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行方不明の相続人問題を解決!不在者財産管理人について

公開日:2025-01-20 00:00

目次

■ 揉めなくても遺言書は必要!?

「我が家は揉めないから大丈夫」― 相続対策の話題でよく耳にする言葉ですが、揉める心配がなければ本当に大丈夫でしょうか。

テレビドラマのような遺産をめぐる対立が生じないとしても、遺言書などの相続対策が必要なケースの一つに、相続人の中に行方不明者がいるという場合があります。

遺産分割協議は、共同相続人全員の署名押印が必要となりますが、行方不明者や音信不通の相続人がいると、遺産分割協議を進めることができず、その後の手続きが頓挫してしまいます。

そこで、今回のコラムでは、相続人の中に行方不明者がいる場合の対処法について紹介します。

 

■ 不在者財産管理人とは

従来の住居所を去り、容易に戻る見込みのない者を「不在者」といいます。

不在者の財産を保全・管理するために、家庭裁判所は、不在者財産管理人を選任することができます。

相続手続きにおいては、不在者財産管理人が行方不明者に代わって遺産分割協議に参加し、相続人全員の合意を得る役割を果たします。

遺産分割事件における不在者財産管理人は、利害関係人である他の相続人の申立てによって選任され、実務上は弁護士が選任されることが多いです。

 

■ 選任申立ての手続き

一般的には、利害関係人(例:共同相続人、債権者など)又は検察官が、不在者の従前の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、申立てをする必要があります。

申立て書類には、不在者の戸籍謄本戸籍附票不在の証明資料などが必要です​​

捜索願受理証明書(警察が捜索願を正式に受理したことを証明した書類)や「宛所に尋ねあたりません」と返送された郵便物などが、不在のおおよその証明資料となります。

遺産分割を目的とする申立てにおいては、相続に関する書類の添付も必要となります。

また、不在者の財産から管理人の報酬を支払うことが見込めない場合申立人が30万円~50万円程度の管理費用を予納する必要があります。

 

■ 家庭裁判所の調査とは

申立てがされると、家庭裁判所は、警察等の関係官署等に調査をして、不在者の不在状況を把握することとなります。

不在者の所在が判明すると、不在者財産管理人は選任されず、そのまま遺産分割協議を進めることとなります。

他方で、家庭裁判所の調査によっても所在が判明しなかった場合には、不在者財産管理人が選任され、不在者財産管理人との間で遺産分割協議を進めることとなります。

筆者の経験では、家庭裁判所がハローワークに照会をしたことで、勤務先の従業員寮で生活していることが判明し、従業員寮を送達先として遺産分割調停を申し立てたケースがありました。また、刑務所に収監されていることが判明する事例もあるようです。

 

■ 選任後~不在者財産管理人の職務が終了するまで

不在者財産管理人は、1年に1程度、家庭裁判所に対して、管理報告書を提出する必要があります。

 (例:銀行口座の残高、不動産の維持費や管理状況、収入や支出の明細など)


◉報酬はどのように支払われるのか?

不在者財産管理人は、報酬付与の審判を申し立てることにより、報酬が付与され、管理している不在者の財産や上述の予納金から支払われます。


◉職務が終わる条件とは?

不在者財産管理人の職務は、

  1. 不在者が現れたとき
  1. 不在者の死亡や失踪宣告
  1. 管理すべき財産がなくなったとき
に終了します。申立ての動機となった当初の目的を達すると、職務が終了するわけではありません。


◉職務終了後、財産はどうなる?

職務が終了したら、管理していた財産を以下のように引き継ぎます:

  • 不在者が現れた場合:不在者本人に財産を引き渡す。
  • 不在者が死亡または失踪宣告された場合:不在者の相続人に財産を引き渡す。


■ 遺言書の重要性

このように、相続手続きにおいて、相続人の中に行方不明者がいる場合、その存在は手続き全体を複雑化させ、遺産分割協議の大きな障害となります。

遺言書があれば、遺産分割協議を行う必要がありませんし、遺言執行者が指定されている場合、その執行者が遺言に基づいて財産を分配するため、不在者の所在にかかわらず、手続きが円滑に進みます。

また、遺言書があれば、不在者財産管理人を選任するための手間や費用を省くこともでき、他の相続人にとっても負担を軽減できます。

不在者を含む相続問題をスムーズに解決するためには、遺言書を活用することが最善の方法の一つです。

 

■ 行方不明者がいる場合にできること

行方不明者がいる場合に不在者財産管理人を選任することは、遺産分割協議を円滑に進めるために重要です。

また、選任手続き中に所在が判明する可能性も考慮すると、この手続きは相続人全員の利益を守るために不可欠なプロセスであると言えます。

不在者財産管理人選任の手続きは煩雑ではありますが、弁護士や司法書士のサポートを受けることで、スムーズに進めることができます。

もし相続手続きで行方不明者がいる場合は、早めに専門家に相談し、適切な対応を進めることをお勧めします。

 

【筆者プロフィール】

大石誠(おおいしまこと)

  • 弁護士(神奈川県弁護士会所属)
  • 笑顔相続道®正会員
  • 縁ディングノートプランナー

 

「相続とおひとりさま安心の弁護士」

  • 平成元年生まれ 平成28年弁護士登録
  • 横浜で、おひとりさま・お子様のいないご夫婦が、老後を笑顔で過ごすための終活・生前対策と、遺言・遺産分割をめぐる相続トラブルの解決を得意としています。
  • 遺言、後見、死後事務はもちろん、提携先の身元保証会社の紹介なども含めて、相続・終活についてワンストップで対応しています。
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【筆者への問い合わせ】

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