カテゴリー検索

自筆証書遺言と公正証書遺言の違いを比較(メリット・デメリットと正しい選び方)

公開日:2025-10-06 00:00

目次

「遺言は自分で書けるのか?」
「公証役場で作成した方が良いのか?」

相続や終活の相談でよくいただく質問です。

遺言は、残された家族が円満に暮らしていくための大切な準備ですが、作成方法を誤るとトラブルの原因になります。

このコラムでは、自筆証書遺言と公正証書遺言の違いを比較し、それぞれのメリット・デメリット遺言でできること・できないことを整理して解説します。


■ 遺言書の種類は大きく分けて2つ


1) 自筆証書遺言の特徴とメリット・デメリット

自筆証書遺言は作成の方式が法律で決まっており、本人が全文・日付・署名を自書し、押印して作成する方式です。
(※財産目録に関しては、Wordなどで作成したものでも可。)

≪自筆証書遺言のメリット≫

 • 費用がかからず、自宅で簡単に作れる
 • 誰にも知られずに作成可能
 • 思い立ったときにすぐに作成できる

≪自筆証書遺言のデメリット≫

 • 書式や内容に不備があると無効になることがある
 • 紛失、偽造、隠匿のおそれがある
 • 相続開始後、家庭裁判所の「検認」が必要で手続きが煩雑
  (法務局に保管した場合には不要

≪自筆証書遺言の実例(失敗例)≫

(1)全文、日付、署名をすべて手書きしているが、押印がなかったため無効となった。
(2)日付が令和5年1月吉日となっており、何日に作成したかが不明なため無効となった。
(3)「土地を長男に相続させる」とだけ書かれた遺言が見つかったが、不動産の特定が曖昧で法務局に登記申請を却下された。


2) 公正証書遺言の特徴とメリット・デメリット

公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する方式で、証人2名の立会いが必要です。

≪公正証書遺言のメリット≫

 • 法的に無効になるリスクが極めて低い
 • 公証人が作成するため、手書きで作成する必要がない
 • 公証役場で原本が保管されるため、紛失・偽造の心配がない
 • 家庭裁判所の検認が不要で、すぐに相続手続きに使える

≪公正証書遺言のデメリット≫

 • 公証人手数料が必要(財産額に応じて変動)
 • 証人を用意する必要があり、準備に時間がかかる

≪公正証書遺言の実例(成功例)

父が不仲な子供たちのために、公平に財産を渡せるよう公正証書遺言を作成しました。
公証役場で確実な遺言書を作成していたため、紛失や偽造、争いの余地がなくスムーズに不動産の名義変更や預貯金の解約ができ、とても感謝しました。


■ 遺言でできること・できないこと


1) 遺言でできること

 • 誰にどの財産を相続させるか指定できる
 • 相続分の割合を決められる
 • 遺贈(相続人以外への財産譲渡)ができる
 • 遺言執行者を指定できる
 • 認知や未成年後見人の指定ができる
 • 生命保険の受取人を変更できる

2) 遺言でできないこと

 • 相続人の遺留分を完全になくすこと
 • 生前の財産管理や介護に関すること
 • 死後事務(葬儀方法やお墓の管理など等)に関すること

→ 「長男に全財産を渡す」と書けば他の相続人は何ももらえない、と思われがちですが、遺留分により一定の取り分を請求できる点に注意が必要です。


■ 自筆証書遺言と公正証書遺言の比較表

項目

自筆証書遺言

公正証書遺言

作成方法

本人が自筆で作成

公証人が作成(証人2名必要)

費用

無料(保管制度を利用すると手数料3,900円)

公証人手数料が必要
(財産価格に応じて変動)

保管

自宅保管(紛失リスクあり/法務局保管制度あり

公証役場で原本を保管

無効リスク

高い(形式不備・記載不備など)

限りなく低い

検認

必要(保管制度を利用する場合は不要)

不要

手軽さ

(手軽に作成できる)

(手間と費用がかかる)

安全性

(紛失・偽造のおそれあり)

(最も安全)


■ あなたに合った遺言の選び方

 ◉費用をかけずに手軽に作りたい方 → 自筆証書遺言

 ◉安全性の高い遺言を残して不要なトラブルを避けたい方 → 公正証書遺言

遺言は「書くだけで安心」ではなく、正しい形式と内容で残すことが重要です。
ご自身やご家族にとって最適な方法を選ぶためにも、専門家に相談することをおすすめします。


■ おわりに 

自筆証書遺言と公正証書遺言にはそれぞれメリットとデメリットがあります。
「とりあえず形にしたい」なら自筆証書遺言、「安全性の高い遺言を残したい」なら公正証書遺言が適しています。
相続は一度きりやり直しがきかないからこそ、事前に正しく準備しておくことが家族の安心につながります。



【筆者プロフィール】
常藤 俊輔(つねふじ しゅんすけ)
常藤司法書士事務所 代表司法書士



東京都日野市を中心に、相続・終活に特化した専門事務所を運営。
相続登記の申請、預貯金や有価証券の解約・名義変更、遺言書作成のサポートなど、相続に関する手続き全般をトータルでサポート

「分かりやすさ」と「親しみやすさ」を大切にし、専門用語も噛み砕いてご説明。初めての方でも安心してご相談いただけます。
また、土日祝日や遠方の方のご相談にも対応可能ですので、忙しい方や離れて暮らすご家族様もご安心ください。

初回相談は無料で承っております。日野市や多摩地域で相続・終活に関するご相談なら、ぜひお気軽にお問い合わせください。


【筆者お問い合わせ先】
常藤司法書士事務所
住所:東京都日野市日野本町2丁目19番地の8
TEL:042-508-3602
HP:https://tnfj-office.com/