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賃貸住宅オーナーが検討すべき火災保険

公開日:2024-05-13 06:00

目次

相続対策を主な目的として建物を建て、賃貸住宅を経営しているアパート・マンションオーナー。オーナーとしてのご苦労も数知れずあることと思います

そんな賃貸住宅オーナーの所有財産を守るため、入居者とのトラブルや入居者同士のトラブルの助けとなるために、オーナー・入居者(賃借人)が備えるべき損害保険について検討してみましょう。

オーナーが備えるべき保険

・建物の火災保険、地震保険

建物の火災保険、地震保険は所有者が加入します。

建築されて年数が経過すると、建物の時価は下がっていくものですが、火災保険の保険金額(補償金額)は、罹災時に実損で補償を得るために新価で設定するのがいまの主流です。新価とは、同一の構造、質、用途、規模、型、能力のものを再築または再取得するのに要する額をいいます。さらに、昨今の建築費や建築資材の高騰により建築価額が上昇しているので注意が必要です。

・施設賠償責任保険

建物の欠陥や管理上の不備などによる偶然な事故により、他人や賃借人にケガを負わせたり、物を壊した結果、負担する損害賠償を補償するものです。

たとえば、給排水管の老朽化により、借用戸室内の賃借人所有の物(家具や衣類など)に水濡れ損害を与えた場合などに補償されます。

・家賃収入保険

賃貸しているマンションなどの住宅が火災などにより損害を受け、家賃収入が無くなったり減ったりした場合の補償です。

オーナーの多くは、借り入れによる資金で建物を建築しています。損害を被って家賃収入が減っても毎月の返済額は減りません。家賃収入の低下は数か月に及ぶこともあります。

・戸室での事故に対応する保険

高齢化社会が進み、核家族化が進むにつれ、ひとり暮らしの高齢者が増加しています。また、社会的孤立による自殺者も増加しています。孤独死、孤立死リスクがますます増加している現状です。

(孤立死の定義:孤独に(一人で)死を迎え、死後2日以上経過して発見された死を孤立死と定義づけられています。(一般社団法人 社会整理士育成協会による https://shakaiseirishi.com/)https://shakaiseirishi.com/)

賃貸住宅で孤立死が発見され、その戸室の新たな入居者が見つからず家賃収入が停止した場合や、賃貸可能な状態に戻すための清掃(特殊清掃)・消毒・リフォーム費用や火葬費用・遺品整理費用などを補償するものです。

賃貸住宅費用補償保険などの名称の保険や火災保険に特約として追加が可能です。

・保険金詐欺にご注意!

住宅修理などに関し、「保険が使える」と言って勧誘する業者とのトラブルが増加しており、一般社団法人 日本損害保険協会や各損害保険会社が注意喚起しています。とくに、高齢者が狙われています。台風や大雨、洪水など自然災害による損害でこのような勧誘をされた場合は、住宅の修理を業者と契約する前に、ご親族や契約している損害保険会社または損害保険代理店へご相談されることをお勧めします。https://www.sonpo.or.jp/news/caution/syuri.html

入居者(賃借人)が備えるべき保険

次に、入居者(賃借人)が備えるべき保険について述べてみましょう。

オーナーと入居者とのトラブルや入居者同士のトラブルに巻き込まれないため、オーナーとしても入居者の次のような保険の加入有無や内容、保険金額を保険証券の提示を求めるなどして把握しておくことをお勧めします。

・借家人賠償責任保険

賃借している戸室が偶然な事故により損壊し、オーナーに対して法律上の損害賠償責任が発生する場合に補償されます。

賃借人は退去時に原状復帰義務を負います。火災や漏水などによる損壊の場合、多額の損害となるため保険で備えておく必要があります。不動産業者の仲介により賃貸契約が行なわれる際、多くの場合、借家人賠償責任の付いた保険を同時契約しますが、保険には満期があり、更新は賃借人に委ねられているオーナーさんも多く、最初の2年間しか保険がなく、火災などの損害があった場合にトラブルになるケースも見受けられます。

・修理費用保険

賃借している戸室が偶然な事故により損壊し、賃貸借契約に基づきまたは緊急的に修理した場合に補償されるものです。

たとえば、外から石が飛んできて窓ガラスが割れたため、生活に支障をきたすので入居者の費用で緊急的に修理を行った場合などが対象となります。

・個人賠償責任保険

日常生活において、本人や家族の方が偶然な事故により法律上の損害賠償責任を負担することにより被った損害を補償するものです。

賃貸マンションなどで、お風呂の水を溢れさせて階下に水濡れ被害を与えたなどの個人間のトラブルに対応できます。多くの場合、保険会社による示談交渉付きのため、オーナーが仲裁に入らざるをえず困ってしまうのを防ぐことに役立ちます。

まとめ

相続対策は大切な財産を守るために行った対策のはず。

火災や災害、事故などでの損壊によって失くしたり減らすことのないように、また、多様化した社会に対応するため、備えておける保険を知っておくこと、信頼できる保険担当者や相続コンサルタントに相談できることが大切だと考えます。

岩井 真紀子(いわい まきこ)

株式会社 みらいふ 常務取締役
京都相続診断士会 副会長
相続診断士
終活カウンセラー
縁ディングノートプランナー
笑顔相続道正会員
ファイナンシャルプランナー
損害保険トータルプランナー
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)
昭和61年から保険業に携わり、損害保険・生命保険の取り扱いや事故解決のアドバイスをしている。
また、数々のライフプランセミナーやエンディングノートの書き方セミナー講師をつとめる実績をもち、最近は、おひとりさまの終活・相続のコンサルティングに力を注いでいる。