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愛情と税制が交錯!孫へのお得な贈与のはずが、生命保険の加入で台無しに!?

公開日:2026-03-02 00:00

目次

■節税対策へのアンテナ 

 70代のA子さんは相続についての情報を集めている最中で 

・知り合いに聞いた 
・テレビではこう言っていた 
・週刊誌の相続特集で見た 

といって関心のある相続対策について質問くださいます。  

A子さん
「孫への贈与って、お得なんでしょう
?」
 

筆者
「どうしてそう思われたのですか?」
 

A子さん
「詳しくは分からないけど、そう聞いたのよ
。」
 

筆者
「お孫さんへの贈与をお考えですか?」
 

A子さん
「うーん、お得になるなら
。。。」
 

相続に関するご相談で非常に多いのが、「単体の対策への質問」です。
自分に必要な対策かどうかは分からないけれど、優れているらしい対策への関心をお持ちの方が多いです。

良い情報を得たいというアンテナを持つことは素晴らしいこと。

そのうえで望ましいのは、
資産状況を整理して把握するという
事前準備です。

そこへ希望や目的が明確になって初めて、取るべき対策を考えることが出来るようになります。 

とはいえ、相続対策へ関心が深まる入り口としては「単体の対策への質問」も大歓迎です。 

A子さんのおっしゃる通り、孫への贈与は「お得」に働く場合があります。 

 

■孫への贈与がもたらすメリット 

世代を跨ぐ毎に課税される相続税。
実際、財産を一世代先へ移すことは、将来の相続税を抑えるうえでとても合理的な方法です。
 

暦年贈与として、毎年の基礎控除額110万円を活用した非課税での贈与をコツコツ続けている方も少なくありません。

この暦年贈与には、被相続人が亡くなる前7年の間に行った贈与を、相続財産へと持ち戻して相続税計算をするという「持ち戻しルール」が存在します。

死期が近いことを悟り、相続税の節税対策として暦年贈与を開始しても、7年以内に亡くなってしまったら一円も節税効果はなく、相続財産に加算して相続税を計算することとなります。  

ですがこれは、原則として法定相続人を対象とするルールであり、法定相続人ではない孫への贈与には適用されません。

孫への贈与がお得といわれる理由の一つに、この「持ち戻しルール」が適用されないことが挙げられます。 

 孫への暦年贈与は間違いのない“良い対策”です。 

ところが、その丁寧に積み重ねてきた贈与が、
あるきっかけで思わぬ形に変わってしまうケースを見かける
ことがあります。

きっかけは、特別な節税商品ではありません。
多くのご家庭でごく自然に選ばれている「生命保険」です。
 

善意で行った二つの対策が、なぜか互いの効果を打ち消してしまう。  
そんな相続設計の“見えにくい落とし穴”についてを見てみましょう。 

 

■善意の相続対策が互いの効果を打ち消し合う 

あるご家庭では、長年にわたり孫への暦年贈与を続けていました。
相続財産を少しずつ減らし、将来の税負担を軽くするための、計画的な取り組みです。
 

 ところがその後、「万が一のときに孫へも直接お金を残したい」という思いから、孫を受取人とする生命保険に加入しました。これは資産を繋いでいく中でのごく自然な判断であり、むしろ、愛情のある選択と言えるでしょう。 

しかし、ここで相続税の考え方が変わります。 

生命保険金は、民法上は相続財産ではありませんが、税法上は「みなし相続財産」として扱われます。つまり、保険金を受け取った人は、“相続で財産を取得した人”として位置づけられるのです。その結果、それまで相続とは無関係だった孫が、相続税の計算の枠組みに入ることになります。 

すると何が起きるか。  
相続開始前に行っていた贈与が、「相続で財産を取得した人への贈与」として再評価され、相続税の計算に加算される可能性が生まれるのです。 

贈与をした時点では問題がなかったはずの対策が、後から行った生命保険の契約によって、意味合いを変えてしまう――。  
ここに、相続対策の難しさがあります。 

贈与税の基礎控除の範囲で、非課税にて贈与が成立していたところに、生命保険の死亡保険金を受け取ると、、、 

・生命保険の非課税枠が適用されない 
・暦年贈与の「相続開始前7年持ち戻しルール」が適用される 
・相続税が2割加算される 

 このように、節税とは逆行した資産の渡し方に転じます。  

 

■相続設計の“見えにくい落とし穴” 

 
今回のケースは、生命保険が悪いわけでも、孫への贈与が間違っていたわけでもありません。
どちらも本来は、とても有効な相続対策です。

問題は、それぞれを「別々にメリットある対策」として考えてしまったことにあります。 
 
相続の準備は、ひとつひとつの制度を見ると正しくても、組み合わせによって結果が変わります。

贈与、生命保険、遺言――それぞれは独立して存在しているようで、実際には同じ一枚の設計図の上に成り立っています。どれかを後から追加したとき、以前の対策の意味が変わってしまうことも珍しくありません。今回のように、善意で選んだ行動が、思いがけず税務上の位置づけを変えてしまうこともあります。 
 
相続対策とは、制度を知ること以上に、「全体をどう設計するか」を考えることが大切なのではないでしょうか。 
 
もしすでに贈与や保険の準備をされている場合は、それぞれがきちんと連動しているか、一度立ち止まって確認してみてください。  
  

■相続対策を有効なものにするために

相続対策とは、財産をどう分けるかではなく、想いがきちんと届く順番を整えること。 

“足し算”ではなく、“調和”に近い作業なのだと思います。
新しい対策を加えるたびに、以前の選択との関係を見直していくことが大切になります
。
 

特に、孫への贈与のように愛情から始まる対策ほど、税務だけでは判断できない側面があります。

「早く渡してあげたい」「直接役立ててほしい」という想いはとても自然なものですが、その想いを長い時間軸の中でどう形にするかが、相続設計の本質なのかもしれません。 

相続対策の設計図を共有し、都度修正の確認をしていける、そんな相続コンサルタントと出会っていただけることをお祈りいたします。 

お孫さんへの贈与を考えている方は、お気軽にご相談ください。


【筆者プロフィール】
鈴木 美志乃(すずき よしの)


    • ワクワクライフプランナー。
    • お客様の人生に寄り添いワクワクの未来を語らう和装FP。
    • 相続と日本文化の継承をテーマにコラムを書いています。
    • あなたの人生と相続についての想いを聞かせてください。

    • 《保有資格》
    • 相続診断士
    • 笑顔相続道正会員
    • 縁ディングノートプランナー
    • 2級ファイナンシャルプランニング技能士・AFP