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年始にこそ取り組もう!「死」や「老い」との向き合い方

公開日:2025-01-13 06:00

目次

2025年の年末年始は9連休という方も多かったようです。

皆さんはどのように過ごされたでしょうか。

筆者は、2泊3日の家族旅行から戻って、最初に取り組んだことが次の3つになります。

  • 1)年始の大掃除
  • 2)実家の母を訪ねること
  • 3)縁(エン)ディングノートの更新


「年始にも大掃除をするの?」と思われるかもしれませんが、慌ただしい年末にやりきれなかった部分は思い切って年始にまわしてみました。

そして、実家の母を訪ねるのは、3年前に父が亡くなって一人暮らしになった母と一緒に、父のお墓参りをすることも兼ねています。

最後の「縁ディングノートの更新」については、その年の重点テーマを決めて取り組んでいます

今年は、今後の人生を豊かに生きるために、とことん「死と真剣に向き合うこと」について考えてみました。

お墓参り


■「最期をどこで過ごしたいか?」意識調査結果


◉人生の最期を迎えたい場所

  • 日本では、7割強の方が病院で亡くなる一方、厚生労働省の
  • 人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査:調査の結果」(令和4年)では、
  • 病気で治る見込みがなく、およそ1年以内に徐々に或いは急に死に至ると考えたときに「最期をどこで過ごしたいか」という問いに対して、
  • 約半数の人が「自宅で迎えたい」と答えています。

  • その内訳は以下の通りです。

引用元:「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」(厚生労働省)

引用元:「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」(厚生労働省)


◉人生の最期に絶対避けたい場所

また、日本財団による同様のアンケートによれば、反対に「絶対に避けたい場所」として挙げられているTOPが「子の家」、次いで「介護施設」と答えられています。


Q.「あなたは、死期が迫っているとわかったときに、人生の最期をどこで迎えたいですか?」(67歳~81歳の当事者)

〈人生最期に一番望ましい場所

人生最期を迎える時、一番望ましい場所


〈人生最期に絶対に避けたい場所

人生最期を迎える時、絶対に避けたい場所


■死と向き合うことは「いのち」と向き会うこと


◉自宅で最期を迎えたい理由

自宅で最期を迎えたいと多くの方が望む理由には、心から安らげる環境で、家族や大切な人、気の置けない人に囲まれて一緒に過ごしたいという思いが根底にあるでしょう。

また、自宅には長年過ごしてきた思い出も詰まっており、慣れ親しんだ環境が安らぎをもたらしてくれるかもしれません。

病院や施設では一定の制約を受けますが、自宅であればある程度自分の好きなように音楽を聴いたりテレビを見たり好きなものを食べたり、自分のリズムで生活することができる自由さがあります。最期まで自分らしく生きたいという希望が叶えられそうです。


◉自宅で最期を迎える難しさと課題

一方で、現実的には、医療的なサポートが必要である場合に自宅では十分に受けられないことがあり、家族に負担がかかったり、緊急時の対応の難しさという課題もあり、自宅で最期を迎えられることは少ないのが現状です。

人は誰でも「出生」を起点に人間としての「生」が始まり、その終点が「死」です。

「死」について語ること自体がはばかられる傾向がある中で、人生の終点を設計せず、元気で自立できる間だけをどう過ごすかに焦点を当てるだけで、本当に十分なのでしょうか?

「真に自分らしく生きる」ためには、人生の終わり方についてもしっかりと向き合うことが必要ではないでしょうか。


■終活とは?

「終活」とは、死ぬ準備ではありません。

誰にでもいつか必ず訪れる終点の「死」を中心に時間軸で考え、その前後のことをすべて含め自分がどうしたいのか棚卸しし準備をしていくことと考えています。

「後」のことは、お葬式のこと、お墓のこと、遺産相続のこと、死後のさまざまな手続きのこと等、自分では行えないことを誰かに託しておかなければなりません。

最期をどこで迎えたいのかというのは「前」に相当します。

  • 「前」にも大きく分けて二段階があり、「最期をどこで迎えたいのか?」と併せて、
  • 闘病・認知症・介護といった状態になったら、自分はどうしてもらいたいのか?元気なうちに伝えておかなければなりません


