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高齢者が知っておきたい損害保険の内容と注意点 ~火災保険編~

公開日:2025-02-24 00:00

目次

損害保険には、自動車保険や火災保険、賠償責任保険、旅行保険などさまざまな種類があります。

高齢者が加入を検討する場合、自分の生活スタイルやニーズに合った保険を選ぶことが重要です。

この記事ではとくに火災保険について述べたいと思います。


■ 火災保険の保険金額と建物の評価


建物の火災保険に加入する際、建物の評価額を設定する際に注意すべき点は、実際の建物の再建築費用を反映させた評価をすることです。
多くの保険では、評価額が建物の老朽化や価値の低下を反映させた「時価」ではなく「再調達価額」を基準にしています。
また、評価額が低すぎると、火災などで損害を受けた際に十分な補償を受けられない恐れがあるため、適正な評価額を設定することが大切です。

さらに、地元の建築費や物価の変動を考慮し、定期的に評価額の見直しを行うことが望ましいといえます。

 

■ 自然災害に備える確認ポイント

台風などによる風災や水災の補償範囲は保険会社や契約内容によって異なります。

①台風や豪雨、洪水などに対応できる契約内容かを確認しましょう。


②風災や水災による損害に対する自己負担額(免責金額)が設定されている場合があります。

 免責金額が高いと、いざという時に保険金が少なくなることがあるため、注意が必要です。

③住んでいる地域が風災や水災のリスクが高い場所かどうかを確認し、必要に応じて補償を選択することを検討しましょう。


④水災には河川の氾濫や浸水、土砂崩れなどがあります。河川や山・崖が近くにないからといって安心できません。

 近年は「内水氾濫」といって、河川や排水設備の処理能力を超える降雨などにより、都市部などで排水が間に合わず、側溝や下水溝から水があふれ出して被害を及ぼしています。また、水災の支払い基準や支払い金額が保険種類によって異なるためチェックが必要です。


■ 水漏れ損害って?

火災保険では「水濡れ(みずぬれ)」事故が対象となる契約もありますが、原因によって、火災保険金の支払い対象になるか?もしくは、支払い対象になればどの種類の保険金が支払われるのか?が異なります。

台風の大雨によりクロスの壁や天井に水濡れ損害が発生、原因は?


・窓の閉め忘れにより雨水が吹き込んだ→対象外

・台風による大雨で落ち葉やゴミが飛んできたり流れてくることで樋や排水溝が詰まりオーバーフローを起こして雨水が溢れ出た→対象(給排水設備に生じた事故)

・老朽化した屋根から雨水が染み込み天井裏を伝って室内が水浸しになった→対象外

・大雨で側溝から雨水が溢れだし床上浸水となった→対象(水災 ※床上浸水または地盤面より45㎝以上の浸水)

など、原因により火災保険の支払い対象かどうかが違います。

 

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■ 高齢者におすすめ:類焼損害特約

火元になって、近隣に燃え移ってしまった場合、失火であれば「失火責任法(正式名称は」失火ノ責任ニ関スル法律)」という法律により守られており重過失でない限り出火元の賠償義務は発生しません。

ところが、近隣のお宅に火災保険加入が無かったとしたら、義務はないとはいえ建替費用や復旧費用を請求されることもあります。そんなとき、類焼損害特約が付帯されていれば近隣に対して保険で賠償することができるのです。

高齢になると注意能力が衰え、ガスコンロの火を着けていたことを忘れてしまったり、仏壇のロウソクの火の不始末などによって火災をおこしてしまう心配があるため、とくに高齢者には付帯をおすすめしています。

  

料理中の火災

 

 ■ 最近の火災保険事例

筆者は日々、前述以外の原因での火災保険に関する事故の対応をしています。

そんななか、特筆しておきたい事例をご紹介したいと思います。

 

