自動車保険における死亡保険金の受取人について
公開日:2025-02-10 00:00
目次
自動車保険において、契約者が死亡した場合、その保険金が誰に支払われるのかは重要な問題です。
自動車保険は、契約者が事故により死亡した際に発生する死亡保険金の支払い、またはその他の賠償金の支払いに関わる契約内容があります。
このコラムでは、自動車保険における死亡事故後の保険金受取人について、契約内容、保険金の種類、手続きの流れなどを解説します。
筆者は、未婚の50代男性が自動車同士の接触事故で亡くなられたケースを担当しました。その際、ご両親が既に他界されていたため、相続人の定義や保険金受取りの実務において複雑な問題に直面しました。本稿では、その経験から得られた知見を共有させていただきます。
■ 自動車保険における死亡保険金
まず、自動車保険で死亡した場合に支払われる保険金には、いくつかの種類があります。
最も一般的なのは「人身傷害保険」や「自賠責保険」などが該当しますが、それぞれの保険金が誰に支払われるかには違いがあります。
1. 人身傷害保険
人身傷害保険は、自動車事故により契約者や被保険者が死亡した場合に、その遺族や指定された受取人に保険金が支払われる保険です。
この保険金は、死亡時に支払われる「死亡保険金」として設定されていることが多いです。事故により死亡した場合、その保険金は契約者自身の保険に基づいて遺族に支払われます。
2. 自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)
自賠責保険は、すべての自動車に必ず加入が義務付けられている保険で、交通事故により死亡した場合にも適用されます。
自賠責保険の保険金は、事故で死亡した人の遺族に支払われます。支払いの対象者は、基本的に契約者や被保険者が死亡した場合の遺族ですが、遺族の定義やその範囲には法律が関わるため、具体的な受取人については注意が必要です。
自賠責保険の死亡保険金の受取人は、自賠責保険で遺族とされている被害者の父母、配偶者及び子に範囲は限定されます。
まず、自動車事故によるケガ、後遺症、死亡の場合、相手方の自賠責保険からお金を受け取れます。基本的なお話ですが、自賠責保険は「強制保険」と言って、自動車を運転する人であればそもそも絶対に加入しているものです。不足分のカバーとして民間の自動車保険にほとんどの方が加入しています。
※損害保険料率算出機構が発表した「自動車保険の概況」によると、2020年度の任意保険の加入率は、民間の自動車保険が75.1%、自動車共済が13.3%、合計88.4%でした。
そして、自賠責保険は、被害者の過失が70%未満だと、過失割合は考慮されず全額受け取れます。受け取れる額は以下の通りです。
【被害者が受け取れる限度額(被害者1名あたり)】
◉傷害 : 120万円
- ◉後遺障害:
- ※神経系統・精神・胸腹部臓器の著しい後遺症により介護が必要な場合
- ・常時介護 4,000万円
- ・それ以外 3,000万円
◉上記以外:等級により75万円(14級)~3,000万円(1級)
◉死亡 3,000万円
ここで、思い出していただきたいのですが、人身傷害保険に加入するメリットは以下の2点でした。
- ① 自分に落ち度があっても損害の全額を補償してもらえる
- ② 示談交渉を待たずにお金を受け取れる
つまり、人身傷害保険に加入していなくても、最終的には少なくとも、相手の過失割合分の額については、相手に損害賠償請求できるのです。
相手が自動車保険に加入していれば、基本補償として「対人賠償保険金」があり、金額は無制限となっています。なので、その分は支払ってもらえるということです。
【無保険相手の損害から守るために】
なお、相手が無保険であるリスクはありますが、多くの損保会社ではその場合に備えて自動車保険には「無保険車傷害特約」が自動的に付いています。
この特約が付いていれば、相手方が無保険でも、損害の補償を受けることができます。もしもついていない場合は必ず付けるようにしてください。
3. 搭乗者傷害保険
搭乗者傷害保険は、自分の車に乗っている契約者やその家族、友人などが事故に遭った場合に支払われる保険です。
契約者が事故で死亡した場合、その家族が保険金を受け取ります。つまり、死亡した本人が保険契約者の場合、その保険金は遺族が受け取ることになります。
■ 自動車保険の死亡保険金の受取人は誰か?
