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生命保険募集人の矜持 前編

公開日:2023-06-05 06:00

目次

■はじめに

生命保険の機能は、相続問題と親和性が非常に高く、切っても切れない関係であると言えます。今回は、そんな身近な生命保険の機能の中でも【リビングニーズ特約】の活用実例を筆者の経験を基に述べたいと思います。 ※個人情報保護の観点から一部内容を加工しています。
また、長くなるため前編と後編の2回に分けていますが、是非、次週も読んで頂けると嬉しいです。

■リビングニーズについて

リビングニーズは[生前給付金]と訳され、発祥はアメリカの某保険会社が開発し、広く業界へ浸透させたいがため、敢えて特許を申請しなかったという逸話があります。

保険に加入されている被保険者が、余命6月以内など一定の余命期間と診断された場合に、死亡保険金の一部または全部を生きている間に受け取れる特約です。

 ●リビングニーズのメリットとデメリット

一般的なリビングニーズの【メリット】と【デメリット】はつぎのとおりです。

[メリット]

・生前給付金を活用することで、自由診療(全額自己負担)など治療方法や範囲が広がる。
・受け取られた生前給付金の利用目的は一切限定されない。(もちろん治療以外への使い方も限定なし)
・余命宣告期間以上に生きられた場合も返金の必要はない。
・受け取られた生前給付金は非課税である。
・支払い中であった場合の保険料は以後不要となる。(支払い対象になった保険金部分)
・必要な金額を指定して受け取れる。(下限・上限あり)

[デメリット]

・使い切らずに亡くなった場合、残金は相続税の課税対象となる。
・死亡保険金の総額が減る。
・本人が余命を知ってしまう可能性がある。
・一定の余命期間分の利息と保険料が、請求金額から差し引かれる。
・分割で受け取ることはできない。
※あくまで一般的な特徴です。詳しくは実際にご契約の生命保険会社にてご確認ください。

■申請した実例

筆者が実際にリビングニーズを申請したケースは、その被保険者さまは7,000万円以上の死亡保険金をご契約されており、当時在籍していた会社規約では上限3,000万円までを1回限りにおいて、支払いが可能というものでした。

●なんの予感も前触れもなく

この被保険者さまは、筆者の子が通う学校の先生でした。

お預かりしていた契約の保障額があまりに大きく(というのも2人のお子さまは既に社会人として独立されており、奥さまもお仕事をされておりました)、保険料と保障額の見直し(削減の方向で)のご案内を予定しておりました。

当時、筆者はPTAの本部役員をしていて、学校でも常々お会いすることもあり、いつでもお話しできるからという甘えもあったのでしょうか、そのまま約半年が経過しました。

そんなある日、学校へ通う筆者の子が「〇〇先生、病気でしばらくお休みするんだって。」と夕食時に教えてくれました。その日の全校集会の場で話されたようです。

しばらく休まれるということは余程のことではと気になり、後日改めてご本人に確認すると「定期健診で精密検査を指摘され、その結果、「すい臓がんが見つかった。」とのことでした。

既契約を再度確認したところ、医療保険のご契約は無かったものの、教職員の方の健康保険は、共済組合でかなり手厚く守られていることは知っておりましたので、正直、治療費に関してはあまり心配するには及びませんよとお伝えし、そのことに安心はしてもらえはしたものの、やはり先生ご自身のお身体が心配でした。

■リビングニーズ特約の活用を提案

ご存知の方も多いと思いますが、すい臓がんは、がんが発生しても初期症状がほとんどなく、非常に見つかりにくいため、発見されたときには既に手の打ちようがないというケースが多く、実際この被保険者さまも、手術が困難なため、いったんはがんを小さくするための放射線治療がはじまりました。

なんどもご自宅に様子を見に行かせてもらいましたが、やはり治療後の副作用がひどく、身体はやせ細り、頭髪や眉毛もすべて抜け落ちておりました。

それでもお会いするときは、とても気丈にふるまわれていたことが、今でも強く印象に残っています。

そんななか、回復される願いを込める意味で「今お持ちの生命保険にはリビングニーズ特約というものが付加されていますので、回復するためのファイティングマネーとして、この特約を活用されませんか?」とご本人と奥さまに提案しました。

■死を目前に意識したとき、人は何を思うのか

 いくら正当な権利とは言え、やはりリビングニーズ申請の案内には、筆者にとっても覚悟が必要でした。お伝えするタイミングや、苦しい治療や副作用で不調な身体、そしてただでさえ不安定であろう感情の機微を無視するわけにはいかないからです。

本来であれば自分が死んでしまった後に渡される多額の保険金。それを自身が生きているうちにその多額の金額を受け取り、そして死を目前にして、大切な人に渡すというのは、人をいったいどんな気持ちにさせ、何を思うのでしょうか。

何気ない日常では、なかなかじっくりと考える機会もないかもしれない、自らの人生について。そしてその意味。あるいは役割。  また病気に対する不安、あるいは怒り、死に対する恐怖、残していく家族への言い尽くせない想い、ご縁ある人たちへの感謝など、悲喜交々の感情が次から次へと押し寄せるであろうことは、想像に難くありません。  それは喜びへと昇華できるものなのか、それとも悲しみに暮れるだけのものであるのか。  筆者自身、今はその答えが出せません。

後編では、リビングニーズをご提案させていただいてからのご様子などを筆者の感じた事と共にお伝えさせていただきます。

北原 大策(きたはら だいさく)

大学卒業後、様々な業種と大中小規模企業での様々な役職をそれぞれ経験し、32歳で某外資系生命保険にリクルートされ転職、15年間トップセールスとして活躍。 50歳を機に総合保険代理店に転職し、更に活動ステージを広げるため、学びと実践の充実した日々を過ごす。 笑顔相続道10期生(関西)、相続コンサル実務塾3期生、中央大学法学部3年次編入学 [保有資格] 2023年MDRT成績資格会員(Top Of the Table) TLC(トータルライフコンサルタントFP) 相続診断士 国家資格キャリアコンサルタント NLPプラクティショナー、メンタルヘルスカウンセラーなど

[問合せ先] 株式会社ライフプラザパートナーズ FA 090-2016-4800 kitahara4847@gmail.com

合同会社リレーションズ 代表 090-3041-4800 relationz4800@gmail.com