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相続まで考えた二世帯住宅購入が大切です

公開日:2024-02-05 06:00

目次

はじめに

筆者は、25年間保険業界と住宅購入や相続に関わるコンサルティングのキャリアの中で3000件以上のサポートを行ってきました。自身も住宅購入、3人の子の子育て、当社の会長であった父の死で経験した相続の中から実際の現場で起こる難解な局面も経験してきました。相続では一度壊れた家族関係は修復に向かうことすら難しいこともさまざまな家族の相続から経験し家族関係がこじれる芽がどこから生まれてくるのかを目の当たりにしてきました。こじれる芽が生まれるポイントを予防的コラムとしてお役立てください。

1. 二世帯住宅と相続問題

二世帯住宅を検討する方への住宅購入ライフプランを行う時には一緒に同居する父母との間に何人のお子さまがいるのか?一人っ子なのか?それとも嫁いだ姉や妹がいるのか?
など周辺の家族関係をしっかりとヒアリングするところから始めていきます。二世帯を一緒に検討している親子にとっては何の関係があるのか最初はピンとこない顔をしていたかたも以前筆者が経験したお話をすると最初のうちはそんなことはうちのこども達に限って・・・という思いから二世帯購入と併せて相続も少し考えていかないといけないねという話しになることがほとんどです。せっかく建てた夢の二世帯住宅がきょうだい間の相続トラブルにつながらないように並走して相続対策を行うことをお勧めします。

2 二世帯住宅から来た相続トラブル

70代の両親が建てた築40年の二階建ての自宅を30代の長男夫婦が二人目の子が生まれることをきっかけに両親が二階、長男夫婦が一階と住まい、孫が行き来する生活を楽しんでいたご家族に起きた突然の父親の死。兄(長男)の下に県外に嫁いだ妹(長女)が一人いたため母と兄、妹で遺産分割協議を行い、母にすべてという相続を行ったものの2年ほどあとに母も亡くなってしまったため、母が所有していた二世帯住宅の下の土地を巡って兄と妹で争うことになってしまいました。残念ながら母は細々と年金暮らしをしていたため、現金や生命保険などもなく残されたのは二世帯住宅の下の土地のみでした。兄は当然親と同居し面倒も看てきた自負があったため、すべて自分がもらえるものだと思っていたところ妹が土地の半分の権利を主張し、最終的には土地の1/4のお金を渡す話でまとまりました。その当時お子さんが大学生になっていた兄は教育費の捻出もままならない状態だったため、自身の退職金が支払われた時に支払い、万が一妹が先に亡くなることがあった場合にはその子に支払うように念書を書くことになり母の相続は落ち着きましたがその後の兄と妹の関係は微妙なものとなってしまいました。これは二世帯購入時から考えうるトラブルの芽でした。両親が亡くなった際に不動産だけという相続の時はその他の兄弟姉妹への財産も検討する、遺言で意思を残す、生命保険でみなし相続財産を確保するなどできる打ち手があったはずという教訓になった事例でした。

3 想定外の二世帯住宅トラブル

奥様の父親の持っている土地の上に美容師の旦那様が二世帯住宅兼美容室をつくり、ローンを組んだケースです。奥様は一人っ子のため、特に相続トラブルになることはないと考えスタートした二世帯住宅兼美容室ですが、旦那様の美容室の経営不振からローンの支払いがきつくなり、最初は両親がお金を貸すなどしてしのいでいたものの立ち行かなくなり、離婚にまで発展してしまったケースです。奥様に美容師資格はなくパートだったため大きな住宅ローンのみが残り、現在も話し合いを重ねています。父親からするとローンを組んでいる婿は相続人ではなく、さらに離婚し、赤の他人となってしまったため、さらに話しが複雑になってしまいました。二世帯住宅は土地の持ち主とローンを組む人が違うというケースが出てきます。ですが相続の場面ではできる限りローンと持ち主は同一で複数で相続しないことが鉄則です。

4 まとめ

今回書かせていただいた二世帯住宅に潜む相続争いの話は年々増加傾向にあると肌で感じています。長引く低金利の中、収入も物価に連動して上がる気配がない中、若い家族は父母の財布を頼り、長生きになっている親世帯は老後のことを考え子どもと住みたいと考えるのは自然な姿だと感じますが、世代間で生活スタイルも変化しているため、衣食住を共にすることは容易ではありません。また二世帯購入時は小さかった孫を緩和剤に仲良くしつつも、電気代や水道代、固定資産税の支払いなど共有部分に対する見解の違いやそれぞれの夫婦の離婚など世代間でリレー的に組んだローンが支払い不能になるなど根幹から崩れることも多々見てきました。また相続の場面では二世帯住宅の住宅ローンを長男が支払いながらも亡くなった父親の土地を巡りきょうだいが権利を主張することもあるため、二世帯住宅を検討する際には同居する親子だけでなく、外で暮らすきょうだいのことも考えて二世帯の住宅購入を検討することが非常に大切となります。二世帯購入時に潜む相続時のトラブルは事前に相続まで含めた二世帯ライフプランを行うことをおすすめします。

伊藤 由美子(いとう ゆみこ)

伊藤保険株式会社 代表取締役
くらしFPカフェ株式会社 取締役
FPやしのみ ラジオパーソナリティー
笑顔相続道正会員
相続診断士、2級ファイナンシャルプランナー
ライフプランを軸に100年時代に向けてお金のサポートを行っている
ライフプラン 住宅購入 相続 資産運用 を得意分野とする

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