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「揉めたいわけじゃない。でも相続が進まない」 そんなときに見直したい、止まった相続を前に進める考え方

公開日:2026-05-25 21:11

目次

■実際にはそう簡単にいかない相続

相続相談を受けていると、最近、次のようなご相談が増えているように感じます。

「司法書士に相続登記をお願いしているけれど、相続人の一人が印鑑を押してくれない」
「税理士に相続税の相談はしているけれど、遺産の分け方が決まらない」
「揉めたいわけではない。でも、このままだと何も終わらない」

 相続というと、多くの人は
「必要な書類を集めて、銀行や法務局で手続きをすれば終わるもの」と考えています。

もちろん、相続人全員の関係が良好で、遺産の内容もわかりやすく、分け方にも争いがなければ、それで問題なく進むことも多いでしょう。

しかし、実際にはそう簡単にいかない相続もあります。

*相続人の一人と連絡が取れない
*不動産を誰が取得するかで意見が割れる
*親の介護をした人と、していない人の間で不公平感がある
*遺言書の内容に納得できない人がいる
*相手から返事が来ないまま、長い時間だけが過ぎている

このような状態になると、相続は単なる「手続き」ではなくなります。

法律、感情、公平感、お金、不動産、家族関係が絡み合った問題になります。

 

■よくある“止まった相続”の原因

では、どのような場合に相続は止まりやすいのでしょうか。
代表的なものをいくつか挙げてみます。

 

① 相続人の一人が連絡に応じない

最も多い相談の一つが、相続人の一人と連絡が取れないというケースです。

手紙を送っても返事がない。
電話をしても出ない。
LINEを送っても既読にならない。

相続手続きの多くは、相続人全員の協力が必要です。
特に遺産分割協議は、原則として相続人全員の合意が必要になります。

そのため、一人でも連絡に応じない人がいると、
預貯金の解約・不動産の名義変更・売却などが進まなくなることがあります。

この場合、「もう少し待てば返事が来るかもしれない」と考えて
時間だけが過ぎてしまうことがあります。

 

② 不動産の分け方で意見が合わない

預貯金であれば、金額に応じて分けることが比較的しやすいでしょう。
しかし、不動産は簡単に分けることができません。

長男が実家を取得したい。
別の相続人は売却して現金で分けたい。
一人は「思い出の家だから残したい」と言い、
別の相続人は「管理が大変だから売りたい」と言う。

さらに、不動産は、誰が取得するのかだけでなく、いくらで評価するのかでも意見が割れます。
評価の前提が違えば、それぞれが考える「公平な分け方」も変わってしまいます。

 

③ 「介護した人」と「介護しなかった人」の不公平感

「自分だけが親の面倒を見てきた」
「他の兄弟姉妹は何もしていないのに、法定相続分どおりに分けるのは納得できない」
このような気持ちは、決して不自然なものではありません。

ただし、法律上、介護をしたからといって、当然に相続分が大きく増えるわけではありません。
寄与分という制度はありますが、認められるためには一定のハードルがあります。

この「気持ちとしての納得」と「法律上の結論」のズレも、相続を止める大きな原因になります。

 

■専門家に依頼していても、相続が進まないことがある

相続が止まっている方の中には、すでに専門家に相談している方も少なくありません。

相続登記を司法書士に、相続税を税理士に、書類作成を行政書士に、不動産売却を不動産会社に相談していても、相続が進まないことがあります。

これは、司法書士・税理士・行政書士・不動産会社が悪いという話ではありません。
それぞれの専門家には、それぞれの役割があります。

ただし、相続人同士の意見が対立している場合、又は相手方との交渉が必要な場合には、単なる手続きや書類作成だけでは解決できないことがあります。

相続人の一人が「この内容では納得できない」と言っている。
相手方が弁護士を立ててきた。遺留分を請求された。
不動産の評価額で争いがある。
遺産分割協議が長い期間まとまらない。

このような場面では、相続は「手続き」から「紛争」又は「紛争に近い状態」に変わっています。

その段階では、相続人の代理人として交渉し、法的な見通しを立て、必要に応じて調停や訴訟も視野に入れて進める専門家が必要になります。

つまり、相続が止まっているときに大切なのは、
「誰に相談しているか」だけではなく、
「今の相続がどの段階にあるのか」を見極めることです。

 

■相続を前に進めるために必要な3つの視点

では、相続が止まってしまったとき、どのように考えればよいのでしょうか。次の3つの視点が大切だと考えています。

 

