本日のコラムは出生率の低下とそれに伴う人口激減が相続においてどういう影響を及ぼす可能性があるのか?について筆者の考えを発信しようと思います。
〈合計特殊出生率とは?〉
ざっくり言うと、一人の女性が一生の間にどれくらいの子どもを産むかを示す数値です。これは、女性が子どもを産む年齢(通常は15歳から49歳まで)の各年齢での出生率を足し合わせたものです。
たとえば、特殊出生率が2.0ということは、一人の女性が平均して2人の子どもを産むということを意味します。この数値が2より大きい場合、人口は増えていく傾向にあります。逆に、この数値が2より小さい場合、人口は減っていく傾向にあります。
ただし、特殊出生率はあくまで「平均」を示すもので、一人一人の女性が必ずその数値通りの子どもを産むわけではありません。また、この数値は毎年変わり、その年その年の出生状況を反映します。
なお、「出生数」はその年に生まれた全ての子どもの数を指します。これは特殊出生率とは異なる指標で、人口動態を理解するために重要な要素となります。 どちらも、少子化問題を考える上で重要な数値です。
厚生労働省が発表した2023年の「人口動態統計」の概数によると「合計特殊出生率」は1.20だったようです。
(図表は令和2年度版厚生労働白書、その数値より悪化)
〈出生数は過去最低となり人口は激減〉
2023年1年間に生まれた日本人の子どもの数は72万7277人、2022年より4万3482人減少。逆に死亡した人の数は157万5936人と、2022年より6886人増加。
統計を取り始めた1899年以降、過去最大に人口が減った年となりました。
また、2023年の成人男性の生涯未婚率は28.25%、女性が17.85%
成人男性は3人に1人が一度も結婚することなく生涯未婚であるということです。
(令和5年版厚生労働白書より)
これらのデータから何が分かり、何が問題なのか?
厚生労働省も「少子化の進行は危機的で、若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでが少子化の傾向を反転できるかのラストチャンスだ。少子化の要因には、経済的な不安定さや仕事と子育ての両立の難しさなどが絡み合っているので、厚生労働省として、男性の育休の取得推進や若い世代の所得向上など、必要な取り組みを加速させていきたい」と発表していますが、相続の観点から考えたいと思います。
□空き家問題がさらに深刻化
人口が減るということは、空き家が増えるということですね。
実家不動産が地方にある場合、売却ができなければ管理が大変となります。
□墓の問題
子がいない、祭祀継承者不足がさらに深刻化し、墓をどう管理維持するのかという問題が今後ますます増えていくと思います。
□そもそも相続人がいない場合、財産の行方は?
子がいない、そもそも未婚であるという人が増えるわけですから、自分の財産を誰に承継するのかきちんと遺言等で整えておかなければ、その財産は国庫にいくことになります。
□認知症や介護の問題
人口が減るということは介護を任せる人が不足する可能性があります。
子がいないそもそも未婚の人は介護状態になった場合、他人にその面倒をお願いすることになりますが、働き手不足で介護者のなり手がいないかもしれません。
また、判断能力がなくなった場合の財産管理や死後の遺品の整理なども早めに仕組みを作っておかなければ他人に迷惑をかけることがあるかもしれません。
他にも多くの問題があると思いますが、少し考えただけでもこのような問題が浮き彫りになります。
いきなり、人口が増えることはないわけですから、自分の身は自分で守るというスタンスで、正しい知識を持ちしかるべき専門家に早めに相談して、ご自身の問題解決に繋げていっていただきたいと思います。
一橋 香織(ひとつばし かおり)プロフィール
笑顔相続コンサルティング株式会社
代表取締役 笑顔相続サロン®本部 代表
一般社団法人縁ディングノートプランニング協会代表理事
一般社団法人アクセス相続センター 理事
《経歴》
外資系金融機関を経て、ファイナンシャル・プランナーに転身。
これまで17年で5,000件以上の相続相談の実績。
自身の家族で争う相続を経験し、相続の大事なゴールは「笑顔相続」と実感。
「争う相続をなくし、笑顔相続の実現」を理念とし、日々お客様と対峙している中で節税優位の相続対策ではなく、笑顔で相続が迎えられる相続の実現のための活動を行っている。
《メディア出演》(TBS「Nスタ」「ビビット」テレビ朝日「たけしのTVタックル」TBSテレビ「バイキングmoreなど)多数。
《著書》
家族に迷惑をかけたくなければ相続の準備は今すぐしなさい(PHP)
終活・相続の便利帖(日本法令)
はじめての遺言執行(日本法令)共著 その他、日本法令で共著7冊
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