長男に1円も遺したくないと相談に来られた 地主の奥様に何があったのか?解決策編②
公開日:2022-09-12 06:00
目次
引っ張ってしまいましたが、
今日は最後までお話ししたいと思います。
【相続排除】という言葉はご存じですか?
【相続排除】とは被相続人が、遺留分を有する相続人の廃除を家庭裁判所に求め、これが審判により認められることにより、相続人から除外される制度(民法892条、893条)です。
この【相続排除】を長男が亡くなり代襲相続人となった孫に対して検討したいとおっしゃいました。
確かに継続的に暴力を奮われていて医者の診断書もあるので排除はできると弁護士も判断しました。
しかし、私自身はどうしてもそれでいいのか?という思いがぬぐえません。
というのも長女には子がいません。
長女が相続した場合、もし全財産を夫にという遺言を作成したら財産は長女の夫のものになり、
その先は夫の親族へと移っていきます。
本当にそれでいいのか・・先祖代々の土地を守りたいと口癖のように仰っているのに孫はダメで血のつながらない長女の夫の親族ならいいのだろうか・・・
まだ、私自身が相続コンサルとして駆け出しの頃でしたのでなかなか疑問を口にすることができません。
排除の手続きを進めてしまったらもっと言い出せなくなる!
ある日、勇気を振り絞ってその疑問を口にしました。
その時の奥様の表情も忘れることができません。
はっ!!という声に出ない声を吐き出しつきものが落ちたかのような表情をされました。
『大切なことを思い出しました。うちは女系家族で私も私の母も婿養子をとりました。
長男が生まれた時、待望の男の子ですごく甘やかしました。
また、孫も同じく男の子で更に甘やかして育てました。
それが結果、ああいう子にしてしまったのかも・・
お小遣いも宗教にはまるまでは、欲しいだけ与えていたのは私。
今、あの子があんな風に育ってしまったのは
私にも責任があると気が付きました。
確かに暴力を奮われることは怖いし嫌だけど
養子をとってまで守ってきた先祖代々の土地はやはり血を分けたものに相続させないとだめですね。
少し孫との向き合い方を考えてみます。
一橋先生に言われないと大事なことを忘れるところでした。
ありがとうございます。』
私がありがとうございます、と言われた初めての仕事です。
その後、この奥様は長女さんの家からホームに移りました。
お孫さんとは時々会って話ができるまでには仲が修復したと連絡が1度ありましたが、2年前に肺炎でお亡くなりになりました。
遺言はまだ、気持ちが定まらないからと未完のままでした。
今は遺産分割を巡り叔母と甥とで係争中です
何が正解か本当にわかりません・・
私自身がまだ未熟だったころの案件のため後悔もたくさんあります。
今でもどうすることが正解だったのか答えが出ていません
救いは、奥様が私には感謝していると長女さんにはいつも話していた・・ということでしょうか。