1. 思わぬ賠償事故


自宅不動産以外に一軒家や分譲マンションなどの不動産を所有していて、賃貸物件として貸しているケース

建物の所有者である限り、当然に管理者責任が発生します。

管理者責任を問われるようなトラブルが発生した場合、【施設賠償保険】に加入していないと損害保険では担保されません。

高齢者が親族に居住させている(賃料の有無問わず)場合もでも同様です。

筆者は、多くの分譲マンション1棟のすべての居室の個人賠償保険をお預かりしているのですが、以前、次のようなトラブルに関わりました。

とある1室、3階に住む30歳代のご夫婦からのご相談でした。

床下の水道管(専有部分)から水漏れが発生し、階下の居室の天井や壁、家財道具に水濡れ損害を起こしてしまったというもので、老朽化により水道管に亀裂が入ったことが原因でした。

所有者の管理責任が問われるため、通常、居住者の日常生活にかかわる賠償事故を補償する個人賠償保険で対応します。

ところが、その居室の所有者は居住者夫婦(奥様)の実父だったのです。そのため、その家族が加入している個人賠償保険では保険適用されず、所有者である実父が責任を問われたのでした。実父に施設賠償保険の加入が無かったため、裁判で決定した数百万円に及ぶ賠償金を数年経った現在でも月々支払っています。

年間数千円の保険料負担で施設賠償保険に加入してさえいれば・・・と考えさせられる事例でした。

不動産投資の一環で所有している分譲マンションなどの不動産の保険は、火災保険だけでなく、いま一度チェックが必要です。

 

2. 建物外部から衝突された事故


喫茶店を営む80歳代のご夫婦

ある日、その店舗に原付バイクが運転を誤って飛び込んできました。

幸い、店内にいた店主夫妻やお客さま、バイクの運転手にもケガはありませんでした。

大きなガラス窓は見事に割れてしまったのですが、誰にもケガが無くてガラス修理のことは大丈夫だから、と連絡先も聞かず仕舞いだったのです。

ところが、ガラス屋さんで修理見積を依頼すると、60万円もの高額だったのです。そこで、筆者にご相談がありました。

店舗建物や什器備品に火災保険のご契約があります。【建物外部からの物体の落下・飛来・衝突】に対応できる火災保険にご加入いただいているので、修理費は保険でお支払いできますよ、とお応えし安心していただきました。

翌日、バイクの運転者(高校生)が母親とともに謝罪に来られ、自動車保険(ファミリーバイク特約)で修理代を弁償しますとのこと、自動車保険で修理代が支払われ、火災保険の請求は取り下げますとご連絡をいただきました。

ちゃんと申し出てくれてよかった!とともに喜んだのと同時に、ご加入の火災保険には臨時費用(10%)が付帯されていたので、損害額60万円の10%の6万円をお支払いすることができました。また、自動車保険の対物賠償などの賠償保険は時価での補償となるため実損額とは差が生じることもあります。

現在の火災保険は実損払が主流で、不足が発生すれば差額を支払うことも可能です。

 

 

■高齢者の保険加入は家族と専門家と一緒に確認を

高齢者が保険に加入する際、契約内容が理解しづらいこともあります。

そのため、家族や信頼できる方と一緒に契約内容を確認することが重要です。特に契約時に説明を受ける際には、家族が一緒に確認し、疑問点を解消するようにしましょう。

高齢者は火災保険のパンフレット、保険見積書、保険申込書(契約書)、保険証券、約款などの多くの書類を見て理解することも困難になってくるものです。

お近くの親族の方や信頼できる保険のプロ、相続診断士・終活カウンセラーなどに相談・チェックやアドバイスを依頼するのも、いまできる終活の一環だと思います。

 

【筆者プロフィール】

岩井 真紀子(いわい まきこ)

京都市内で昭和61年から保険業に携わり、損害保険・生命保険の取り扱いや事故解決のアドバイスをしています。

  • ・笑顔相続道正会員
  • ・縁ディングノートプランナー
  • ・京都相続診断士会 副会長
  • ・相続診断士
  • ・終活カウンセラー
  • ・ファイナンシャルプランナー
  • ・損害保険トータルプランナー