認知症・介護を遠ざける終活術 ─ 健康なくして終活なし
公開日:2025-09-15 00:00
目次
■ 終活・相続の準備に「健康」がなぜ必要か
─ 相続や終活は「書類」や「制度」だけでは完結しない
「相続」・「終活」準備・対策で思いつくのは、
相続税のことや遺言書の作成、生前整理、介護、財産管理、任意後見や信託、葬儀、供養、お墓のことなどでしょう。
これらの準備や対策を進めていくためには、考えを整理し、どういった順番や誰に相談していくかを判断し、実行するために行動し、問題が起きそうであれば柔軟に対応していく必要があります。
こういった、判断力・行動力・柔軟性を支えるのは、心と体の健康があってこそできるものです。
■ 社会背景:高齢化・核家族化・おひとりさま予備軍の増加
─ 高齢夫婦のみの世帯が増加、支援の手が届きにくい現状
2024(令和6)年の厚生労働省国民生活基礎調査(以下図抜粋参照)によると、
単独世帯(おひとりさま)が年々増加し、2024年には約3人に1人が単独世帯。
三世代世帯は1986年には4割以上だったのが、現在では1割強に減少し、
頼れる親族や家族が近隣にいない、若年の家族が同居ではないなど高齢者の生活環境が大きく変化しています。
介護老人福祉施設の人手は、依然として慢性的な人手不足で深刻化もしていおり、ますます支援の手が届きにくい構造と状況です。
【引用:2024(令和6)年の厚生労働省国民生活基礎調査の概況より抜粋】
─ 介護・認知症の7割が生活習慣に起因するという事実
2022(令和4)年国民生活基礎調査によると介護が必要となった主な原因の構成割合は、
認知症、脳血管疾患、骨折・転倒や関節疾患など、生活習慣や筋力低下に起因するものが上位を占めています。
─「誰かに頼る前に、自分でできる力」を維持する重要性
自分で身の回りの炊事・洗濯・家事など、日常生活を送ることができる体力・健康力は、
お薬や治療での解決や、大金を払うからと言って買うことはできません。
日々の生活習慣、つまり、お食事と運動の習慣を整え、コツコツと積み上げて作っていくしか方法がありません。
言い換えると、生活習慣の改善から判断力・行動力・柔軟性を衰退化させる原因を予防することができるとも言えます。
■ 環境の変化と健康の関係
─ コロナ禍以降の物価上昇・気候変動など、生活の不確実性
2022年以降、物価は急上昇傾向にあり、5年間で約11%上昇しています。(*以下図2:参照)
物価上昇は、老後の生活設計に直接影響しますが、“見えないリスク”でもあります。
総務省の家計調査年報からは、コロナ禍以降の5年間で月々の生活費は約2.7万円増加(年間で約32万円の負担増)です。
この負担増の主因は、食料・交通・光熱費といった生活必需品の価格上昇です。
これらは特に高齢期の生活に直結する項目です。
物価の上昇は、老後の生活費や介護費用にも影響を及ぼします。
だからこそ、健康を維持し、できるだけ自立した生活を続けることが、経済的にも賢い選択です。
また、気候変動という“見えないリスク”に対して、私たちができる最も確実な対策は、自分自身の体力・免疫力を高めることです。
このような不安定な時代にこそ、自分自身の健康を守ることが、最も確実な“備え”になります。
健康であれば、変化に柔軟に対応でき、終活や相続の準備にも冷静に取り組むことができます。
先にも記載したとおり、要介護の原因が生活習慣に起因するならば、生活習慣を見直すことで予防することができます。

*図2【引用元:世界経済のネタ帳(IMF推計値グラフ化)】
■ 習慣の見直し:今の健康は過去の習慣の積み重ね
─加齢による筋肉量低下は認知症率も増す
厚生労働省の認知症施策ページでは、認知症予防において、運動習慣の維持が推奨されています。
他にも科学研究費助成事業(KAKEN)による研究においては、高齢者の筋肉量と認知機能・メンタルヘルスの関連性についても指摘がされています。
女性では、筋肉が少なくて脂肪が多い体型の人ほど、認知機能が低下しやすいことが報告されています。さらに、加齢による筋肉の減少(サルコペニア)と認知症は、一緒に起こるケースが多いことも分かってきています。
─ 健康状態を数値で把握することの大切さ