終点からとらえて、誰かに託す部分を先に決めた上で、元気なうちは、趣味や旅行を楽しむことも、自宅の整理・断捨離をすることも、自分らしく過ごすことができるでしょう。

どこから手をつけても、どんな順番で考え始めても良いのが縁ディングノートです。

これは、人生の終点まで自分らしく生きるために、「死」や「いのち」について目を背けずに向き合うための大切なツールです。


■こどものエンディングノート


◉母の死から

縁ディングノートは何歳から書くものでしょうか?という質問を受けることがあります。

何歳でも構いませんいのちの大切さを考えるのに早すぎる年齢などないでしょう。

以前、縁ディングノートのサポートをし、印象に残っている雪子さん(仮名・40代女性)のことをお話ししましょう。

雪子さんが終活に取り組むきっかけは、お母様の死でした。

ひとり娘で相談できる身内がいなかったために、お母様の闘病・介護に娘としてどう向き合ったらよいのか最後まで迷われて悩んでいました。

亡き後には葬儀やお墓のことでも親戚から思わぬ非難を受けたりしました。

終活はまだ早いと思っていたけれど、今からきちんと取り組んでおきたいと、ご本人からの希望で、まずは縁ディングノートを書くことからスタートしたのです。


◉こどもから死や命について尋ねられ

雪子さんの隣にはひとり娘の美花ちゃん(仮名・5歳)が座っていて、表紙にウサギの絵が描かれたノートを持ってきていました。

お母さんの真似ごとをしたいのかなと思い、「美花ちゃんもいっしょに書いてみる?」と声をかけてみました。

嬉しそうに自由に絵を描いたり、覚えたてのひらがなを書いたりしながら、お母さんと筆者が話していることにも耳を傾けています。

ふとした時に、美花ちゃんの口から何気なく死や命について尋ねる言葉が飛び出してきました。

雪子さんは、ごく自然に美花ちゃんを抱きしめてしばらくじっとしていたかと思うと、

あったかいでしょう?これがお母さんの命。

と答えていました。

お母様がお亡くなりになるまで、たしかに触れて感じていた体温が「命」。

その触れられる温かさがなくなる日までをどう過ごすのか、それは楽しそうにほんとうに嬉しそうに美花ちゃんにお話ししていました。

美花ちゃんのかわいい縁ディングノートには、「いのち」というひらがなとお母さんに抱きしめられている女の子の絵が描かれました。

いつかお母さんと同じ縁ディングノートを使うようになった時に、きっとこの日の思い出が綴られることとを願っています。


子供のエンディングノート


■年始の更新がぴったりな理由

雪子さん美花ちゃん母娘の例でもわかるように、縁ディングノートに適齢期はありません。

ただ、一度書いて満足ではなく、人生の進行とともに家族の変化や考え方や生き方の変化も生じるでしょうから、都度更新していくことが必要でしょう。

筆者が、縁ディングノートの書き方をサポートする際、変更することがあってもなくても、誕生日や記念日、年始など、予め更新の時期を決めておくことをお勧めしています。

ご家族でそれぞれ作成している場合には、年始がぴったりな理由があります。

  • ●お正月の晴れやかなめでたい時期なので笑顔で語りやすい雰囲気であること
  • ●家族みんなが揃いやすい時期に書初めの行事などと絡めても楽しめること
  • ●書いて仕舞いっぱなしにならず、家族に知ってもらえること


だいぶ前に書いたままの方、途中で放置している方、まだこれからの方は、2025年巳年を機に今までの自分から脱皮してみませんか?

縁ディングノートプランナーは、初めて取り組む方にも楽しめるようにサポートしております。

笑顔相続サロン®代表でもある一橋香織著、日本法令®から出版されている「終活・相続の便利帖」(写真)は、記入部分だけでなく、相続の周辺知識も習得できるつくりになっており、筆者の主催するセミナーでも使用しております。

終活・相続の便利帖


■自分らしく生きるとは

長生きの時代・多様性の時代と言われる昨今、ほんとうに自分らしく生きるとはどういうことでしょうか。

一人ひとりに与えられた「いのち」の大切さや本質に目を向けると、自分らしさとは決して自分勝手に生きることではなく、自分と自分に関わる人たち、大切な家族やまわりの方々の人生の幸福度が自ずと上がっていくように感じています。


【筆者プロフィール】

金田 京子 (かねだ きょうこ)

ファイナンシャルプランナー

  • ライフプランニングや家計の見直しなどを中心に1万件を超える個別相談に携わり、金融経済教育インストラクター、セミナー講師としても活動。
  • 法律事務所・金融機関勤務での経験や知識を活かしながら、専門用語を使わずにわかりやすい言葉で、世代間をつなぐ相続・終活コンサルティングをおこなっております。


  • 【保有資格】
  • 縁ディングノート®プランナー
  • 終活カウンセラー®1級
  • 相続診断士® 笑顔相続道®正会員
  • 2級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)
  • トータルライフコンサルタント(生命保険協会認定FP) など