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リビングニーズ特約の本当の価値〜相続対策にもつながる“知られざる保険の力”〜

公開日:2025-11-17 00:00

目次

■ 知っておくべき保険の特約

相続や資産承継の相談を受けていると、
リビングニーズ特約って聞いたことはあるけど、詳しくは知らない」という方がとても多いと感じます。

生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人)を活用して、一時払い終身保険に加入しておく——これは相続税対策として広く知られた手法です。

さらに、代償分割の原資として生命保険を利用するケースも増えています。(この後に説明あります)

しかしその保険に「リビングニーズ特約」を付けておくことで、“万が一の前”にも本人がその保険金を使えるという、大きな意味を持つことはあまり知られていません。

この記事では、リビングニーズ特約の仕組みや活用ポイントを、相続対策や代償分割の観点から解説します。


■ リビングニーズ特約とは?

リビングニーズ特約とは、被保険者が余命6か月以内と判断された場合に、死亡保険金の一部または全部を生前に受け取れる特約のことです。

1990年代に導入され、現在は多くの生命保険に「無料で自動付帯」されています。
保険会社によって多少の条件差はありますが、共通点として以下のような特徴があります。

・医師による「余命6か月以内」の診断書が必要
・保険金の全額または一部を“生前”に受け取れる
・受け取った金額は非課税
使途の制限はなく、医療費・介護費・在宅療養・家族への生前贈与など自由に使える


つまり、「万が一のときに家族へ」だけでなく、自分のためにも使える保険」に変わるのがリビングニーズ特約なのです。


■ 相続・代償分割との関係

相続対策の現場では、生命保険を「代償分割の原資」として活用するケースが増えています。
たとえば、次のようなご家庭です。

自宅不動産:3,000万円
現金:1,000万円
相続人:長男・次男の2人

 長男が自宅を相続し、次男には現金で代償金を渡す予定。

このような場合、代償金の1,000万円を用意するために「一時払い終身保険」に加入し、保険金を次男(代償を受け取る側)を受取人に設定することで、スムーズな分割が可能になります。

ここにリビングニーズ特約を付けておけば、もし被相続人(契約者・被保険者)が余命宣告を受けた際、本人自身の療養費や在宅介護費として活用できるのです。

「保険金は死後にしか使えない」という思い込みを超えて、“生きている間にも安心を得られる”というのがリビングニーズ特約の本質です。


■ 意外と知られていない注意点と誤解

リビングニーズ特約には、意外と見落とされがちな注意点や勘違いもあります。

1️⃣ 特約請求をすると契約が消滅する

リビングニーズ特約を使って保険金を受け取ると、その時点で主契約(終身保険など)は消滅します。

つまり、死亡保険金として家族が受け取ることはできなくなります

したがって、「残す目的の保険」と「自分のための資金」をどう分けるかを考える必要があります


2️⃣ 診断書が必須で、医師判断が基準

「余命6か月以内」の診断は、医師が判断した場合のみ有効です。

そのため、実際にリビングニーズを請求できるケースは全体のごく一部に限られます。

とはいえ、最近では在宅医療や緩和ケアの普及により、制度の認知が高まっています


3️⃣ 一時金の受取は“本人の財産

生前に受け取った保険金は本人の財産になります。
そのため、使い道を家族と共有しておくことが大切です。

特に、医療費・介護費・葬儀費用などを明確にしておくと、相続時のトラブル回避にもつながります。


■ リビングニーズを“自分と家族の架け橋”に

リビングニーズ特約は、「死後のための保険」を「生きるための保険」に変える仕組みです。

相続・一時払い・代償分割の設計を行う際、ぜひ次の3つの視点を押さえておきましょう。


1️⃣ 非課税枠の活用代償分割の原資づくり

  保険金を指定した相続人へ直接渡せる仕組みは、相続の分割を円滑にします。

2️⃣ リビングニーズ特約で“本人の安心”を確保

  万が一の際にも、医療費や介護費に充てられる“生前資金”を確保できます。

3️⃣ 家族との共有がトラブルを防ぐ

 保険契約の目的や受取人、使い道を家族と話し合っておくことが、最大の安心につながります。


■ “残す”と“生きる”の両立ができる時代

リビングニーズ特約は、保険に“もう一つの出口”を与える制度です。
相続・終活の相談現場では、この特約を知らなかったために「本人の意思を生かせなかった」というケースもあります。

逆に、知っていて準備しておけば、「最後の半年を自分らしく過ごせた」「家族が慌てずに済んだ」という声も多く聞かれます。

人生の終盤に向けて、誰のための保険なのか」「生前にどう活かせるのか」を考えることこそ、真の資産設計

リビングニーズ特約を上手に活かすことで、“残す”と“生きる”の両立ができる時代になっています。

リビングニーズ特約は
「余命6か月以内で生前に保険金を受け取れる制度」。


医療費・介護費に活用でき、非課税である点が大きな魅力です。

一時払い終身保険の非課税枠活用や、代償分割の設計においても、「生前に使える安心の仕組み」として知っておくべきポイント。

“亡くなった後”のためだけでなく、“生きる時間を豊かにする”——これが、現代の生命保険が持つもう一つの価値なのです。


【筆者プロフィール】
伊藤由美子 (いとう ゆみこ)
・FP×相続コンサルタント
・伊藤保険 株式会社 代表
 相続・終活相談に寄り添う保険代理店
 つつじシニアライフ相談窓口

伊藤由美子


ファイナンシャルプランナーとして豊橋市で「FPカフェ×保険代理店」を運営。
住宅・教育・相続といった人生の節目に寄り添い、東三河で“生涯にわたるリスクマネジメント”を提供しています。
東愛知新聞「相続コラムQ&A」執筆、FMヤシの実ラジオのパーソナリティーなど、地元メディアでの発信も多数。
著書『50歳からの女性のマネトレ~毎日5分読むだけで10年後が変わる!』が好評発売中。


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