に気にされていました。

筆者が「時間もご指定いただき、現地に伺うことも厭いませんので、リビングニーズの説明をさせて欲しい。」と伝言を依頼したところ、「〇月〇日の午後〇時、〇〇〇〇番に電話してくるよう。」にとのお返事がいただけました。

●責任感の重さを感じながら

そして、これ以上ない責任と緊張を感じながら、主治医である腫瘍外科部長に電話しました。

その医師に伝えたことは3点です。

  1.  医者の余命宣告が違った場合(期間が延びたり)にも、医師と病院側へ責任の追及や問い合わせなどありません。
  2.  もちろん患者様へ返金を求めるような迷惑のかかることは一切ありません。
  3.  またご本人が治療をあきらめるわけではありません。むしろ、より積極的に治療・闘病に専念するためのファイティングマネーとして活用します。

と伝えました。時間にしてほんの2.3分のことだったと思います。

その医師がしばし逡巡されたのち、診断書を書いてくださるという確約を取り付けた時の安堵感は今も忘れられません。

●残してゆく家族への気遣い

それから1週間以内には、余命4ケ月という診断書を受け取り本社へ請求し、無事に3,000万円弱の生前給付金を受け取っていただくことができました。

経済的な意味での扶養はすでに終えられていたにも関わらず、やはり残していく家族のことをとても気にされており、けっして贅沢な使い方はされませんでした。

本件では、治療費などの経済的負担の解消が目的ではなく、例えば通院治療に伴う、身体的・精神的負担の軽減のために、病院近隣のホテルやウィークリーマンションの利用などを提案させてもらいました。

その後もやはりご自宅のほうが気も休まるのか、都会の大きな病院に片道2時間半の道のりを、奥さまに自家用車を運転してもらい、つらくしんどい治療をつづけられました。

それでも、少し治療が落ち着いた時期を見計らい、ご家族4人水入らずで、北海道旅行に行かれました。本当にたくさんの写真を撮られていて、気恥ずかしそうに筆者にも見せてくれました。いまでもご自宅のリビングに所狭しと飾られています。

また、ご自身の勤め先であった学校の卒業式にも出席され、学校の子どもたちや他の先生方からもとても歓迎されている様子がビデオ撮影されたものを、わざわざ再生して見せてくださいました。そのビデオのなかに映る先生の祝福にみちた笑顔が、筆者にとっても、うれしくてうれしくて仕方なかったものです。

そして、約半年後、先生はお亡くなりになりました。

■血のかよう想いのこもった生命保険を届けていきたい

日本では毎年100万件以上の死亡保険金支払い事由が発生しています。そのうちのほんの1件の支払い事案にすぎませんが、ここにはけっして簡単には言い表せない、人と人との関係性、感情の機微、時間の経過、そして未来へとつながる縁などさまざまなものが含まれています。

本件では、死亡保険金のみならず他の資産も多く、相続に関して決定的に大きな役割は果たせなかったものの、生命保険が持つ機能の一部を、しっかりと活用できたのではないかと自負しています。

保険機能を熟知し、最大限の利用方法をお客様へご案内することはもちろん大切なことです。ただ、生命保険という合理的な機能を有する商品を、単にシステマチックな利用にとどまらない、血のかよう想いのこもったものとしてお届けすることこそが、われわれ保険募集人の本来の存在意義ではないかと思える事由でした。

けっして大げさではなく、筆者が死ぬまで忘れえない出来事のひとつとなっています。

北原 大策(きたはら だいさく)

大学卒業後、様々な業種と大中小規模企業での様々な役職をそれぞれ経験し、
32歳で某外資系生命保険にリクルートされ転職、15年間トップセールスとして活躍。
50歳を機に総合保険代理店に転職し、更に活動ステージを広げるため、学びと実践の充実した日々を過ごす。
笑顔相続道10期生(関西)
相続コンサル実務塾3期生
中央大学法学部3年次編入学
[保有資格] 2023年MDRT成績資格会員(Top Of the Table)
 TLC(トータルライフコンサルタントFP)
相続診断士
 国家資格キャリアコンサルタント NLPプラクティショナー、メンタルヘルスカウンセラーなど

[問合せ先]
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合同会社リレーションズ 代表
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