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故人の遺産の見つけ方

公開日:2024-08-05 06:00

目次

故人がどんな財産を遺したのかわからないという相談を受けることが、しばしばある。そのような状態で、相続するかどうかの選択をせまられることは、相続人にとっては、なかなか酷な話だ。

しかし、故人が亡くなったことを知った日から、原則として3ヶ月以内に相続放棄や限定承認、4ヶ月以内に準確定申告、10ヶ月以内に相続税申告と期限が決まった手続きが次々とやってくる。

本人が亡くなった後の財産調査には限界はあるが、可能な限りの調査を尽くして財産を見つけなくてはならない。

調査の方法はいろいろあるが、今回は、筆者がこれまで利用したいくつかの制度と方法を書きたいと思う。

1 自宅の調査

故人が居住していた自宅は、故人の財産だけでなく、故人の生活パターンや癖を知る多くの情報がある場所だ。施設入所などで、数年住んでいない状態であっても、故人が生活していた状態が見えれば、故人の物の整理の仕方が見えてくる。

几帳面で書類が綺麗に揃っている場合、とにかく1箇所にどさっとまとめている場合など、個人の癖をしれば、手がかり探しやすさも変わってくる。

高齢になると、だんだんと整理が面倒になり、書類などは重さもあるので積み上げてしまう人もいる。ゴミを出すのも、高齢で力がなくなっている人にとっては、負荷のかかる作業だ。そうすると、だんだん家の中は大量の物にあふれていくケースも多い。例えば上へ上へと書類を積み上げているとすれば、最近の書類は上の方にあるか、滑り落ちているかもしれない。このように、その家の状況を見て、その場で感じられることは多く、そこから財産を探す大きな手かがりを見つけられる。

ただし、個人的な場所に足を踏み入れる以上、相続人やご家族に不愉快な思いを与えないように、事前に丁寧な説明と、了解を頂くことは絶対必要だ。筆者は、家族がその場に同席する場合は説明しながら作業したり、同席されない場合は、事前説明と事後の報告を丁寧にするようにしている。

また調査は、できれば家族が掃除や整理する前の方が、見つけやすい。なぜなら、故人の生活パターンや癖がそのまま残っていること、家族にとってゴミと思うものが大切な手がかりであることもあるからだ。

筆者が担当した相続の相談で、自宅の調査をした際に、現金、通帳の他に、高額な医療行為の契約書と領収書を見つけたことがある。故人が生前、保険適用外の治療を希望し、数百万円の支払いをしていた。

病院に連絡すると、まだ治療が始まったばかりであるので、返金できるとのことで、かなりの額の返金を受けた。

このように、紙1枚が遺産にたどり着くツールとなることは、珍しくはない。

2 国内の株の保有

金融商品取引所に上場されている内国株式、新株予約権、投資口(REIT)などの口座が開設されているか確認する方法として、証券保管振替機構(ほふり)への「登録済加入者情報の開示請求」がある。これは、株の保有を調査するのに有効だ。

【証券保管振替機構開示請求webサイト】
https://www.jasdec.com/procedure/shareholders/disclosure

開示される情報の見本

(出典:https://www.jasdec.com/assets/download/ds/certificate/kaiji/kaijikekka.pdf

    証券保管振替機構情報通知書例)

ただし、この開示請求では、具体的な銘柄などは分からないため、開示された情報に基づいて、改めて、各証券会社、信託銀行への問い合わせが必要である。

3 生命保険契約照会制度

死亡した故人が保険契約者または被保険者となっている生命保険契約の有無を、生命保険協会を通して生命保険会社に確認する制度である。ちなみにこれは、認知症になった場合にも利用できる。

【生命保険契約照会制度のご案内webサイト】
https://www.seiho.or.jp/contact/inquiry
【照会できる保険会社一覧】
https://www.seiho.or.jp/member/list/

4 まとめ

筆者が経験したことにこんなことがあった。Aさんの財産管理を任され、Aさんから何度もヒアリングを行い、数年間、全ての財産管理をしてきた。しかし、Aさんは自宅が荷物であふれていることをあまり知られたくない様子で、どうしても必要な場合にしか自宅への訪問ができず、しかも管理を始めて早々に施設に入所された。

その後、Aさんが亡くなった後、自宅の整理をしていたら、大量の荷物で開けられなかった和ダンスの一番下の引き出しから、Aさんの配偶者が残した多額の現金が見つかった。

Aさんがこの存在を知っていたかどうかは今としては分からないが、もしAさん本人が知らなかったとしたら、本人のヒアリングだけでは財産の把握は不完全な場合があるということだと実感した。

また、最近「遺品整理」という言葉を目にも耳にも良くするようになった。

自宅の調査でも書いた通り、財産の手がかりになるものは、ほんの些細なメモや封筒、紙一枚の世界だ。

遺品整理は、そういう意味でも、書類の意義や相続のことを分かっている人にお願すれば、財産にたどり着く書類などを見つけてくれるはずだ。また、相続に関係する書類は、幅広く種類も多い。相続だけでなく、相続後に自宅を売却する際に、どういう書類が役に立つかなどを分かっている業者に依頼しないと、知らぬ間に大切なものが処分されているというケースがあるだろう。

信頼できる遺品整理業者を相続人につなぐこと、そして、遺品整理業者とチームを組んで財産の手掛かりを見つけることも、相続診断士の大切な役目の一つであると筆者は考える。

蓮見 倫代(はすみ みちよ)

笑顔相続道正会員
相続診断士
縁ディングノートプランナー

都内法律事務所でパラリーガルとして勤務しつつ、その経験をもとに、「物」も「想い」も余すところなく次の世代へ引き継ぐ相続を目指し、エンディングノート書き方講座も開催。

相続発生後の銀行の手続きなど相続手続きを得意としています。

【お問い合わせ先】
hasuminhelp@gmail.com