保険契約のメンテナンスの重要性
公開日:2024-12-16 06:00
目次
■家族の変化が生命保険にも影響⁉
生命保険契約は長期にわたり継続するものです。ただし契約してから時間が経過すると、契約者本人だけでなくその家族にいたるまで状況が変わってくるのが常です。
だから生命保険契約は定期的なメンテナンスを行うことがとても重要です。実際にメンテナンスがされていないとどんなことが起こる可能性があるのかを解説します。
■受取人から請求ができない保険契約
ある時、筆者のお客様から「親戚が保険に関することで困っているので相談に乗ってほしい」と連絡があり、こちらから電話をしました。相談者はAさん。
相談内容を要約すると、80代後半の父が今年3月に亡くなり保険金の請求や銀行口座の解約などがひと段落して遺品整理をしていたところ、請求していない父の保険証券が出てきたが、500万円の死亡保険金の受取人が母になっているというもの。
通常であれば、受取人である母から保険金請求手続きをすればよいのですが、その受取人の母は父が亡くなる1か月前に認知症による徘徊で行方不明になってしまい、現在半年以上、生死不明とのこと。
母が受け取れないならAさん本人が受け取りたいとの希望ですが、可能なのでしょうか。
■保険金の受け取りが困難になるケース
通常、保険金受取人が死亡していた場合は、受取人の法定相続人が受け取ることになります。
Aさんは一人息子でしたので、父亡きあとの母の法定相続人はAさんしかいません。そのため、この場合は保険金をAさんが受け取ることになります。
しかし今回は母が生死不明な状況です。
こういった場合の対応は保険会社により異なるものの基本的には
1.失踪宣告(普通失踪)※注が認められると、母は死亡したものとみなされるのでその後の保険金請求。
2.家庭裁判所で不在者財産管理人の選任を行い、一旦保険金を保険会社から支払ってもらう。(Aさんは自由に使うことはできない)
となります。
- ※注
- 【民法第三十条一項】
- 不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
- 【民法第三十一条】
- 前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、前条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。
今回のAさんのケースですと、母の失踪は直近1年以内ですので、生死が不明な現時点では1.失踪宣告の選択肢をとることは不可能です。
2.不在者財産管理人の選任のケースでもAさんがすぐに受け取れないことには変わりありません。
"どうすればよかったのか?"ー現保険契約を最大限に生かすために
今回のケースでは母の判断能力が衰えてきた段階で受取人を息子のAさんに変更しておけばスムーズに対応できたでしょう。
しかし、根本的なことを言えば
② 定期的に保険のメンテナンスを受ける。
以上のようなことが必要だったのではないでしょうか。
生命保険は加入して終わりではなく、車と同じく定期的なメンテナンスが必要です。本来保険営業マンが定期的にお客様へ情報提供やメンテナンス訪問をしていればこんなことにはなりませんが、担当営業の退職や支店の統廃合などの事情により契約が放置されるケースも少なくありません。
今回のケースは受取人が行方不明というものでしたが、仮に存命だったとしても認知症の場合は成年後見人を選任する必要があり手続きが煩雑になりますし、受取人が先に亡くなっている場合はその法定相続人が受け取ることになるなど、メンテナンス不足は生命保険が本来の機能を果たせないことにもつながりかねません。
保険契約者本人の認知症対策については、家族が代理で請求できる特約の整備が保険会社で進んできているものの、受取人の認知症対策については意思能力が認められない場合、保険会社の特約では対応できず原則成年後見人からの請求となってしまいます。
■生命保険は車と同じ
筆者含む保険業界の人間が、メンテナンス不足によりお客様に不利益を与えることのないようにしなければならないのはもちろんです。
アフターフォローをきちんと行ってくれる保険会社、代理店から加入しておけば自身が忘れていてもメンテナンスを促してくれるでしょう。
ただ「生命保険は車と同じくメンテナンスが必要なもの」という認識を契約者側も持っておき、契約者または被保険者に何か変更・変化があれば契約者からすぐ相談する意識を持っていると、大切な家族のためにより安心できるのではないでしょうか。
【筆者プロフィール】
福本 知輝 (ふくもと ともき)
福本FP事務所 代表
- 広島県相続診断士会 副会長
- 寺院コンサルタント
- 2級ファイナンシャルプランニング技能士
- 相続診断士
- 笑顔相続道正会員
- 終活カウンセラー1級
- 縁ディングノートプランナー
西日本を中心に一般の方のライフプランや資産運用に関する幅広いアドバイスは勿論、寺院や公務員向けのセミナーも得意とし、豊富な知識と経験を持つ。「生前対策」から「相続発生後の次世代への引き継ぎ」までを一貫してサポートすることで、お客様の安心と笑顔を大切にしている"笑顔相続専門家"です。
【筆者への問い合わせ先】
福本FP事務所
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