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人生100年時代のセカンドライフ~認知症になったら~

公開日:2024-05-27 06:00

目次

はじめに

「定年後にはのんびり田舎暮らしをしたい。」

「毎年海外旅行に行きたい。」

定年を迎える前にリタイアメントプランを検討したいという方々には、筆者のもとへご相談に見えた際、現在の資産状況やリタイア後にどんなことをしたいのかお伺いしていきます。先日ご相談に見えた田中様(仮名)は、奥様の口からこんな心配ごとが飛び出しました。

「元気なうちはいいけれど、どちらかが認知症になったらどうしましょう。」

【65歳以上の5人に1人が認知症】

内閣府によると、高齢化が進む中で認知症患者の数も年々増加傾向にあり、2040年には802万人にもなると推計されています。先の田中様の奥様の心配も他人事ではいられないでしょう。

人生100年時代のリタイアメントプランは、健康に過ごせるセカンドライフと認知症を発症したり、介護が必要になってきた場合のサードライフと2つのステージを想定して考える必要があります。

【認知症になった場合の預貯金は?】

「認知症になったらお互いに負担にならないように早めに介護施設に入りたい。」

先の田中様のご家庭では、預金のほとんどはご主人様名義です。もし、ご主人様が認知症になった場合、奥様がその預金を自由に引き出せるのでしょうか。

ご存じの通り、たとえ本人の介護費用や生活費であったとしても、家族といえどもその預金を引き出すことができません。本人が認知症となった場合、その意思の確認が困難になるため、本人の資産を守るために、口座は凍結されることになります。

●元気なうちにできる対策

認知症になってからではなく、元気なうちにできる対策として、家族信託や任意後見制度を活用することが考えられます。

家族信託では、信頼できる家族に資産管理を委託することで、本人の利益を守ることができます。また、任意後見制度では、認知症の進行前に信頼できる後見人を指名し、法的に資産を管理してもらうことが可能です。いずれも、どの制度を活用するのが効果的であるかは、ご家族の状況や資産によっても異なりますので、早めに専門家に相談することをお勧めします。

【認知症になった場合の生命保険は?】

●病気になったときの医療保険や介護認定された場合に受け取りができる、いわゆる生前給付型の保険の場合はどうでしょうか。

認知症の場合、ご本人が請求することは難しいでしょう。そのようなケースでは、多くの契約の場合、「指定代理請求制度」があり、本人に代わって請求ができるようになっています。例えば、契約者・被保険者が父の介護保険金の請求を指定代理人である長男がおこない、長男の口座に介護保険金が振り込まれ、父の介護費用に充てることができます。このような保険に加入している場合には、契約形態や指定代理請求制度の詳細を確認しておき、その内容を指定代理請求人やご家族に知っておいてもらうことが大切でしょう。

●貯蓄性の保険を解約することは?

介護費用に充てるために、貯蓄性の保険を解約したいという場合は、可能なのでしょうか。

解約請求は契約者ができる行為のため、契約者が認知症となった場合には、意思表示が確認できないため解約や減額、契約者貸付の活用もできなくなってしまいます。

ただし、保険会社や保険商品によっては「契約者代理請求」という制度が活用できる場合があります。事前に代理請求人を指定しておくことで、例えば、契約者である父の代わりに代理請求人である長男が解約請求をして介護費用に充てることもできるようになります。

介護保険だけでは不足しそうな場合の手段のひとつとして、上手に活用したいものですね。

 

まとめ

長生きの時代、健康寿命という言葉がより大切に感じられるようになってきました。

元気なうちにやりたいことをしっかり行っていき、健康が不安になってからも家族になるべく負担をかけずに過ごしたいですね。

そのためにも、自分自身の人生の棚卸しとして、また、思い出を振り返り、家族や大切な方々への思いを整理していくためにも、まだ先が長く元気なうちから、エンディングノートを書いていくことをおすすめしています。

金田 京子 (かねだ きょうこ)

ファイナンシャルプランナー
ライフプランニングや家計の見直しなどを中心に1万件を超える個別相談に携わり、金融教育インストラクター、セミナー講師としても活動。

法律事務所・金融機関勤務での経験や知識を活かしながら、専門用語を使わずにわかりやすい言葉で、世代間をつなぐ相続・終活コンサルティングをおこなっております。

【保有資格】
2級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)
相続診断士® 笑顔相続道正会員
縁ディングノートプランナー
終活カウンセラー®1級
トータルライフコンサルタント(生命保険協会認定FP) など

【問い合わせ先】
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