「そろそろ終活して」のその前に ― いつかの「おひとりさま」をも支える、親子の縁ディングノート
公開日:2026-11-09 00:00
目次
■ 親がエンディングノートを書いてくれない
「そろそろ、終活のことも考えておいてね」
親を心配して声をかけたのに、「まだ元気だから」「縁起でもない」と話が終わってしまう。
市販のエンディングノートを渡してみても、棚に置かれたまま。
そんなとき、どうしたら話し合えるのだろうと、もどかしくなるかもしれません。
けれど、そのノートを開くのは、親だけでよいのでしょうか。
いつか一人で暮らすかもしれない自分自身のことも、親子で一緒に考え始められたらと思うのです。
■ 親が話したがらないとき
話したくない理由は、人によって違います。
老いや死を考えることへの戸惑い、財産のことを知られるためらい、これからの暮らしを自分で決めたいという思い。
子が考える「安心のための準備」を、親は"人生を片づけるように言われている"と感じることもあるかもしれません。
ですから、返事だけを見て「うちの親は頑固だから」と決めてしまわずに、何が気になっているのかを聴きたいと思います。
子の側も、急な入院や介護の何を心配しているのか、一つずつ言葉にしてみる。
親のためと思いながら、自分の不安を早く解消したくて答えを急がせていないか。
支える側も、ときどき立ち止まって確かめたいところです。
■今の家族の先にある一人の暮らし

子が独立し、夫婦二人の暮らしになり、やがて配偶者を見送る。
今は家族と一緒にいても、人生の途中で一人暮らしになることはあります。
国立社会保障・人口問題研究所の2024年推計では、一般世帯に占める一人暮らし(単独世帯)の割合は、2020年の38.0%から、2050年には44.3%へ上昇すると見込まれています。[1]
現在、家族と暮らしている方にも、おひとりさまの備えを、自分自身のこれからとして考えていただきたいと思います。
だからこそ、一緒に話せる今の時間に、どんな暮らしを大切にしたいのかを少しずつ確かめておく意味があるのです。
■ママになったら縁ディングノート
筆者は今、縁ディングノートを出産祝いとして贈り、母子手帳への記入と同時進行で書き始める「ママになったら『縁ディングノート』」という取り組みを進めています。

〈母子手帳のそばで、ママ自身の願いもつづる。〉
子の名前に込めた願い。生まれた日のこと。母になった自分が感じたこと。
母子手帳のそばに、そんな言葉を残す、絵本のような一冊を置いておく。
子どもが育ったら、その子自身の言葉も書き足し、母から子へと受け継いでいく構想です。
この発想の原点の一つには、筆者の長男が小学校2年生のときに生活科の課題で作った「じぶんのーと」があります。
生まれたときから今までのことを親に取材しながらつくるノートで、親から子への手紙や、子から親への感謝が、一冊の中に残っていました。
親子の言葉を重ねていく、その温かさを取り入れたいと考えました。
そして、子の成長を母子手帳に記録するそばで、母になった自分の願いや、もしものときに頼りたい人も書き留める。
暮らしの変化に合わせて、連絡先や保険の情報、家族に伝えたいことも少しずつ加えていく。
親になった自分のこれからにも、目を向ける一冊にしたいと思っています。
■孫を囲む時間から三世代の対話へ

〈孫に会いに来た祖父母も、一冊に言葉を添える。〉
そんなやり取りから、祖父母の言葉が一冊に加わる。
ご両親自身の思い出や、これから楽しみにしていることへ、話が広がるかもしれません。
ふだんは「お父さん」「お母さん」として見ている人にも、子どもだったころや、初めて親になった日があります。
孫を囲む時間に、そんな話を聴いてみる。
親を一人の人として知り直す機会にもなるのではないでしょうか。
祖父母が書きたくなければ、話を聴くだけでもよいでしょう。残してよい内容かを確かめながら、家族が書き留めることもできます。
書き終えることを急がず、親も子も自分の言葉を持ち寄れる時間を大切にしたいのです。
■今の言葉を将来の支えにつなぐ
こうして交わした言葉は、将来、本人の暮らしを支える人に、その人を知ってもらう手がかりにもなります。
支える相手は、家族のこともあれば、友人や地域の人、医療・介護などの専門職のこともあるでしょう。

〈一人で暮らすときにも、自分の願いを信頼する相手に伝える。〉
たとえば、何をしている時間が好きなのか、どんな人とのつながりを続けたいのか。
困ったときは誰に相談したいのか。
そうした本人の思いがわかれば、周囲も、何を大切にしながら一緒に考えればよいのかを確かめやすくなります。
子には子の暮らしがあり、離れて住んでいることもあります。
親子で話す時間を持ちながら、必要な支えを誰に頼むかも、本人と一緒に考えておきたいところです。
元気なうちに、相談相手や連絡先を確かめる。
書いた言葉のうち、どの情報を誰と共有するかを本人が選ぶ。
実際の支援に必要な契約や手続きは、専門家と相談して整えていく。
ノートに記した思いを、暮らしを支える準備へとつないでいくことが大切だと考えています。
■家族の外にも続くご縁
家族の形や関係はさまざまです。出産や孫の誕生は、筆者が考える一つの入り口です。
子がいない方、親子では話しづらい事情がある方にも、その方に合った始め方があってよいと思います。
自分の好きなことを書き、信頼する友人に話してみる。
相談できる専門家と、これからの暮らしを考える。
誰と、どこから始めるかは、自分で選んでよいのです。
医療やケアの希望を話し合う「人生会議(ACP)」でも、本人が大切にしたいことを考え、気持ちの変化に応じて繰り返し話し合うことがすすめられています。[2]
縁ディングノートも、その時々の自分に合わせて書き直し、共有する相手や必要な支えを見直しながら使っていけたらと思います。
■今ひらく1ページがこれからの自分を支える
母が書き始めた一冊に、祖父母の言葉が添えられる。
大きくなった子がページを開き、自分の思いを書き足す。
そして、それぞれが自分のこれからを考えるとき、また誰かとノートを開く。
親子でつなぐ縁ディングノートを、そんなふうに人生を通して書き継げる一冊に育てたいと考えています。
いつか一人で暮らす日が来ても、自分が大切にしていることを伝える手がかりが、手元にあるように。
その思いを聴き、一緒に考えてくれる人とのつながりを持てるように。
「そろそろ終活して」と声をかける、その前に。
まずは自分も、親も、一緒に一ページを開いてみる。
今あるご縁の中で、これからの自分を支える準備を始めてみませんか。
■参考資料
[2]厚生労働省「『人生会議』とは?」人生会議ポータルサイト
https://www.mhlw.go.jp/acp-jinseikaigi/about
【筆者プロフィール】
金田京子 (かねだ きょうこ)
ファイナンシャルプランナー

法律事務所・金融機関勤務での経験や知識を活かしながら、専門用語を使わずにわかりやすい言葉で、世代間をつなぐ相続・終活コンサルティングをおこなっている。
おひとりさま相続大学では0期・1期の講師を務めている。
・上級縁ディングノートプランナー®
〒107-0052 東京都港区赤坂5丁目2-33 IsaI AkasakA 1007

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