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令和6年3月1日スタート!本籍地以外の市区町村でも戸籍証明書等の取得が可能になりました💡

公開日:2024-04-22 06:00

目次

令和元年5月24日に戸籍法が改正され(戸籍法 新設条文:第120条の2)、令和6年3月1日から「戸籍証明書等の広域交付制度」(以下「広域交付制度」とする。)が始まりました。

誰かが亡くなり相続が発生すると、相続手続きを行います。その際、必要となる書類が「亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの除籍謄本および戸籍謄本(以下、戸籍証明書等とする。)」です。なぜなら、その戸籍証明書等に載っている情報をもとに「相続人が誰なのか」を確認したうえで、相続手続きを行う必要があるためです。

皆さんのまわりでも、誰かが亡くなり相続が発生して、その相続手続きのために「出生から死亡までの戸籍証明書等を集めるのに、かなり苦労した。」といった話を聞いたことがあるのではないでしょうか。

この広域交付制度が始まったことで、全国どこの本籍地の戸籍証明書等であっても、出生から死亡までの戸籍証明書等が、最寄りの市区町村窓口に請求申請をするだけで「一括で」「まとめて」取得ができるようになりました。つまり、従来に比べると、戸籍証明書等の収集が大変便利になったのです。

「戸籍証明書等の広域交付制度」とは?

広域交付制度のポイントは次の2つです。

💡ポイント1「どこでも」請求ができる!

本籍地が遠くにある方でも、お住まいや勤務先の最寄りの市区町村の窓口で請求できます。

💡ポイント2「まとめて」請求ができる!

取りたい戸籍の本籍地が全国各地にあっても、1か所の市区町村の窓口でまとめて請求できます。

※コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍を除きます。

※一部事項証明書、個人事項証明書は請求できません。

「戸籍証明書等の広域交付制度」3つの注意点

従来よりも画期的に便利になったとはいえ、広域交付制度には利用上の注意点があります。

注意①:「請求者」が決まっている

注意②:「請求者」が「直接」、市区町村の「窓口で」請求・受領する必要がある

注意③:広域交付制度「対象外」の証明書がある

注意点を、一つずつ見ていきましょう。

注意①:「請求者」が決まっている

【請求できる方】

  ❶本人

  ❷配偶者  

  ※配偶者の婚姻前の戸籍も取得することが可能

  ❸父母、祖父母などの直系尊属

  ❹子、孫などの直系卑属

  ※兄弟姉妹の戸籍証明書は請求できない

注意②:「請求者」が「直接」、市区町村の「窓口で」請求・受領する必要がある

申請者が、申請「窓口」に「直接」出向き、本人確認(運転免許証・マイナンバーカード等)をした上で請求ができる

郵送請求はできない

代理人による請求はできない

戸籍証明書等を受取れるのも「請求者」である「本人」のみ

注意③:広域交付制度「対象外」の証明書がある

【請求できる証明書】

  戸籍に載っているご本人、配偶者、直系の親族の「戸籍全部事項証明書」

  「除籍全部事項証明書」、「改製原戸籍謄本」、「除籍謄本」のみ

⚠一部事項証明書、個人事項証明書(抄本) は、対象外

⚠「戸籍の附票(※1)」「身分証明書(※2) 」「独身証明書(※3) 」は、対象外

※1「戸籍の附票」:本籍地の市町村において戸籍の原本と一緒に保管してある書類で、その戸籍が作られてから(またはその戸籍に入籍してから)現在に至るまで(またはその戸籍から除籍されるまで)の住所が記録されているもの

※2「身分証明書」:本籍地の市町村において発行される「成年被後見人」または「破産」に関する証明書で、禁治産・準禁治産宣告 の通知、後見登記の通知、破産宣告・破産手続き開始決定の通知を受けていないことを証明したもの

※3「 独身証明書(婚姻要件具備証明書)」:本人が独身であることを公に証明するもの

相続時の戸籍証明書、どんなものを集める?