ゴール(目的地)を定めるためにも、現在地が分からないとゴールまでの道順を選択することができません。
現在地を確認するために、今の健康状態を数値で見える化しします。
健康診断での数値に加えて、体組成計で身体の構成バランス:体脂肪率、内臓脂肪、皮下脂肪、骨格筋率(筋肉量)を数値で毎日確認、記録することが有効です。
極力、病気とは無縁で、活動的で、健康でいるためには、現状の数値はどの位置にあるのか。維持なのか、改善なのか確認していく必要があります。
毎日数値を確認することで、習慣がご自身の身体にどう影響するかを観察することができます。
数値を維持する場合も、改善する場合も、加齢によって臓器の機能が衰えることを考慮しながら、食事・運動・睡眠の習慣を見直していくことが必要です。
─ 特に食習慣の乱れと肥満・メタボの関係
肥満やメタボは、単なる“見た目”の問題ではありません。
放置すれば、将来の生活の質、自由、そして自立を脅かす“静かなリスク”です
40歳以上の約3人に1人が、メタボまたはその予備群に該当しています。
これは、将来の糖尿病・脳卒中・心疾患・認知症のリスクを高める“予告状”とも言えます。
メタボは動脈硬化・高血圧・糖尿病・脂質異常症の発症リスクを高め、これらの疾患は脳卒中や認知症の主要な原因です。
認知症の発症リスクは、肥満者で約1.5〜2倍に上昇するという研究もあります。
今はどうでしょう。24時間365日、いつでもどこでも、手軽に食べられる食品があふれています。
手軽さの裏には、見えにくい落とし穴があります。
高カロリー・低栄養・低たんぱく質——私たちの体を支えるはずの食事が、逆に健康を蝕む原因になっているのです。
私たちの身体は、食べたものでできています。
心臓を動かす筋肉も、思考を支える脳も、すべては食べ物から生まれた栄養の結晶です。
今日の一口が、5年後の自分を形づくるのです。
もし今、体重やウエストが気になるなら、それは身体からのサインかもしれません。
食習慣を見直すことは、5年後、10年後の自分の健康への投資です。
■ 健康がもたらす「判断力」と「実行力」
─ 相続対策や任意後見、保険の選択には冷静な判断が必要
いざ「終活」や「相続」の備えを始めようとすると、まずは情報を集めることから始まります。
そのうえで、自分に必要な情報を整理し、どの選択肢が自分に合っているのか、納得できるのかを冷静に判断する必要があります。
遺言書の作成や任意後見、信託などの対策として形となるためには、自分の考え、家族への想い、財産の整理も必要です。
心と身体の健康という土台がなければ、これらの対策を形にしていくことができません。
健康であることで、終活・相続の準備を「先延ばしにしない」行動力が生まれます。
■ 健康管理は「未来の安心」への投資
健康であることは、誰かに迷惑をかけないための義務ではなく、自分らしく生きるための権利です。
健康という土台が整えば、判断力も行動力も自然と湧いてきます。
保険や任意後見は「万一の備え」、健康は「日々の安心」と「未来の安心」。
健康であることが"家族への思いやり"であり、
そして何より、あなた自身のために、相続準備の第一歩として、
今ここから "健康という資産" を積み重ねていきましょう。
【筆者プロフィール】
大北 あかり(おおきた あかり)
健康とお金の心配を一緒に解決するファイナンシャルプランナー
「年金が大好きな保険屋さん」/相続コンサルタント/ウェルネスコーチ
健康や老後資金のこと、相続や死後の備えのこと。
誰に相談したらいいかわからない――そんなお悩みに寄り添い、分かりやすく整理するお手伝いをしています。
ご相談では、まずしっかりとお話を伺い、難しい専門用語は使わず、図やイラストで「見える化」。
一緒に現状を確認しながら、納得感のある解決方法を一緒に考えていきます。
まずは、お気軽にお問い合わせください。
■保有資格(信頼の証)
AFPⓇ/公的保険アドバイザーⓇ/相続診断士Ⓡ/損害保険トータルプランナーⓇ/生命保険募集人/損害保険募集人/縁ディングノートプランナー/笑顔相続道正会員
【筆者へのお問い合わせ】
E-mail: akari_fp@plus-rifure.com
HP: https://www.reservestock.jp/page/index/37693