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共働き夫婦の65歳以降の「遺族厚生年金」受給対象確認の必要性と年金の時効

公開日:2024-12-23 06:00

目次

■公的年金は、「保険」

『年金』と聞くと、老後にもらうだけのイメージがありませんか?

実際には公的年金の給付を”老後にもらう”、つまり、どれくらい長生きするか分からないリスクに備える「①老齢年金以外にも2つの給付があります

病気やケガで日常生活や働くことが難しくなり、障害が残った場合に受け取れる「②障害年金」と、

生計を維持している方が亡くなって、遺族として収入が少ない状態で遺される場合に保障する「③遺族年金」です。

公的年金は、人生において万が一が起きた場合に大きなリスクとなる基本部分を日本の社会全体で支え合う公的な「保険」制度です。

このコラムでは、遺族厚生年金で、既に老齢年金を受け取っている65歳以降の共働き夫婦の遺族厚生年金の計算と年金の時効について取り上げていきます。


■遺族年金の概要

まず、遺族年金制度は、主たる生計維持者が亡くなることによって遺族が貧困に陥るのを防ぐ役割を果たしています。

遺族年金は、「国民年金」と「厚生年金」加入者では、受給要件や内容が異なります。


1)「国民年金」加入者の遺族年金

公的年金の被保険者全員が対象となるのが「国民年金」部分の「遺族基礎年金」です。

「遺族基礎年金」は、18歳年度末までの子がいる配偶者あるいは、20歳までの障害のある子をお持ちの配偶者に支給されます。

つまり、遺族基礎年金は、子のために支給される年金です。

 

2)「厚生年金」加入者の遺族年金

厚生年金加入者の場合、その遺族:配偶者・子、該当がいなければ親など、遺族基礎年金より受け取れる人の範囲が広いのが「遺族厚生年金」です。 

遺族年金


65歳以降の遺族厚生年金の計算方法

厚生年金加入者だった人に生計を維持されていた配偶者(遺族)には、遺族厚生年金を受け取れる権利が発生します。

65歳以降の場合、遺族厚生年金は配偶者の「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」を併せて受け取ることができます

しかし、遺族厚生年金については、配偶者の老齢厚生年金を差し引いた差額分で計算されます。

配偶者が受け取れる年金は以下の計算となります。

「配偶者が受け取れる年金」=配偶者の「老齢基礎年金」+「老齢厚生年金」+「差額分の遺族厚生年金」


ということは、配偶者自身の老齢厚生年金が、遺族厚生年金よりも高いと差額支給分の遺族厚生年金は無く、老齢基礎年金と老齢厚生年金のみとなります。

65歳以降の配偶者に支給される遺族厚生年金は、差し引かれる前の遺族厚生年金の額は、以下①、②どちらか高い額を用いて算出することになっています。


1) 遺族厚生年金の計算式

──────────────────

  死亡した人の報酬比例部分の3/4

  ①×2/3 +自身の老齢厚生年金×1/2

──────────────────

と②のうちの高い額から配偶者自身の老齢厚生年金を差し引いた額が実際の差額支給分として支給されます。

夫婦共働きで、配偶者の老齢厚生年金が、遺族厚生年金よりも高いと、遺族厚生年金はないことになり、配偶者自身の老齢基礎年金と老齢厚生年金のみとなります。

よく知られている①の場合だけで判断せずに、年金事務所で遺族厚生年金の支給があるかを確認して頂くことが大切です。

 

2) 事例を基に年金額を計算をしてみましょう


【事例】

夫の老齢厚生年金額:140万円

妻の老齢厚生年金額:100万円

  年金を受給する夫婦世帯の遺族厚生年金

 ≪年間の厚生遺族年金の計算式≫

 の場合:140万円×3/4105万円

 の場合:[①105万円 × 2/3 (= 70万円]+[100万円 × 1/2( = 50万円)]=120万円

 つまり、

105万円<②120万円

遺族厚生年金の額は、①と②の高い額を用いります。

この事例の場合、遺族厚生年金の額は、②の120万円

→妻は、自身の老齢基礎年金と老齢厚生年金に加えて、年間で遺族厚生年金20万円(120万円-100万円)を受け取ることができます。

月額にすると、20万円 ÷ 12 ≈ 16,667円となります。

  夫婦の厚生遺族年金計算


■時効を迎えた年金は失効する

年金を受ける権利には5年の時効があります。

遺族厚生年金の支給がある場合には、手続きが必要です。手続きをせずに放置し、時効を迎えてしまった分は、失効となり受給することはできないので、注意が必要です。

遺族年金の受取りの手続きがご自身の都合で完了しておらずに滞ってしまい6年が経過していたとすると、遡ることができるのは5年間分で、5年以上より前の1年間分の遺族年金は失効してしまい受け取ることはできません。


■受給対象の有無は年金事務所で確認

夫婦共働き世代が増えています。遺族厚生年金が受け取れるかどうかは、実際に計算してみないと分からないので、対象になるかどうかを年金事務所で確認するようにしましょう。何らかの事情で出向くのが難しい場合は、委任状で代理人に頼むこともできます

年金の受取りには時効(5年)があるので、必要な手続きは後回しにせずに手続きをすすめましょう。

老後年金のことでご不明な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。


【筆者プロフィール】

大北 明理(おおきた あかり)

  • スッキリ笑顔を増やす 年金が好きな保険屋さん
  • ファイナンシャルプランナー
  • 相続コンサルタント

 

人生とお金(ライフプラン)の相談、相続・死後についてのお悩み相談に対応。ヒアリングからの現状把握を大切にし、難しい専門用語を使わずに、図やイラストを使って現状を見える化することで相談者さんと課題を共有しながらコンサルティングを行っています。

《保有資格》

  • AFP
  • 公的保険アドバイザー®
  • 相続診断士®
  • 損害保険トータルプランナー®
  • 損害・生命保険募集人
  • 縁ディングノートプランナー
  • 笑顔相続道正会員


【筆者への問い合わせ先】

E-mail:  akari_fp@plus-rifure.com