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身元保証サービスの現状

公開日:2024-03-11 06:00

目次

1、はじめに

読者の皆さまは「身元保証サービス」をご存知でしょうか。

筆者自身は、遺言・相続に関する法的な紛争処理だけを扱っていた頃には耳にしたことがなく、生前対策や終活について関心を持つようになってから知りました。

かつて、高齢者が医療施設や介護施設等へ入院・入所するに当たり、医療費・施設費の連帯保証や、死亡又は退去時の身柄の引取りは、同居する家族が担うことが多いかと思います。

ところが、「おひとり様」や、子のいない夫婦、子がいても遠方に住んでいて疎遠などの様々な事情から、医療施設や介護施設等への入院・入所時、頼れる家族がいないケースが増えてきました。

そこで、「家族」を代行するサービスとして、事業者が拡大しているのが「身元保証サービス」です。

身元保証事業の現状について、昨年8月に、総務省が調査結果を発表(総務省行政評価局「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書」、以下「調査結果」といいます)しています。

今回は、この調査結果の中から注目した内容についての記事となります。

2、どんな人が利用しているか

 調査結果では、主な利用者像が列挙されており、利用者の属性として多い順序で並べると、以下のとおりとなります。

  • 一人暮らしで、親族はいるが疎遠であり頼れない
  • 将来の備えとして事業者と契約をしたい
  • 一人暮らしで、身寄りがなく誰も頼れない
  • 判断能力が不十分になってきており、自分では保証人の確保が難しい

 意外だったのは、「将来の備えとして事業者と契約したい」という属性の利用者も一定数いるということです。

 「一人暮らしで頼れる人がいない」「判断能力が低下してきた」という利用者にとって身元保証サービスは緊急性の高いニーズですが、緊急性がやや低かったとしても、その重要度から「将来に備えとして事業者と契約したい」というケースが存在することが読み取れます。

3、サービス水準

 調査結果では、事業内容の説明や契約締結までの取組みなど多数の項目にわたってアンケート結果が紹介されています。

 これらのアンケート結果から、身元保証事業の業界水準は以下のように整理されると読み取ることができます。

 まず、申込希望者から事業者に対して問い合わせがあると、施設関係者やケアマネジャーなどの第三者の立会いの上で、複数回、サービス内容を説明した上で、事業者と契約書を取り交わしています。

 契約に先立って、事業者のほうでは、申込希望者の通帳を確認する方法で資産を確認しており、(戸籍謄本等の資料提出までは求めないものの)本人に対して親族の有無を確認しています。

 契約締結後は、病院・施設に対して、契約書の写しなど契約内容のわかる資料を提供し、緊急連絡先を記載したカード等を配布しています。預託金を設定し、一定額の金員を預かっている事業者が多く、その場合には自社の預り金口座において預かるという方法を採ります。

 また、利用者から事業者に対して、寄付・遺贈の申出があった場合には、受け取っています。

 もし、利用者が遠方に転居するなど業務エリアを越えてしまった場合には、事業者のほうから解約を検討しています。

 反対に、契約書を取り交わすことをしていない、資産や親族等の有無を確認せずに契約する、契約後に病院・施設に契約内容の情報共有をしない、預託金を設けていない事業者はごく少数となっています。

 

4、私見

 調査結果から見えてくる業界水準は上述のとおりですので、この業界水準から外れるサービス内容を提供している事業者については、注意が必要だと思われます。

トラブルや消費者被害を防ぐという意味では、第三者の立会いの下、複数回、サービス内容を説明した上で、契約書を取り交わすというのは適切な契約締結の過程であると考える一方で、預託金を設定していること、事業者への寄付・遺贈の申出があった場合には受け取るという2点については疑問があります。

 今回の調査結果は、「身元保証サービス」だけでなく、これに加えて、死後事務委任サービスや日常生活支援サービスも合わせて行っている事業者も調査の対象となっています。死後事務委任契約に備えて預託金を設定しているのだと推測されますが、事業者が運転資金に流用してしまわないか、事業者が破綻した際に返金されないのではないか、高額の預託金について返金トラブルが生じないかといった懸念があります。

 事業者への寄付・遺贈の申出があった場合には受け取るという点も、仮に遺言公正証書を作成していたとしても、後日、利用者の死亡後に、遺族との間でトラブルとならないかが懸念されます。

 自社への寄付・遺贈の申出があった場合には、お断りの上、例えば、日本承継寄付協会(日本承継寄付協会|遺贈寄付で思いやりが循環する社会へ (izo.or.jp))の「えんギフト」に掲載されている団体など、外部団体への寄付・遺贈をご紹介するといった方法がトラブル防止の観点からは良いかと思います。

5、最後に

 今回は、身元保証サービスの現状についてご紹介をしました。

 身元保証サービスをめぐる利用者・事業者間のトラブルに対処できる法令は、消費者契約法くらいしか存在せず、身元保証サービスを直接に規律する法令は存在しません。

 また、所管する省庁がないことから、現在、政府としては、ルール・ガイドライン作りを進めています。

 とはいえ、身寄りのない高齢者の方々にとっては緊急性が高く、「待ったなし」の課題ですので、今回の記事が、まずは今の業界水準を知る契機となれば幸いです。

(参考文献 総務省行政評価局「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書」令和5年8月)

大石誠(おおいしまこと)

弁護士(神奈川県弁護士会所属)
笑顔相続道®正会員
相続診断士
「相続とおひとりさま安心の弁護士」
平成元年生まれ 平成28年弁護士登録
横浜で、おひとりさま・お子様のいないご夫婦が、老後を笑顔で過ごすための終活・生前対策と、遺言・遺産分割をめぐる相続トラブルの解決を得意としています。
遺言、後見、死後事務はもちろん、提携先の身元保証会社の紹介なども含めて、相続・終活についてワンストップで対応しています。

【お問い合わせ先】

横浜市中区日本大通17番地 JPR横浜日本大通ビル10階 横浜平和法律事務所

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