① まず「何で止まっているのか」を言語化する

相続が進まないとき、多くの方は漠然と「揉めている」「まとまらない」と表現します。
しかし、それだけでは解決策が見えません。
大切なのは、何が原因で止まっているのかを具体的にすることです。

・相続人の一人と連絡が取れないのか
・遺産の範囲が分からないのか
・不動産の評価で意見が違うのか
・遺留分の問題なのか
・介護や生前贈与への不満なのか
・単に誰も決断できていないだけなのか

原因が違えば、取るべき対応も変わります。
相続が止まっているときに必要なのは、感情的に相手を責めることではありません。


② 「法律上の正しさ」と「家族の納得感」を分けて考える

相続では、法律上の正しさだけでは解決しないことがあります。

もちろん、法律上の権利関係を正確に把握することは大前提です。
法定相続分、遺留分、特別受益、寄与分、不動産評価などを無視して話し合いを進めることはできません。

しかし、相続人が本当に気にしているのは、金額だけではないことも多いです。

「なぜ自分だけ説明を受けていなかったのか」
「親の介護をしてきたことを、誰もわかってくれない」
「実家を売ること自体に抵抗がある」
「兄弟姉妹から一方的に書類だけ送られてきたのが許せない」

こうした感情を無視して、「法律上はこうです」とだけ言っても、相手は動かないことがあります。

だからこそ、相続では、【法律上の見通し】と【家族の納得感】を分けて整理する必要があります。

すべての感情を法律で解決することはできません。
しかし、感情の存在を無視すると、法律上は解決できるはずの相続まで止まってしまいます。

 

③ 「話し合いで終わらない場合」の出口を持つ

相続人同士で話し合うことは大切です。しかし、話し合いには限界があります。

相手が返事をしない。
何度話しても同じところで対立する。
一方的な主張だけを繰り返す。

このような場合に、「家族で話し合えばいつかはわかってくれる」と考え続けることが、かえって相続を長引かせる原因になります。

話し合いでまとまらない場合には、
家庭裁判所の遺産分割調停や、遺留分侵害額請求の交渉・調停・訴訟など、法的な手続きを使うことも選択肢になります。

 裁判所を使うというと、「家族と争う」というイメージを持つ方もいます。
しかし、実際には、当事者だけでは整理できない問題を、第三者の関与のもとで順番に整理していく手続きともいえます。

大事なのは、話し合いだけで終わらない場合の出口を持っておくことです。
出口が見えていない相続は、いつまでも止まり続けます。

 

■相続が止まっている人の本心

相続が止まっている方の多くは、決して「争いたい」と思っているわけではありません。
むしろ、こう思っている方がほとんどです。

「できれば穏便に終わらせたい」
「親族関係を壊したいわけではない」
「でも、このまま放置するわけにもいかない」
「自分だけが我慢して終わるのも納得できない」

この感覚は、とても自然なものです。

 相続は、放っておいても自然には終わりません。
特に、不動産がある相続、相続人間の関係が悪い相続、遺言や遺留分が絡む相続では、早い段階で交通整理をすることが重要です。

「揉めたいわけじゃない。でも進まない」

そう感じたときは、すでに相続が単なる手続きではなく、法的な整理を必要とする段階に入っている可能性があります。

相続を終わらせるために必要なのは、相手を責めることではありません。
絡まった問題を一つずつほどき、法律と公平感の両方から、現実的な解決策を設計することです。
それが、止まった相続を前に進める第一歩になります。

 

【筆者プロフィール】

大石誠(おおいしまこと)
弁護士(神奈川県弁護士会所属)
笑顔相続道®正会員
縁ディングノートプランナー®


「止まった相続を終わらせる弁護士」
大石誠 先生

平成元年生まれ 平成28年弁護士登録
横浜で、遺言・遺産分割をめぐる相続トラブルの解決を得意としています。
司法書士・税理士・行政書士に相談しているものの、相続人同士の話し合いが進まない、不動産の分け方で意見が合わない、遺留分を請求したい・請求されたなど、通常の手続きだけでは前に進まなくなった相続について、法律・感情・公平感を整理し、解決までの道筋を一緒に考えます。
あなたの相続を「終わらない悩み」から「終わる安心」へ。そのために、初期段階での正確な法律助言と、相続人全員が納得できる解決策の設計を心がけています。


【 筆者へのお問い合わせ先】
横浜平和法律事務所
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