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人生100年時代のセカンドライフ②~介護にかける費用~

公開日:2024-07-15 06:00

目次

【はじめに】

皆さんは「介護」という言葉にどんなイメージを抱いていますか?

介護される側、身内を介護する立場になった場合、或いは仕事として介護に携わる方など、状況や立場によっても異なるかと思います。

どちらかといえば、ネガティブなイメージが強いのではないでしょうか。

筆者のもとへも、現時点でご両親の介護に直面している方のご相談や、リタイアメントプランの際に介護の対策も考えておきたいという内容のご相談が増えています。

今回は、現行の介護保険制度を踏まえて、理想の介護について考えていきたいと思います。

 

【介護保険制度とは】

2000年に施行された介護保険法という法律に基づき、介護や支援が必要な人が自立した日常生活を送ることができるようになるのを目的として、市区町村が必要な保険医療サービスや福祉サービスについて保険給付を行う制度で、高齢者の支援や介護を社会全体で支える社会保険の仕組みです。また、介護保険制度においては、さまざまなサービスの中から、利用者が自分に合ったサービスを選択できるようになっており、各々のニーズに合った支援や介護を受けることができます。


 

【介護保険制度が生まれた背景】

介護保険制度が生まれた背景には、主として、長生きの時代の健康寿命と平均寿命の乖離と、核家族化による介護の担い手不足が挙げられます。

●平均寿命と健康寿命の乖離

2022年に内閣府が発表した「令和4年高齢者白書」によると、平均寿命と健康寿命の差は、男性で8.88年、女性は12.33年です。男女ともに10年前後の間、支援や介護を必要とする期間になるともいえます。

●核家族化と高齢者の単身世帯の増加

2019年に国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の世帯数の将来推計」によると、2015年から2040年における単独世帯の増加率は8.3%、2020年から2025年における夫婦のみ世帯の増加率は0.9%となっています。

また、65歳以上の一人暮らしの者は男女ともに増加傾向にあり、令 和 2 年 に は65歳以上の男女それぞれの人口に占める一人暮らしの割合は、男性15.00%、女性22.1%となっています。

このように核家族化が進み、介護者と要介護者の両方が65歳以上の高齢者という状態の老々介護となる可能性の高い、夫婦のみの世帯が増加し、一人暮らしも増えている状況も、公的介護保険制度が生まれた背景の1つだと言えるでしょう。


 
65歳以上の要介護認定者の増加】

年々増加傾向になる介護認定者数ですが、介護保険制度はどのような手順で利用することができるのでしょうか。


●主な手順

①介護保険制度を利用したい本人またはその家族が市区町村の窓口で要介護認定の申請を行う。

②市区町村が要介護認定を行い、介護の必要性を示した要介護度を申請から30日以内に通知する。

③本人の意志に基づいてサービスを選択肢、ケアプランを作成する。

④サービス事業者に「介護保険被保険者証」と「介護保険負担割合証」を提示し、ケアプランに基づいたサービスを受ける(自己負担は1割~3割)

●要介護の認定について(介護保険法に詳細記載あり)

①一次判定:市区町村の認定調査員による認定調査と主治医の意見書に基づいたコンピュータ判定を行う。

②二次判定:保健・医療・福祉の専門家によって構成される介護認定委員会により一次判定結果と筋五の意見書などに基づいた審査判定を行う。

③市区町村が要介護認定を行う。

要介護度は要支援1~2、要介護1~5の7つの区分で認定結果が通知されます。手続きが難しい場合には、お住まいの地域の地域包括支援センターに相談し、手続き代行を依頼することも可能です。地域包括支援センターは自治体のホームページなどに連絡先の一覧が掲載されています。

 
【介護保険制度で受けられるサービス】

サービスには大きく分けて、介護給付と予防給付の2種類に分かれます。

<介護給付の主な例>居宅介護サービス、施設サービス、地域密着型介護サービス、居宅介護支援の4つです。

●居宅介護サービス

居宅介護サービスとは自宅での生活を支えるサービスのことで、利用者ができるだけ自宅で自立した生活を送ることを目的とし、次のような種類があります。

訪問サービス、通所サービス、短期入所サービス、福祉用具についてのサービス等です。

●施設サービス

施設サービスとは利用者が自宅で自立した生活を送れるようになることを目的とし、施設で生活をしながら受けるサービスです。

施設には、介護老人福祉施設(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設、特定施設入居者生活介護、介護医療院等のサービス等があります。

入居してサービスを受けるのは同じでも、医療・介護・リハビリなど、どのサービスを重要視するかによって利用する施設も異なってくるでしょう。

●地域密着型介護サービス

地域密着型介護サービスとは利用者が自宅で自立した生活を送れるようになることを目的とし、地域や家族との結び付きを重視しながら行われる介護サービスのことです。地域のニーズに則した細やかな対応や、少人数の施設でのサービスが多いのが特徴です。

