「理想はピンピンコロリだよ。」
「やっぱり最後まで自宅がいいねぇ。」
「子どもたちには負担をかけたくないし、認知症になったら施設に入れてもらうよ。」
人生の最期をどう迎えたいか、元気なうちならこんな話もできるでしょう。
人生100年時代の到来とともに、長生きをするなら最後まで健康でいたい、健康寿命を延ばしたいという意識が高まってきているものの、厚生労働省の調査によると、平均寿命との乖離は男性で約9年、女性では約12年にもなるのが現状のようです。
筆者はファイナンシャルプランナーとして老後資金や介護費用の準備について、相続の対策をどうしたらよいのか、といったお金のご相談を受けることがあります。
「老後はどんな暮らしをしたいのですか」と尋ねると、
「遠い先のことでよくわからない」「一般的にはいくら必要か」といった声もよくお聞きします。未来を思い描かずにお金だけを増やしたり準備したとしても、いくら貯めても不安が解消されないままになってしまうことも少なくありません。そんな時は、
「まずはこれから先をどう生きたいのかを一緒に考えていきましょう。」
と、お声かけしています。
【人生会議(ACP)】
ところで、皆さんは「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。人生の最終段階における医療・ケアについて、本人が家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合う取り組みとして厚生労働省が普及・啓発を図っているもので、2018年には一般公募による愛称が「人生会議」に決まりました。
11月30日(いい看取り・看取られ)を「人生会議の日」として、人生の最終段階における医療・ケアについて考える日としています。次のようなわかりやすいショートムービーも公開されていますので、ご覧になったことがあるかもしれません。
●アニメーション1「大切にしていることを信頼できる人へ話そう編」
●アニメーション2「こんな私のストーリー編」
これらの動画を見ると、実は、終末期の医療ケアについての話だけではなく、どのライフステージにおいても自分らしく生きるためにどうしたいのかを考えて、身近な人と話し合っておこう、という趣旨が伝わってきます。
【終活とは?】
「終活」という言葉自体はかつてより認知度も高まってきており、関心を持つ方も増えてきたようですすが、まだまだ死ぬための準備なんて縁起でもない、まだ早い、といった声も聞かれます。
そもそも終活とは何でしょうか。
筆者は、誰にでもいつか必ず訪れる「死」を起点として時間軸で考え、その前後のことをすべて含め自分がどうしたいのか棚卸しし準備をしていくことと考えています。
「後」のことは、お葬式のこと、お墓のこと、遺産相続のこと、死後のさまざまな手続きのこと等、自分では行えませんので、誰かに託しておかなければなりません。
では、「前」はどうでしょうか。「前」には大きく分けて二段階が考えられます。
もしも認知症になったら、自分はどうしてもらいたいのか、もしも延命治療を行うか否かの判断が必要になった時にはどうしてもらいたいのか、元気なうちに伝えておかなければ、その望みを叶えることは難しくなってしまうでしょう。
元気なうちであれば、誰かの力を頼らずとも趣味や旅行を楽しんだり、やりたいことができるでしょう。
国が普及・啓発を図っている「人生会議」とは、まさに終活そのものと言えるのではないでしょうか。
【エンディングノートはプランニングノート】
では、具体的にはどのように終活を進めていけばよいのでしょう。
時間軸でとらえた場合は、大きく分けて3段階の準備になります。
- 生前・・・元気なうちにしたいこと、生前整理、医療や介護のケアのこと など
- 死の起点・・・葬儀の希望、費用、お墓について など
- 死後・・・遺産の整理、相続、遺品整理 など
皆さんなら、どこから準備を始めたいでしょうか。どこから始めるのがよいのでしょうか。
正解はありませんが、生きていくうちに、考えも変わってきますし、ただ話をしておくだけでは、家族でも聞いている人とそうでない人が出てきたり、聞いていることが違ったりすることもあるでしょう。
自分自身でもなかなか考えをまとめることは難しいかもしれません。
そんな時に役に立つのが、エンディングノートです。エンディングノートはプランニングノー
トです。どこから取り掛かっても構わないので、今一番気になっているところから始めるとよいでしょう。
どのノートを使用してもよいのですが、色々あって迷ってしまうという方には、笑顔相続サロン®代表の一橋香織著、日本法令®から出版さ
れている「終活・相続の便利帖」(写真)がおすすめの一冊です。記入部分だけでなく、相続の周辺知識も習得できるつくりになっており、筆者の主催するセミナーでも使用しております。
まとめ
「負担はかけたくない」「子どもたちに任せたい」「言わなくてもわかっているだろう」という思い込みで、じぶんの希望を家族や身近な人たちに伝えていなかった時に、悩んだり困ったり、時には一人で決断しなければならない重責に押しつぶされそうになったりするのは、自分自身ではなく、大切な家族やまわりの方々です。
「どうしたいのか」は変わっていくこともあります。
最後まで自分らしく生きるために、元気なうちから「人生会議」をしておきませんか。
私たち縁ディングノートプランナーは、エンディングノートの書き方だけをお伝えしているのではなく、最後の時のことだけではなくこれから先をどう自分らしく生きるのかを一緒に考えていくお手伝いをしています。
金田 京子 (かねだ きょうこ)
ファイナンシャルプランナー
ライフプランニングや家計の見直しなどを中心に1万件を超える個別相談に携わり、金融教育インストラクター、セミナー講師としても活動。
法律事務所・金融機関勤務での経験や知識を活かしながら、専門用語を使わずにわかりやすい言葉で、世代間をつなぐ相続・終活コンサルティングをおこなっております。
【保有資格】
縁ディングノートプランナー
終活カウンセラー®1級
相続診断士® 笑顔相続道正会員
2級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)
トータルライフコンサルタント(生命保険協会認定FP) など
【問い合わせ先】