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つなぐ本家のバトン「おひとりさま 長男の役割」

公開日:2024-08-19 06:00

目次

相続対策は100人いたら100通りと言われています。

この度、先祖代々続く家の長男で跡取りの立場にあり、現在おひとりさま。自身に何かあったとき、この家の行く末を気にしていた方の相談を受け、約10か月がかりで課題を洗い出し、対策を実施した内容をまとめました。

参考になれば幸いです。

【きっかけはエンディングノートセミナー】

そのきっかけは、当社主催のエンディングノート綴り方セミナーへ出席されたこと。この方は、とても真剣な表情で参加させており、セミナー終了後の個別相談も希望となっていたので、後日個別相談を実施。

最初の質問は、「姪っ子を受取人とした生命保険の契約は出来ますか?」という内容。理由が気になったので「可能性はあると思います。それにしても何故その様にお考えでしょうか?」と質問してみたところ、本当の目的を語ってくれたのです。

 その方は長男として本家を継いでいるのですが、現在はおひとりさまで本家に一人暮らし。自身に万が一のことがあった場合の心配していたのです。長男としての責任も感じており、本家の途切れさせるわけにはいかないので、その時は本家を姪に任せたいという希望を持ち、そのためのお金を残したいので姪受け取りの保険に入りたいというのが本当の目的でした。

 その想いを聞いた筆者は、相談者の実現したいことは保険に入ることではなく、「長男として生まれた本家を自分の代で途切れさせないように、次世代にバトンをつないでいきたい。ただ、姪なので大きな負担はかけたくない」ということであると考察しました。

 そうなると保険でお金を残すことは手段の一つに過ぎません。そこで、「その目的を叶えるにはお金を残すだけでは難しいかもしれません。エンディングノートを書きながら、課題と対策を考えてみましょう」と提案し、終活サポートをスタートする事としました。

【エンディングノートサポートで浮き上がった課題】

エンディングノートは、終活や相続対策を隅から隅まで考えて書き残すノート。サポートし書き進めていくと、今回の目的を達成するための大きな課題が、下記の通り3つ浮き彫りとなったのです。

  • 課題:姪は法定相続人ではない

相談者は3人の姉と4人姉弟で、皆さん健在。そうなると、姪は法定相続人ではないため本家を相続することが出来ないという課題。

  • 課題:生前も姪を頼りにしたい

相談者は一人暮らしなので、体が不自由になったり後見が必要になった場合困るので、その時も姪を頼りにしたい。ただ、姪の住居とはかなり距離がありました。

  • 課題:先祖代々のお墓の墓守は難しいだろう

先祖代々のお墓があるのですが、相談者と姪の住居はかなりの距離があるため、姪に先祖代々のお墓の墓守まで頼むことは難しい。お墓対策は、自身で何とかしなければならない。

【3つの課題ごとに解決策を模索】

エンディングノートを書き進めると、様々な項目を深く考えることになり、解決すべき課題が浮き彫りになる効果があります。今回も3つの大きな課題が浮き彫りとなったので、一つずつ解決策を模索していきました。

  • 解決:姪は法定相続人ではないという課題

この課題を解決するベストな方法は、遺言の作成。

姪に遺贈するという内容の公正証書遺言を作成することで解決可能。

  • 解決:生前も姪を頼りにしたいという課題

生前対策で特に大きな課題は認知症等になった場合の後見の問題。加えて、元気なうちからの安否確認、まだ後見は不要だが、体は不自由になった場合の財産管理等の課題を、姪を受任者とした見守り・財産管理・任意後見の公正証書を作成し姪が活動しやすくしました。

  • 解決:先祖代々のお墓の墓守は難しいという課題

この点は、姪にも相当な負担になるため、先祖代々のお墓は、自身が元気なうちに墓じまいをすることで解決。そのうえで、相談者自身が亡くなった際は、海への散骨を希望され、沖縄のさんご葬を当社にて紹介し予約完了。

さらに、お墓のことも含め、自身が亡くなったあとの死後事務をサポートするための死後事務委任契約を、姪を受任者として公正証書を作成し完了。

3つの課題解決後、もう一つの課題

遺言・後見・死後事務と、生前から亡くなった後のことまで全て公正証書で作成でき、本家をつないでいくことが出来るとわかったことで相談者はとても安心していました。

ただ、ここで懸念が一つ。このような大変なことを姪一人に任せるとなると相当な負担になるのでは?ということ。この懸念は当社が姪のサポートをする項目を公正証書に加えることにより解決となりました。

【家族で想いを共有】

ここまでで、長男として本家のバトンをつないでいく対策は完成。あとは、公証役場に行き公正証書を作成するだけとなったのですが、その前に、最も大切なことがあります。

それは、姉3人と受任者である姪との全員で想いを共有し理解を得ること。これがないとせっかく考えた対策も公正証書も絵に描いた餅となってしまいます。

そこで、姉3人と姪に、この対策と想いをお伝えしたうえで、公正証書を作成することにしました。関係者全員集合で、相談者の想いと今までの経緯、公正証書の意義等を伝える場を設けました。

その結果、姪を含めて全員が快諾。相談者の想いが伝わり、相談者もほっとされ安どの表情を浮かべ、本家のバトンをつなぐという大きな懸念材料がなくなり、今後の生活に弾みがつくと喜んでおられました。

 

【まとめ】

100人いたら100通りの相続があるといわれています。
今回は、姪受取の保険に入りたいという相談が始まりでした。

もし、その保険の手配をして完了となっていたら、相談者の真の目的は達成出来なかったと思います。

大事なのは、目的と手段を分けて考えること。

今回の目的は、あくまでも「本家のバトンをつないでいきたい」が自分はおひとり様なのでどうしたらよいのだろう?という不安を解決すること。保険・公正証書等々はそれを解決するための手段でしかありません。 

相続対策について漠然とした不安を抱えている方も多いはず。保険や遺言等は対策のひとつに過ぎず、それだけでは解決しないかもしれません。自身は 「なにを達成したいのか?どの様な目的で対策すべきか?」という観点から考えてみると、整理がつきやすいでしょう。

 なかなかひとりでは整理も大変。一緒に整理して対策を考えてくれる「頼れる相続コンサルタント」に相談してみるのも、問題解決の近道ではないでしょうか?

栗原久人

「笑顔相続サロン®静岡」代表
「FP事務所 LP想暖や」代表 
「保険代理店 有限会社シー・フィールド」代表取締役
「Dog care salon Oli」代表

〒427-0005 静岡県島田市岸町643-4   電話 0547-33-1666
Eメール c-field@c-field.com
HP https://egao.lpsoudanya.com/
上級相続診断士・終活カウンセラー・ファイナンシャルプランナー(AFP)生前整理カウンセラー・住宅ローンアドバイザー・縁ディングノートプランナー・笑顔相続道®NEXT講師

ファイナンシャルプランナー歴・保険代理店経営歴共に20年超、ライフプランや家計の見直し等の相談件数は2000件以上。

2019年笑顔相続サロン®静岡を開設 特に相続診断士×ファイナンシャルプランナー×終活カウンセラーの要素を活かした、終活+生前+相続のトータル対策を得意としている。

著書

「良い相続 悪い相続 チャートで把握する相続危険度」日本法令 共著
「もう会えないとわかっていたなら」扶桑社 共著
「専門用語を使わない!相続ワードの伝え方」日本法令 共著