●居宅介護支援

居宅介護支援とはケアマネージャーが適切な介護サービスを受けられるようにケアプランを作成し、事業者との連絡・調整をしてくれるサービスです。ケアプランの作成にあたっては利用者負担が発生しません。

<予防給付の主な例>介護予防サービス、地域密着型介護予防サービス、介護予防支援の3つです。

●介護予防サービス

介護予防サービスはできるだけ要介護状態に陥ることのないよう、残存機能の維持やADL(日常生活動作)の改善を目的とするサービスです。

訪問・通所・短期入所などの方法がありますが、介護給付サービスと比較すると種類は多くありません。どのようなサポートを受ければ将来要介護状態になりにくくなるのか考えてサービスを選ぶとよいでしょう。

●地域密着型介護予防サービス

地域密着型介護予防サービスとは、利用者が自宅で自立した生活を送れるようになることを目的とし、住み慣れた地域でこれからも生活ができるよう、状況に応じて柔軟に提供されるサービスです。

デイサービスセンターやグループホームなどを活用しますが、地域密着型介護サービスと比べると種類はあまり多くはありません。

●介護予防支援

介護予防支援とは、ケアマネージャーが適切な介護予防サービスを受けられるようにケアプランを作成し、事業者との連絡・調整をしてくれるサービスです。利用者負担が発生しないのは、居宅介護支援と同じです。

 

【介護保険制度を取り巻く環境】

前述のグラフにあるように、2019年厚生労働省発表の「令和元年度介護保険事業状況報告書(年報)」によると、要介護認定を受けた人数は669万人で、2000年の256万人と比較すると、およそ2.5倍にも増加しています。介護保険法施行当初に比べて介護保険制度への理解が深まったこともありますが、2019年における保険給付は、利用者負担を除いて93,524億円にも上りました。給付の増加に応じて保険料も増えており、2000年当初は65歳以上の人が支払保険料は2,911円でしたが、2021年からは6,014円となっています。高齢化に歯止めがかからない現状において、今後も介護給付と保険料負担の金額はいずれも大きくなっていくであろうことが予想されます。

 

【介護負担の備えには?】

元気に過ごせる場合の生活費だけでなく、もしも介護が必要になった時に備えて、余裕をもって資産形成をしておきたいものです。

「どんな介護サービスを受けたいのか」という希望と、「そのお金をどのように準備しておくのか」考えておく必要があります。

なるべく居宅介護を希望するのか、早めに施設入所を検討するのか、また、認知症になった場合の資金の備えをどうするのか。認知症となった場合には、たとえ本人の介護費用や生活費であったとしても、家族といえどもその預金を引き出すことができません。本人の意思確認が困難になるため、本人の資産を守るために口座は凍結されることになるためです。

その対策は元気なうちにしておく必要があります。

●家族信託や任意後見制度を活用し自分の資産を使うこと

●認知症や介護認定により給付される保険の活用

●貯蓄性保険の解約活用(契約者代理請求制度を利用)

等が考えられます。

介護費用にはいくらかかるか知ることは大切ですが、より重要なのは、どんなサードライフを送りたいのか、自分らしく生きるためにはどんなサービスを受けたいのか、どれだけの費用をかけたいのか、という視点で備えていくことです。

 

 


【まとめ】

長生きの時代だからこそ、健康寿命を延ばす努力をしておきたいものです。健康は一朝一夕に手に入るものではありません。若いうちから健康管理・健康への投資をしっかりとしておくことが大切です。

健康が不安になってからではなく、日ごろから、日常生活にもしも誰かの助けが必要となった時には、どんなサービスを受けたいのか、どんな暮らしをしていきたいのか、予め調べておき、希望や金銭的な備えについても家族と話をしておくことが大切ですね。

自分自身の人生の棚卸しとして、思い出を振り返り、家族や大切な方々への思いを整理していくための「エンディングノート」は、そんな介護への備えにもきっと役に立ってくれることでしょう。家族や友人と一緒にまずは「エンディングノート」を書き始めてみませんか。

 

金田 京子 (かねだ きょうこ)

ファイナンシャルプランナー

ライフプランニングや家計の見直しなどを中心に1万件を超える個別相談に携わり、金融教育インストラクター、セミナー講師としても活動。

法律事務所・金融機関勤務での経験や知識を活かしながら、専門用語を使わずにわかりやすい言葉で、世代間をつなぐ相続・終活コンサルティングをおこなっております。

 【保有資格】

2級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)

相続診断士® 笑顔相続道正会員

終活カウンセラー®1級

トータルライフコンサルタント(生命保険協会認定FP) など

【問い合わせ先】

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