僧侶である筆者のところに、檀家の方からご逝去の連絡があると、まずは枕経に駆けつけます。
枕経を終えて、その後の通夜・葬儀の段取りの相談になると、
最近は「家族葬で執り行いたい」と言われることが増えました。
また、新型コロナ以降の地域内のお悔やみ回覧では「家族葬で行い、御香典は辞退します」と
書かれていることが多くなっています。
ただ、家族葬と書かれていた場合に、
一般の方の参列は全くできないのか、故人に最後のお別れを言いたいのに叶わないのか、
というお悩みもよく耳にするようになりました。
●家族葬の具体的な定義は無い
家族葬も含め、葬儀の種類や内容について、公式な定義はありません。
平成29年3月22日に発表された公正取引委員会の「葬儀の取引に関する実態調査報告書」で
は、葬儀の種類と内容について以下の表の通り定義づけて集計されています。
この表においても、出席の定義が曖昧なので、家族葬に一般の方がお焼香だけでも参列できるのかどうかは分かりません。
多くの方が家族葬という言葉で想像する、家族、親族だけが集まって一般の人は参列せずに小規模に執り行う式は、実際は社葬の欄に書かれている「密葬」のことであると思われます。ただし密葬は、最初は亡くなったことを公表せず内々に式を行いますが、後日、公表して本葬(一般葬)を行うことを前提としています。
●家族葬を提案された際に確認すること
家族葬を希望される方の本意は、費用面や参列者対応の負担を考えてのことと思いますが、注意すべき点もあります。筆者に家族葬のお話があった場合は以下の点を確認します。
・費用面について、一般葬とそれほど金額が変わらない場合もある。
・一般の参列をお断りした時に、お焼香だけでも参列したい、と来られた方への対応が必要になる。
・参列をお断りした場合は、後日、自宅へ弔問に多数来られることがある。
・御香典を受け取るか辞退するか。過去の経緯からどうしても渡したいという方もいる。
費用面については、式場が設定する家族葬のコースを選んだから安くなると考えず、見積をもらい、それぞれの項目の内容について確認することで納得できる金額になります。
参列者の対応、特に参列をお断りする方の対応については、式場のスタッフに全てをお任せすることは難しいです。あらかじめ家族・親族の中で対応者と方針を決めておきましょう。
御香典については、香典返しの手間を考えてお断りをされることが多いようです。最近では、式場受付でのお返し品を少し充実させ、そこで添えるお手紙に香典返しを兼ねる旨をお伝えすることで、香典を受け取られる家も出てきました。
●葬儀は亡き人とご縁ある人のお別れの場
小規模な葬儀にすることで、費用を抑えたり、家族が亡き人との最後の時間をゆっくり過ごせるようにすることは意義のあることだと思います。
ただし、葬儀は家族以外のご縁ある人にとっても大事なお別れの場です。宗教・宗派により死後の浄土、極楽、天国などの行き先は異なるかもしれませんが、今、私たちが生きる世界で、亡き人のお顔を拝見したり、お身体に触れることができるのは最後の機会となります。
家族の事情や都合を考慮することはもちろんですが、ご縁ある人の最後のお別れについても少し思いを馳せていただけると、亡き人にとっても遺された人にとっても良いお葬式になるのではと思います。
吉武 学(よしたけ まなぶ)
饗庭山法泉寺(真宗大谷派) 住職
吉武学行政書士事務所 代表
一般社団法人相続診断士協会パートナー事務所
相続診断士
笑顔相続道正会員
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