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遺言は、誰のために書くもの?

公開日:2025-11-03 00:00

目次

■「遺言があれば揉めない」は本当?

わたしがお会いするクライアントの中でも
「遺言があれば、相続は揉めない」
そう思っている方は少なくありません。

けれど実際の現場では、
遺言が“あるからこそ”揉めることもあるのです。

たとえば、

「なぜ兄だけが多いの?」
「どうして私の名前がないの?」

内容が法律的に正しくても、気持ちの整理がついていないと、その遺言が“争いの火種”になることがあります。

それでも、私は遺言を書くことを勧めます。

なぜなら、遺言は“相続人の手続きを楽にする”ための現実的な方法だからです。


■ 遺言有無の影響

相続の手続きは想像以上に大変です。

銀行・法務局・市役所と何度も往復し、
膨大な書類を集め、相続人全員の印鑑証明や戸籍を取り寄せて進めていく。

関係が良好ならまだしも、疎遠だったり、海外に住んでいたりすると、
それだけで数か月、時には年単位の時間がかかってしまいます。

一方で、遺言があれば「誰に何をどう分けるか」が明確に記されています。

そのため、遺言書に基づいてスムーズに手続きを進めることができます

さらに遺言執行者(いごんしっこうしゃ)を指定しておけば、
相続人同士が顔を合わせる必要もなく、
意思の疎通が難しい場合でも、故人の意思に沿って粛々と財産を承継することが可能です。


■ 遺言の役割

実際の遺言は“一枚の紙”では済みません。

財産が多岐にわたれば何枚にもなり、

思いを込めた「付言事項」を加えればさらに増えます。

つまり、遺言は単なる書類ではなく、その人の人生の記録でもあるのです。

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では、改めて考えてみましょう。
遺言は、誰のために書くものなのか?

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もちろん、自分の財産をどう残したいかを形にするという意味では、

“遺言者本人のもの”です。

けれど同時に、それは“残された人たちのためのもの”でもあります。

大切な家族に迷惑をかけたくない
悲しみの中で、さらに負担を増やしたくない

そうした思いやりこそが、遺言の本質です。


■ 遺言にプラスしたいツール

ただし、どんなに完璧な遺言でも――
気持ちが伝わらなければ、納得は生まれません

「なぜ長女に多く残したのか」を知らないままでは、不公平に感じることもあります。

けれど、生前に
「介護を任せているから」「家を継いでくれるから」と
本人の口から聞いていれば、受け止め方はまったく違ってくるはずです。

だからこそ、私は「縁ディングノート」をお勧めしています。

これは単なる“エンディングノート”ではなく、

家族とのご縁を見つめ直し、気持ちを伝えるための生前の対話ツールです。

(2025年11月6日に改訂版が発売!/ Amazonにても予約受付中


縁ディングノートに想いを書きながら、家族と話し合う。

「お父さんはこう考えているんだね」
「お母さんはそうしてほしいんだね」
と、お互いの心を確かめ合う。

その時間こそが、いちばん大切な“相続対策”なのです。


■ 遺言の最大のパワー

遺言は「自分のため」であり、「家族のため」でもあります。

けれど何よりも――

心からの“ありがとう”を形にした、最後の贈りもの

それが、私が思う「遺言」というものです。


【筆者プロフィール】

一橋香織(ひとつばしかおり)




  • 《経歴》
  • 外資系金融機関を経て、ファイナンシャル・プランナーに転身。
  • これまで18年で6,000件以上の相続相談の実績。
  • 自身の家族で争う相続を経験し、相続の大事なゴールは「縁まんな相続」と実感。
  • 「争う相続をなくし、縁まんな相続の実現」を理念とし、日々お客様と対峙している中で節税優位の相続対策ではなく、笑顔で相続が迎えられる相続の実現のための活動を行っている。


  • 《メディア出演》
  • TBSNスタ」「ビビット」
  • テレビ朝日「たけしのTVタックル」
  • TBSテレビ「バイキングmoreなど)多数。