ところで「亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの全ての戸籍証明書等が必要」と言われても、ピンと来ない方もいらっしゃるかもしれません。

どんな戸籍証明書等が必要になるのか、長年会社員として転勤をしながら、様々な地域で過ごした経験のある広域太郎さんが亡くなった事例で見ていきましょう。

《 事例 》

亡くなった方(被相続人) 広域 太郎 79歳

出生:宮崎県都城市

転勤で本籍地を移した場所:沖縄県那覇市、大阪府大阪市

最後の住所地       福岡県福岡市

最後の本籍地       福岡県福岡市

相続人2名        妻:広域 花子 75歳(福岡市在住)

             子:広域 一郎 48歳(東京都在住)

この方の場合


■広域太郎さんの「死亡」が載っている「最後の戸籍謄本」(福岡県福岡市)
■これまでに本籍地のあった市区町村で取得する除籍謄本(沖縄県那覇市、大阪府大阪市)

■広域太郎さんの「出生」が載っている「最初の除籍謄本」(宮崎県都城市)

このように「死亡」から「出生」まで、さかのぼって戸籍証明書等を請求します。

令和6年3月1日以降 広域交付制度でどんな風に集められるの?

広域太郎さんの最後の本籍地は福岡県福岡市ですが、相続人である東京在住の子が、広域交付制度を使い、最寄りの区役所1カ所で、本籍地が福岡県福岡市にあるお父様の「出生から死亡まで」のすべての戸籍証明書等を「一括」で「まとめて」請求し取得することができます。ただし、広域交付制度は始まったばかりで、自治体によってはシステム障害が発生していたり、出生までさかのぼる戸籍証明書等のすべてを当日に交付することはできない自治体もあるようです。(令和6年4月19日現在 筆者体験談)

子は、勤務先最寄りの新宿区役所に16時までに出向き、広域交付制度を使って戸籍証明書等の請求申請をし、亡くなったお父様の「出生から死亡まで」のすべての戸籍証明書等を基本的には当日に受け取ることができます。

広域交付制度は、申請できる時間帯が決まっている市区町村もあります。必ず事前に確認をして、時間に余裕をもって、申請されることをお勧めします。また、市区町村役場の本庁のみで対応している市区町村がほとんどであり、市区町村の出張所や、連絡所等では広域交付制度に対応していないところもあるため、こちらも事前に確認していただくとよいでしょう。

「これまで」相続時の戸籍証明書等の収集

一方、広域交付制度開始前の、戸籍証明書等の収集は、どのようなものだったのでしょうか。

広域太郎さんの最後の本籍地は福岡県福岡市なので、福岡市役所や区役所で「最後の戸籍謄本」を取得します。そこで取得した「最後の戸籍謄本」を見ると、本籍地を移動していることがわかります。次に、一つ前の本籍地である沖縄県那覇市役所に「最後の戸籍謄本」の一つ前の戸籍謄本を請求します。那覇市役所で取得した「除籍謄本」を見ると、さらに本籍地を移動していることがわかります。さらに、一つ前の本籍地である大阪府大阪市役所に一つ前の除籍謄本を請求します。大阪市役所で取得した「除籍謄本」を見ると、さらに本籍地を移動していることがわかります。広域太郎さんの出生の記載が載っている除籍謄本を宮崎県都城市役所に請求して取得すれば、広域太郎さんの「出生から死亡まで」のすべての戸籍証明書等が揃います。

請求方法は、相続人がそれぞれの本籍地の市区町村窓口へ行くか、または郵送請求による請求が必要でした。広域太郎さんは、市区町村が変わる「転籍」(本籍地移動)を繰り返していたため、最後の本籍地以外の戸籍証明書等を、それぞれの市区町村へ、一つ一つ、さかのぼって取り寄せる必要があり「出生から死亡まで」の戸籍証明書等をすべて揃えるためには、かなりの手間と時間と費用(郵送料、小為替手数料、交通費)がかかっていました。また戸籍を読み解き、次にどの市区町村へ請求すればよいのかわからない、複数の市区町村への請求申請が煩雑だ、郵送での請求も手間がかかる等の理由で、相続人ご自身での請求・取得を断念する方は、士業等の専門家に戸籍証明書等の取得を依頼するケースもありました。

このように比較してみると、この制度が開始される前は、戸籍証明書等の収集が、どれだけ大変だったのかがわかります。そのため、これまでは、相続人ご自身で戸籍証明書等を取得することを断念して、士業等の専門家に依頼していた方も、今後は広域交付制度を利用して、相続人ご自身で一括して請求し、戸籍証明書等を取得するケースも増えそうです。

「請求者」(注意①)が、申請「窓口」に「直接」出向き(注意②)本人確認をしたうえで戸籍証明書の請求・受領ができるこの制度ですが、広域交付制度対象外の書類がある(注意③)ことで、どのようなことが考えられるでしょうか。

