終活としての「防災」と「損害保険」 〜大切な人に迷惑をかけないために、今できる備え〜
公開日:2025-07-14 00:00
目次
■ 「終活」とは人生の整理と安心の準備
遺言やお墓の準備だけではなく、医療・介護の希望、住まいの整理、そして「災害」への備えも、実は終活の一環としてとても大切です。
大切な人に迷惑をかけず、安心して日々を過ごすための準備も終活の役割のひとつと言えるでしょう。
特に、近年の日本では、地震や大雨、台風などの未曽有の災害が頻繁に起きています。
大切な人に迷惑をかけず、安心して日々を過ごすための準備も「終活」の役割のひとつと言えます。
こんなときだからこそ、「もしも」のときに備えておくことが、自分を守り、家族を守ることにつながります。
今回は、「終活」と「防災・損害保険」の関係について、述べてみたいと思います。
■ 高齢者と災害リスク:避難が難しいからこそ、事前の備えを
災害は、いつ起きるかわかりません。特に地震や台風、水害などは、突然やってきて、身動きが取れなくなることもあります。
平成30年7月の西日本豪雨による人的被害では、愛媛県・広島県・岡山県の3県の死者数のうち60代以上の割合が約7割であったという統計が内閣府から発表されています。
(内閣府:平成30年7月豪雨による水害・土砂災害からの避難に関するワーキンググループ(第1回)資料より抜粋)
高齢になると、体の自由が効きにくくなったり、判断に時間がかかるようになったりします。
「避難所まで行くのが不安」「重い荷物が持てない」「一人暮らしで頼る人がいない」など、災害時の不安は若い頃よりも大きくなるものです。
筆者の80代後半の両親も健在ではあるものの、高齢ゆえの不安を家族は抱えています。
最近も母が急に脚が痛い(原因不明)と言い出して歩けなくなりました。こんなとき、大災害が発生し、避難を余儀なくされたら為す術がありません。さらに、ペットの中型犬も連れて避難しなければなりませんので、不安は募るばかりです。
だからこそ、自分の住まいが「どんな災害に弱いのか」「避難するべきなのか」「そもそも避難が難しいなら、どう備えるか」を、あらかじめ考えておくことが大切です。
その備えの一つが、「損害保険」です。
■ 損害保険とは?
〜災害時に、あなたの暮らしを支えてくれる心強い味方〜
損害保険とは、火災や自然災害などで建物や財産に損害が出たときに、その損害を補償してくれるものです。
たとえば、こんなときに役立ちます:
- ・台風で屋根が壊れた → 養生などの仮修理や修理費用を補償
- ・大雨で床上浸水 → 建物の修理費用や家具や家電の買い替え費用を補償
- ・地震で家が倒壊 → 地震保険で生活再建のための費用を補償
など。
高齢者が災害に遭うと、片付けや修理、再建などに身体的・経済的な負担が大きくのしかかります。
「保険に入っていて助かった」という声は、本当に多く聞かれます。
その反面、「入ってはいても十分な補償を得られなかった」という声も残念ながらあります。
自分の家や持ち物を守ることは、家族の負担を減らすことにもつながります。
それは終活の重要な目的、「人に迷惑をかけない」という思いやりの形でもあります。
■ 保険は入るだけでなく、「見直すこと」が大切
「ずっと火災保険に入ってるから大丈夫」とか、「火災保険はお守り」と思っていませんか?
実は、「水災」の補償が無かったり不十分だったり、「地震」の補償が含まれていないケースもよく見受けられます。
また、補償額が実際の修理費に見合っていないこともあります。
終活の中で、「保険の見直し」はとても大切な作業です。
以下のポイントを確認してみましょう。
【災害保険の見直しポイント】
- □ 火災保険に「水災」や「風災」の補償があるか?
- □ 地震保険に入っているか?
- □ 補償金額が現在の住まいや財産に見合っているか?
- □ 保険期間が10年以上の長期の契約を放置していないか?
見直しは、保険会社や加入している保険代理店に相談すれば、丁寧に教えてくれます。
一度「保険診断」をしてもらうだけでも安心感がぐっと増します。
■ 自分が入っている保険を「家族に伝えておく」
これも終活の重要なポイントです。
せっかく保険に入っていても、自分が負傷したり亡くなったあとに、家族がその情報を知らなければ、保険金を受け取れないことがあります。
そこで、保険の新規契約時や満期更改時に家族に同席してもらったり、「保険証券(契約書)」は家族に見える場所に保管しておきましょう。
また、保険の種類や加入先、証券番号などを「縁ディングノート」に書いておいたり、冷蔵庫に貼っておいたりするのもおすすめです。
■ 防災と保険は、心の「安心」を生み出す終活
「自分はもう年だから…」と備えをあきらめてしまっていませんか?
終活の目的は、「不安なく、今を生きること」。防災や保険の準備は、まさにその第一歩です。
【防災に備えるチェックポイント】
- □ 家のどこが危ないかを見直す
- □ ハザードマップで自宅のリスクを知る
- □ 非常持ち出し袋を用意する
- □ 保険の内容を確認・見直す
- □ 家族に保険の情報を伝える
これらはすべて、いざというときに自分を助け、周囲への迷惑を減らし、何より「安心して過ごせる日々」をつくるための行動です。
■「備え」は今と未来の“贈り物”
災害は避けられないかもしれません。でも、「備え」は、誰でもできます。
損害保険は、いざというときにあなたの暮らしと家族を守る、心強いパートナー。
終活の中でぜひ一度、保険の見直しや防災への備えについて考えてみてください。
あなた自身が安心して毎日を過ごし、ご家族が「お母さん(お父さん)はちゃんと備えてくれていた」と思えることこそ、何よりの“贈り物”ではないでしょうか。
<筆者プロフィール>
岩井 真紀子(いわい まきこ)
FP・縁ディングノートプランナー
株式会社みらいふ 常務取締役
https://www.k-milife.co.jp/
京都市で昭和61年から保険業に携わり、長年にわたって損害保険・生命保険の提案から事故対応、暮らしの安心づくりに寄り添うパートナーとして保険の専門知識にとどまらず、「人生の最終章」にも寄り添える存在として、終活や相続分野にも積極的に取り組んでいます。
現在は、縁をつなぐエンディングノートの普及にも力を入れ、相続や老後の不安を前向きに見つめるサポートも実施している。
- 【主な資格・役職】
- ・株式会社みらいふ 常務取締役
- ・笑顔相続道 正会員
- ・京都相続診断士会 副会長
- ・相続診断士
- ・終活カウンセラー
- ・ファイナンシャルプランナー
- ・損害保険トータルプランナー
- ・証券外務員(二種)
- 【筆者へのお問い合わせ】
- 株式会社みらいふ
- E-mail:info@k-milife.net