おひとりさま時代に問われる「死後を支える社会の仕組み」
公開日:2026-06-08 00:00
目次
■おひとさま増加で"知っておきたい制度"
生涯独身のおひとりさまや親族を頼れないおひとりさまが増えるということは、単に「一人暮らしの人が増える」という話ではありません。
病気になったとき、入院や施設入所が必要になったとき、判断能力が低下したとき、そして亡くなった後に、誰が手続きをし、誰が見送り、誰が遺骨を引き受けるのか。
これまで家族や親族が担ってきた役割が、少しずつ社会の側に移り始めています。
その現実を考えるうえで知っておきたい制度の一つが「助葬」です。
助葬とは、経済的な事情や身寄りがないことなどにより、通常の葬儀を行うことが難しい方のために、火葬や納骨など、亡くなった後に必要な手続きを支える仕組みです。
■助葬件数は年々増加傾向へ
社会福祉法人東京福祉会は、社会福祉法に基づく第一種社会福祉事業として助葬事業を行っている、全国でも数少ない社会福祉団体です。
同会の助葬事業には、生活保護法に基づく葬祭扶助のほか、行旅死亡人
(こうりょしぼうにん:
氏名や住所が分からず、遺体の引き取り手がない死者を指す ) や生活困難者に対する葬祭援助も含まれます。
2024年度の助葬件数は3,103件。
このうち葬祭扶助が適用された案件は2,387件でした。
東京都内の葬祭扶助件数における東京福祉会のシェアは約25%とされ、都内における重要な担い手であることがわかります。
一方で、東京都全体の葬祭扶助件数は増加しているにもかかわらず、東京福祉会のシェアは、かつての約45%から約25%へと低下しています。
その背景には、民間葬儀社の参入があります。
以前は敬遠されがちだった葬祭扶助案件にも対応する事業者が増え、
助葬の担い手は、特定の団体に集中する形から、民間を含めた分散型へと変化しているのです。
これは選択肢が広がったという意味では前向きな変化です。
しかし同時に、支援の質、費用の透明性、遺骨の保管、本人の意思の反映、手続きの確認体制など、新たな課題も生まれます。
■助葬とは
葬祭扶助や助葬は、「安い葬儀を選ぶ制度」ではありません。
生活保護法に基づき、
葬祭を行う人がいない場合や、費用を負担することが難しい場合などに、火葬や搬送・納骨など必要な範囲について支援が行われる制度です。
そのため、一般的な通夜や告別式ではなく、火葬を中心とした直葬になることが多くなります。
大切なのは、葬儀の規模や形式ではありません。
亡くなった方の最期を、誰が、どのように、尊厳をもって支えるのかという視点です。
■おひとりさまが亡くなると
近年、単身世帯は増え続けています。
配偶者に先立たれた方、子どもがいない方、子どもがいても遠方に住んでいる方、親族と疎遠になっている方など、事情はさまざまです。
亡くなった後には...
葬儀社への連絡、火葬の手配、死亡届の提出、遺骨の引き取り、納骨、住まいの片づけ、年金や保険の手続き、公共料金や携帯電話の解約、相続手続きなど、多くの事務が発生します。
身寄りがない場合や、親族がいても関係が希薄な場合、その「誰か」が見つからないことがあります。
そのとき現場で対応にあたるのは、自治体、医療機関、介護施設、福祉関係者、葬儀事業者などです。
特に、引き取り手のないご遺体やご遺骨については、自治体が対応を迫られるケースがあります。
親族調査、火葬、遺骨の保管や納骨先の確保など、実務上の負担は決して小さくありません。
だからこそ、元気なうちに準備しておくことが大切です。
■元気なうちに準備を
・ 誰に連絡してほしいのか。
・ 葬儀や火葬について希望はあるのか。
・ 遺骨はどこに納めたいのか。
・ 遺品整理を誰に頼むのか。
・ 契約関係の解約を誰が行うのか。
・ 財産を誰に引き継いでほしいのか。
・ その希望を実行してくれる人は決まっているのか。
必要に応じて、
遺言書、任意後見契約、死後事務委任契約、見守り契約、財産管理契約、葬儀や納骨に関する契約などを組み合わせることも重要です。
■誰もがおひとりさま対策を考える時代へ
助葬の問題は、特別な誰かだけの問題ではありません。
誰もが、いつか「誰に頼るのか」を考えなければならない時代に入っています。
死後を支える仕組みは、これからの社会にとって欠かせないインフラです。
助葬は、その現実を私たちに教えてくれる重要な制度の一つです。
【筆者プロフィール】
一橋香織(ひとつばしかおり)
相続コンサルタント
- 株式会社 相続終活ラボ 取締役会長
- おひとりさま相談窓口「ふくろう」本部
- 一般社団法人縁ディングノートプランニング協会 代表理事
- 《経歴》
- 外資系金融機関を経て、ファイナンシャル・プランナーに転身。
- これまで19年で7,000件以上の相続相談の実績。
- 自身の家族で争う相続を経験し、相続の大事なゴールは「縁まんな相続」と実感。
- 「争う相続をなくし、縁まんな相続の実現」を理念とし、日々お客様と対峙している中で節税優位の相続対策ではなく、笑顔で相続が迎えられる相続の実現のための活動を行っている。
- 《メディア出演》
- TBS「Nスタ」「ビビット」
- テレビ朝日「たけしのTVタックル」
- TBSテレビ「バイキングmoreなど)多数。
- 《著書》
- 家族に迷惑をかけたくなければ相続の準備は今すぐしなさい(PHP)
- 終活・相続の便利帖(日本法令)
- はじめての遺言執行(日本法令)共著 その他、日本法令で共著11冊
- 【筆者への問い合わせ】
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