自動車保険の死亡保険金を受け取る権利があるのは、主に契約者の「遺族」です。ただし、誰が遺族として保険金を受け取ることができるかは、契約内容と法律によって異なります。一般的には、契約者が死亡した場合、次のような順番で受取人が決まります。
1) 配偶者
契約者に配偶者がいる場合、最も優先的に保険金を受け取るのは配偶者です。
夫婦は法律上の親族であり、配偶者が死亡した場合、その配偶者が遺族となり、保険金を受け取ることができます。
配偶者が死亡時に保険契約に基づく保険金を受け取るためには、契約時に「配偶者」を受取人として指定している必要があります。
2) 子供
契約者に子供がいる場合、配偶者がいない場合や配偶者が受取人として指定されていない場合、子供が保険金を受け取ることになります。
子供が未成年の場合は、法定代理人(通常は親)が代理で受け取る形となります。ただし、契約者の死亡後、保険金の支払いについては遺産分割が関わることもあります。
3) 親(またはその他の親族)
配偶者や子供がいない場合、保険金を受け取る権利があるのは契約者の両親や兄弟姉妹など、直系の親族です。
契約内容や保険会社の規定によっては、これらの親族が保険金を受け取ることになりますが、特定の条件が必要となる場合もあります。
■ 保険金の受け取り手続き
契約者が死亡した場合、遺族が保険金を受け取るためには、保険会社への申請手続きが必要です。通常、保険会社では次のような手順を求めます。
1) 死亡証明書や戸籍謄本の提出
遺族が保険金を受け取るためには、死亡証明書や戸籍謄本を提出し、契約者の死亡を証明する必要があります。これらの書類は法的に認められた証拠となります。
2) 保険証券や契約書の確認
契約者が死亡した際、保険証券や契約書に記載された受取人を確認し、その受取人が保険金を受け取る権利があることを確認します。
契約書の内容により、受取人が指定されている場合と、法定相続人が受け取る場合があるため、契約内容の確認が重要です。
3) 相続手続き
場合によっては、保険金は相続の一環として遺産分割協議に含まれることもあります。
このため、保険金を受け取る前に相続手続きが必要になる場合があります。
遺産分割協議書の作成や相続税の手続きも関連してくることがあり、慎重に進める必要があります。
■保険金受取の注意点
自動車保険で死亡した場合の保険金受取には、注意すべき点があります。
特に契約時に受取人を明確に指定していない場合や、複数の相続人が関わる場合、保険金の受け取りに関して遺産分割協議が必要となる場合があります。
また、契約者が保険金を受け取る権利を誰に譲渡するかを選択している場合、事前に受取人の変更手続きを行っておくことが重要です。
■自動車保険金の受取人の確認を
自動車保険で死亡した場合、その保険金は契約者の遺族が受け取ることが基本です。しかし、具体的な受取人は契約内容や相続の状況、受取人の指定方法によって異なるため、契約時に注意深く確認しておくことが大切です。また、保険金の受け取りには必要な手続きがいくつかあるため、適切な手順を踏むことが重要です。
生命保険の受取人はその保険金の受取人は基本的に指定されていますが、自動車保険での死亡保険金は受取人を事前に指定して加入することはありません。
自動的に遺族となっているケースがほとんどです。もし、配偶者や子がいない場合は直系の親族へと流れ、複雑になってきます。今回は父母共に他界している50代の独身男性の接触事故のサポートをした際に自賠責、人身傷害、搭乗者傷害など保障の内容で受取人の範囲や手続きが異なっていたため、ご紹介させていただきました。
【筆者プロフィール】
伊藤由美子(いとうゆみこ)
- AFP(ファイナンシャルプランナー)
- 笑顔相続道®正会員
- 相続診断士
- 豊橋市でFPカフェ×保険代理店を運営 東三河で住宅購入、教育資金、相続まで生まれてから亡くなるまでのリスクマネジメントを行っています。
- 東愛知新聞相続コラムQ&A・FMヤシの実ラジオのパーソナリティーなど幅広く地元メディアにも出演中。
- 【筆者へのお問い合わせ】お問い合わせ先
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