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希望する終活の内容はご本人の口から

公開日:2024-02-12 06:00

目次

●はじめに

終活の相談の現場では、対象となるご本人に高齢による認知機能の低下や、障がいによる身体の不自由があってコミュニケーションがスムーズに進まないことがあります。そんな時に同行される家族や介護職員の方が代わりに説明し、内容のサポートをされることもありますが、最も大事にすべきなのはご本人がどのように思われているかです。

筆者の体験例を元に考えてみましょう。

●同席している人が説明してしまう

先日、もの忘れが少し出始めた70代の梅子さん(仮名)を連れて、娘の春美さん(仮名)が遺言作成をはじめとする終活のご相談に来られました。

筆者が梅子さんに現在の状況をお聞きしようとすると、春美さんから今の様子を取りまとめたメモが出され、テキパキとした説明を受けました。続いて梅子さんに今、ご心配なさっていることなどをお尋ねしましたが、ご高齢のためかすぐには言葉が出てこず、春美さんが「前にこんな話をしていたよね。」とサポートされました。

春美さんが少し席を立たれたタイミングで、梅子さんが寂しそうに話されました。

「子どもがしっかりしているからか、出かけた先では、私のことについて何もかも子どもが話してしまいます。お医者さんもケアマネジャーさんも、最近では私の顔を見ずに娘の顔ばかり見て話をされます。」

●本人にしか分からない本当の理由

梅子さんが通われているデイケアの施設を訪問した際に、ちょうど梅子さんの送迎に来られていた春美さんと施設職員がお話をされていました。春美さんに促され、私も会話に入ったのですが、職員は「活動メニューの中で身体を動かす体操を、梅子さんはあまりやりたがらないので、体操以外のことにした方が良いだろうか。」と話されていました。

後日、遺言作成の打ち合わせの際に梅子さんにその事を伝えて、体操をやりたくない理由をそれとなく聞いてみました。梅子さんは運動すること自体は嫌いではないのですが、介護教室の体操の中に古傷が痛む動きがあることから、その部分だけやりたくなかったのだそうです。

春美さんと施設職員の方にお伝えすると、思い当たるところもあったようで、早速、梅子さん向けに内容を変えて対応すると話されました。

●自己決定の尊重

日々、高齢者や障がい者のお世話をされている家族や周りの方々は、ご本人のことをよく見られていて、場合によっては本人と同じくらい気持ちを理解されています。しかし、そうであるが故に、時として本人の医師や発言を確認せずに周りに説明し、対応を進めようとしてしまいます。例えば判断能力が欠けたり、不十分であったりする人を法律的に支援する成年後見においても、医師や介護職からの質問や説明が、支援を受ける被後見人でなく、支援する後見人にばかりされ、本人不在のまま今後の方針が決まってしまう様子が見られます。

しかし成年後見制度の基本理念では「自己決定の尊重」「残存能力の活用」「ノーマライゼーション(※)」が謳われており、本人の残された能力を活かして自己決定することを尊重するとされています。

この理念は成年後見に限らず、家族や周りの方々をサポートする時に誰もが胸に刻んでおくべきものだと考えます。

(※)ノーマライゼーション

障害のある人も家庭や地域で一般の人と同じような普通の生活・権利などが保障されるような環境整備を行うこと

●終活の相談の中で心がけること

これから家族の終活を一緒に始められる方は、本人の気持ちや希望を十分に汲み取ることができるように、話しやすい環境で、急かすことなく十分に時間をかけてお話を聞くようにしてください。

遺言作成などを依頼する士業についても、初回の相談時にしっかりと本人に話を聞こうとしているか、サポートのために同行した周りの人とばかり話していないかを確認し、本人の希望を尊重してくれるかどうかを見てください。

終活は死後のための準備ではなく、今後の人生を見つめ直し、充実させていくための活動です。そのため、本人が現状をどう感じているか、今後どうしていきたいと希望しているかが、周りにしっかりと伝わることを意識して準備いただきたいと思います。

吉武 学(よしたけ まなぶ)

饗庭山法泉寺(真宗大谷派) 住職

吉武学行政書士事務所 代表
一般社団法人相続診断士協会パートナー事務所
相続診断士
笑顔相続道正会員
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