その"思い"、家族に直接伝えていますか?
公開日:2025-03-24 00:00
目次
■「家督相続」を受け継ぐBさんの決意
先日、95歳でお亡くなりになったお客様(Aさん)の保険金支払いのお手続を行いました。
Aさんは先代から引き継いだ不動産が多数ありましたが、遺言により息子のBさんが預金を含め全て相続されました。
Bさんは3人きょうだいの長男、他に2人妹がおります。Aさんはいわゆる「家督相続」の考えをお持ちで、常に家族にはその意向を伝えており、子供たちの間でも共通認識があったため、ここで特にトラブルはありませんでした。
相続したBさんは
「私たちが生きている間は絶対にこの不動産は売れない。これが家を継いだ長男としての責任だ。そして私が亡き後は娘に任せたい。」
と言われ、今後のBさんの相続対策について相談を受けました。
■「娘が困らないように」とは?
Bさんには一人娘のCさんがいます。Cさんはすでに結婚し子供もいますが、県外で暮らしています。仕事でも責任ある立場でなかなかBさんのいる地元には帰ってくることができません。将来的にも帰ってこないことを想定し、「私が亡き後、Cにとにかく迷惑をかけたくない、だから1円でも多くお金を増やしたいんだ」と相談がありました。
ただ、この「困らない」というのは具体的に何に対してなのでしょうか。
話を聞いていくと、Cさんが不動産を今後も維持管理していくうえで、Cさんの相続税の支払い、複数ある不動産の維持費などお金の問題に対しての不安があることがわかりました。
■ お金以外にも困ることがある
税理士へ依頼し計算してもらったところ、相続した不動産の数は多くあるものの、そこまで財産評価は高くなかったため、相続税の予定額は現在加入の生命保険で十分賄えることがわかりました。
また、Cさんご自身にもかなり貯えがあり、相続後の死後事務手続きを一括で専門家に依頼したとしても問題ないことがわかり、お金の問題についてはクリアできそうであることをお伝えしました。
ただ、不動産については古いビル、立地のあまり良くない駐車場が多くあり、現在は不動産の維持費は賃料収入で十分賄えているものの、将来的には不安が残りそうであることがわかりました。この点が不安でお金を残そうと考えておられたようです。
■ 相続コンサルタントの目線から
不動産業者へ相続した不動産の分析を依頼したところ、この地域は人口減少が進んでおり、不動産を維持していく前提に立つ場合、大きなテコ入れが必要になる可能性もあること、ビルのいくつかはこの10~20年以内には大規模修繕が必要になる可能性もあることがわかりました。
Bさんは現在70歳。いずれの場合にしても今後判断能力が低下してきた場合は不動産の維持が難しくなる可能性がありました。
そうなると遠方に住む「迷惑をかけたくない」娘のCさんに頼らざるを得ない場面がやってくるかもしれないことをお伝えしました。
こちらについてはお金だけでは解決が出来ません。
■「思い」は大事、「話し合い」も大事
筆者はBさんに、Cさんと話をしてみることを提案したところ、筆者にもいてほしいとのことだったので、Bさん、Cさんと3人で会いました。
Cさんは「お父さんの思いは大切にしたいが、私は地元に帰るつもりはないし、海外勤務もあるので不動産を残されても困る。管理も大変そうだし、欲を言えばまだ売れる今のうちに整理してほしい」という意見でした。
しかしBさんは「Cの気持ちも分かる。ただ、うちの先祖代々の土地なんだ。相続税が払えなくて一部手放すのはやむを得ないかもしれないが、すべてを売ることはできない。」ということで、この日具体的なことは決まりませんでした。
■ 家族間の対話で引き継がれる"思い"と不動産相続
現段階では不動産をどうしていくのかはまだ決まっていません。
しかし、今回の話し合いでBさん、Cさん共に「お互いの考えをはっきり聞くことができてよかった」と言われ、今後も定期的に話し合いをしていくようです。
Bさんの「あとは娘に任せる」は、基本的にはCさんが不動産を維持する前提での「任せる」であり、やむを得ない場合を除き売却はしてほしくない意向です。
だから維持するためのお金を増やしたかったのです。しかしCさんはそもそも不動産を手放したいわけですから、全く違います。
今回の話し合いで初めてそれが分かりました。
衝突を避けるために家族に自分の意見を言わないご家庭をこれまで筆者は何度も見ましたが、意見が合わないことが決して悪いとは思いません。
現在CさんはBさんの意向を受け、すべては無理だが一部は不動産を維持することも検討しているそうで、話し合いがなければCさんの気持ちは変わらなかったでしょう。
笑顔相続の第一歩は家族間のコミュニケーション。家族間の対話は元気なうちしかできません。
これからのことを家族と話し合ってみませんか。
【筆者プロフィール】
福本 知輝 (ふくもと ともき)
福本FP事務所 代表
- 広島県相続診断士会 会長
- 寺院コンサルタント
- 2級ファイナンシャルプランニング技能士
- 相続診断士
- 笑顔相続道正会員
- 終活カウンセラー1級
- 縁ディングノートプランナー™
西日本を中心に一般の方のライフプランや資産運用に関する幅広いアドバイスは勿論、寺院や公務員向けのセミナーも得意とし、豊富な知識と経験を持つ。「生前対策」から「相続発生後の次世代への引き継ぎ」までを一貫してサポートすることで、お客様の安心と笑顔を大切にしている"笑顔相続専門家"です。
【筆者への問い合わせ先】
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