はじめに
年金不足2000万円問題からiDeCoやNISAの需要が高まる中、亡くなった方の財産として手続きの複雑さに相談が増えている、亡くなった時の受取や税金について触れたいと思います。
iDeCo(イデコ)の積み立て中に万一死亡した場合
公的年金だけでは老後の不安を感じている方向けに国が推奨しているiDeCo(個人型確定拠出年金)。加入すると所得税控除や運用中の運用益に税金がかからない、受け取る時も退職所得が受けられるとし、老後の不安に対して毎月コツコツと積立を始める人が増えています。ですが積立中や受取り中に亡くなった場合どのような流れになるのかはあまり知られていません。最近の相続相談でも「iDeCoは亡くなったらもらえないと思っていた」という相談者がいましたiDeCoは遺族が「死亡一時金」として積立金を受け取ることができます。この死亡一時金は、自動的に支給されるわけではなく、遺族が請求手続きを行う必要があります。
受取順位は、民法の法定相続順位とは異なる
1. 指定受取人
2. 配偶者(死亡時に事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む)
3. 子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹(死亡者の収入によって生計を維持していた人)
4. 死亡者の収入によって生計を維持していた親族(第3順位の人以外)
5. 子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹(第3順位の人に該当しない人)
また、第1順位の「指定受取人」とはあらかじめ登録できるものであり、配偶者や親族から選択できます。遺族には、この制度を理解し、必要な手続きを知っておくことが大切です。もしも同じ順位に2人以上いる場合は、その人数で等分して受け取り、代表者1人に一括して支払われます。
NISA口座を運用中に亡くなった場合
相続人は、被相続人の死亡を知った日以後に、金融機関へ「非課税口座開設者死亡届出書」などの書類を提出します。 NISA口座内の株式や投資信託を相続人の口座へ移管する場合は、「相続上場株式等移管依頼書」も提出します。意外な注意点として 被相続人のNISA口座と相続人の特定口座は、「同一の金融機関」である必要があります。 もし同一の金融機関の口座がない場合は開設作業から行うことになります。同一銘柄の株式などは、特定口座と一般口座とに分けての移管はできません。相続が発生したら、遺族はこれらの手続きを適切に行うことで、NISA口座の運用を引き継ぐことができます。
亡くなった後からの税金について
NISA口座にある株式や投資信託は、相続発生日までの含み益は非課税となりますが、相続発生日以降に受け取った配当金は20.315%の税金がかかります。また、相続時の取得価額は「相続発生時の時価」になり、取得日は「相続発生日」となります。ただし、NISA口座で保有していた株式等は、移管時の含み益にも課税されることに注意が必要です。相続税の評価方法は複雑ですので、専門家に相談することをお勧めします。
さいごに
金利のない世界から金利のある世界へと動きがでて、物価も年々上がる中、節税効果のある資産運用のニーズが高まるばかりですが、最後の手続きまではなかなかイメージできないものです。昨今の資産運用は長期分散投資が基本ですので最後までやめず、取り崩しながらも運用をしたいと考えている場合はなおさら縁(エン)ディングノートなどに自身の運用先などはしっかりと明記し、手続き方法も遺族にわかるようにしておくことをお勧めします。
伊藤 由美子(いとう ゆみこ)
くらしFPカフェ株式会社 取締役
伊藤保険株式会社 代表取締役
2級ファイナンシャルプランナー
相続診断士
笑顔相続道正会員
公的年金アドバイザー
FMヤシの実ラジオパーソナリティ―
東愛知新聞 相続コラムQ&A 執筆中
教育費、住宅購入、資産運用、相続まで生まれてから亡くなるまで親子3代にわたる
ファミリーライフプランを得意とする ラジオパーソナリティー歴25年のわかりやすいトークで年間50件以上のセミナー講師として愛知中心に活動中
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