例えば、配偶者が亡くなり、その亡くなった配偶者が再婚だった場合、前婚で子がいれば、その子も相続人になります。相続人である配偶者は、亡くなった配偶者の前婚での子とは疎遠なことも多いですが、相続人である配偶者は、その亡くなった配偶者の前婚での子の戸籍証明書等を、広域交付制度を使って取得することはできません。さらに、亡くなった配偶者の前婚での子に連絡をとるために、子の本籍地の市区町村で「戸籍の附票」を取得し住所を確認したいところですが、前記の通り、この「戸籍の附票」も広域交付制度の対象外の証明書のために、広域交付制度を使って取得することはできません。

また別のケースでは、おひとり様が亡くなって、その相続人が兄弟姉妹の場合、兄弟姉妹の戸籍証明書等も広域交付制度の対象外となっているため、相続人が亡くなったおひとり様の「出生から死亡まで」の戸籍証明書等は広域交付制度を使って取得することはできません。

つまり、再婚等で家族関係が複雑な方は、広域交付制度を利用するだけでは「出生から死亡までの戸籍証明書等」のすべてを取得することはできません。おひとり様の兄弟姉妹の相続も、広域交付制度の利用は制度上できません。前者の場合は、広域交付制度で取得できる戸籍証明書等だけを取り寄せて、それ以外の広域交付制度対象外のものは、従来どおりの方法で、本籍地のある市区町村へ請求をするか、もしくは、士業等の専門家に依頼して職務上請求書で取得してもらうことになるでしょう。後者の場合は、従来どおりの方法で、本籍地のある市区町村へ請求をするか、もしくは、士業等の専門家に依頼して職務上請求書で取得してもらうことになるでしょう。もちろん、最初からすべての手続きを士業等の専門家に依頼するという選択肢もあります。

生前に広域交付制度を活用・専門家に相談して、スムーズな相続手続きに備えましょう

筆者は、利用上の注意点はあるものの、今後は相続が発生した際に「広域交付制度」を利用して相続人ご自身で戸籍証明書等を一括で請求し、取得する方は増えると予想しています。

確かに、この制度ができたことで、相続手続きの際に「被相続人の出生から死亡までの戸籍証明書等を集める」作業自体は従来よりも楽になりました。もちろん、この「戸籍証明書等の取得」は、相続手続きにおいて欠かせないものですが、あくまでも相続手続きの一部分にすぎません。「戸籍の内容を読み取って、誰が相続人なのか確定する」ということについては、市区町村の窓口では丁寧に教えてはくれません。「戸籍証明書等がすべてそろったのかが分からない」「相続人は誰なの?」「何が書いてあるのかがわからない」など、戸籍証明書等のことでお困りの際は、ぜひ相続の専門家にご相談ください。

特に、婚姻・離婚・養子縁組・絶縁・外国籍の方が含まれていて戸籍の読み解きが難しい家族関係の方や、相続人が兄弟姉妹というおひとり様の方は、お元気なうちに「出生から現在までの戸籍証明書等を、広域交付制度を利用し、ご自身で集めておく」というのも「新しい終活の一つ」としてお勧めです。

大切なご家族が困らない「笑顔相続」に近づくためには、生前の準備がとても大切です。戸籍証明書等に関してだけでなく、終活・相続についてご不安な事がある方は、ぜひお近くの笑顔相続サロン®、相続診断士、行政書士、司法書士、弁護士等、相続の専門家にご相談ください。

出典

法務省民事局

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html

法務局民事局 パンフレット

https://www.moj.go.jp/content/001409033.pdf

中島 美春(なかしま みはる)

笑顔相続サロン®福岡 代表
行政書士
縁ディングノートプランナー

九州・福岡で、あなたの「困った」を「相談してよかった」に変える行政書士・相続コンサルタントとして活動中。縁ディングノートプランナー認定講師としてエンディングノートの普及にも力を入れている。

多くの方に「生前準備」の大切さを伝えるために、Youtubeチャンネル「元気がでる相続⭐️終活チャンネル」を運営中。今回の「戸籍証明書等の広域交付制度」についての説明動画もYoutubeにて配信中、ぜひ当コラムとあわせてお役立て下さい。

「戸籍証明書等の広域交付制度」についての、YouTube動画は、こちらからどうぞ
🔗https://youtu.be/ZVuxR-jYj0c

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