どのように最期を迎えたいかを自分自身で考えること
公開日:2025-06-16 00:00
目次
■ 自分の命について
皆さんは、もし、将来病気になったり、今の病気が悪化したとき、どのような最期を迎えたいか考えたことがありますか。
- 痛いのだけはどうにかして欲しい。
- 人工呼吸器はつけないでいい。
- 出来るだけのことをして欲しい。
色々な考え方が当然ありますが、往々にして「そんなことを言われてもよく分からないし…」と、考えることを避ける方がいます。
病院で意思確認する場合も「すべて先生にお任せします」と答える方もおられます。
現在、病院では、医療行為を受ける時、医師から説明を受け、患者が十分に理解し同意(拒否することも当然可能)するという「インフォームド・コンセント」が行われています。
インフォームド・コンセントとは「患者の知る権利」「自己決定権」「自律の原則」を尊重する考え方が根底にあり、平成9年の医療法改正で初めて努力義務として明記されました。現在、医療行為を選択する段階で、インフォームド・コンセントから一歩進んだ、医師と患者が相互に理解し合い、医療方針を決めていく形が出来ていています。
今回は、医師と患者がお互いに情報を出し合う仕組みである、「SDM」や「ACP」を通して、「自分の命の選択は自分である」の大切さをお伝えできればと思います。
■ SDM(共同意思決定)という医療の在り方
たしかに、「死」や「病気」と向き合うことは、とても重く辛いことだと思います。
また、専門的な知識がない、一般の人が、自分の人生なのだから自分で決めなくてはと言われても、それは難しすぎて、医師任せになることも多いかもしれません。
逆に、自分病気のことを知った上で決めると決意された方の中には、インターネット上にあふれた情報を読んで、自分で決めた考えに固執する人もいるかも知れません。そうすると、よりよい医療が受けられるチャンスを逃す可能性もあります。
また、医師の立場からすると、本人が希望している治療やケアにはリスクがありすぎて、責任をもって希望通りの治療やケアを行うことが出来ないこともあり得ます。
SDMとは、医学情報だけに頼るのではなく、また患者の価値観に全てを任せるのでもなく、医療者と患者があらゆる情報を共有し、対話を重ねて「協働」して意思決定をすることを指します。
同じ治療・ケアであっても、病気の症状の原因や身体の状態によって、患者の意向は異なるはずです。
自分にとって納得できる医療手段を、医師や医療関係者そして家族と共に考えていくことは、自分の人生を生きる大切なカギとなるのではないでしょうか。
■ 病院におけるACP「人生会議」
ACPとは、自分が望む医療やケアについて前もって考え、話し合う取り組みです。
筆者が、初めてACPという言葉を知ったのは、3年ほど前、都内の大きな病院の待合室でした。
「当院はACPに取り組んでいます。病気や治療に対して不安がある方は、医師だけでなく、看護師やケースワーカーも含めたチームで一緒に考えましょう。」という絵もない、字面だけの紙が貼っていました。
筆者は、その時すでに後見人のサポート業務の中で、チームで依頼人の生活を支えることの大切さを知っていたので、病院内でこんな取り組みをしているなら、多くの方が利用して欲しいと強く思いました。
病気になってしまった本人と家族は、今後の事を考えざるを得ない状況に置かれます。
本人は本人の思いがあり、家族には家族の思いがあります。
「1日でも長く家族と一緒にいたい」という思いは同じ。
ところが本人は、手術すると体力が落ちるから、仕事もできる今の状態を投薬などで維持したいという方法をとりたい。
家族は、手術して悪いところを取った方がいいと、治療方法で相容れないケースもあります。
家族だけで話すとどうしても感情的になり、本人や家族が自分の本心を言えなくなる場合もあります。
考えることから逃げたくなることもあると思います。そういう時こそ、ACPを利用して欲しいと思います。
医師だけでなく看護師、ケースワーカー、そして家族が、本人の意思決定過程を共有することは、万が一という時に、本人の意思を尊重できるだけでなく、家族の心を支える一助と必ずなります。
本人の意思を知らないまま、万が一の状況を迎えた時、誰が命の選択をするかというと「家族」なのです。
それがどれだけ家族にとって辛く悲しいことか、その選択を家族は一生負うことになる事実を知ってください。
そして、自分の人生の最期の選択を、自分でやることは、自分にとって自分を守る大切なことだと気づいてください。
■ いつもの会話がACP
ACP「人生会議」は決して終末期のためだけの取り組みではありません。
厚生労働省が人生会議についての漫画を公開しています。
- 「人生会議」普及啓発資材(全体版)漫画で読む「人生会議」
- https://www.mhlw.go.jp/content/10802000/001366245.pdf
- (出典;厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html)
ACP「人生会議」は、いつでも、どこでも、誰とでも、実はすでにやっていることかもしれません。
このコラムを読んで、思ったことを誰かと話してくだされば、それは間違いなくACP「人生会議」となります。
■ 意思は変わってもいい
「もしものときに、どうしたいか」は、変わっていくことがある
令和5年度の人生会議普及・啓発ポスターの言葉です。
ここまでSDMやACP「人生会議」のお話を伝え、どのような最期をむかえるかは、自分で決めていって欲しいとお伝えしました。
そして、一番大切なことは、今はそう思っていても、変わって良いという事です。
どのように最期を迎えたいかという問いに対する、答えは1つではありません。
日々の生活の中の体験から、その答えが正反対のものになることも、当然あると思います。
SDMもACP「人生会議」においても、それぞれの思いが大切なもので、思いが変わることもお互いに許容しながら、それを、家族や周りの人に伝えることが、最後には、自分らしく生ききる準備になっていくのではないかと思います。
【筆者プロフィール】
蓮見 倫代(はすみ みちよ)
- わらし行政書士事務所 代表
- 行政書士/相続診断士®/笑顔相続道 正会員/縁ディングノートプランナー®
「自分らしく生きる」「物も想いも、まるごと次の世代へつなぐ」――
そんな相続や終活のあり方を、一人ひとりに寄り添いながらサポートしています。
20年近く法律事務所に勤務した経験を活かし、相続発生後の銀行手続きや名義変更などの相続手続きを中心に、遺言書作成やエンディングノート活用、家族信託など幅広いご相談をお受けしています。
相続や終活に不安を感じている方が、「笑顔」で次のステージに進めるよう、心を込めてお手伝いします。
- 【筆者へのお問い合わせ先】
- わらし行政書士事務所
- ・HP: https://warashigyo.com/
- ・E-mail: m-hasumi@wrashigyo.com