そのなかでも、地震大国 日本に暮らす我々はとくに地震に対して備えておく必要があります。
100歳を超える方のなかには「関東大震災」を経験された方もいるでしょう。近年では「阪神淡路大震災」「東日本大震災」「熊本地震」など、そして記憶に新しい「令和6年能登半島地震」などで大きな被害があり、今後も「南海トラフ巨大地震」や「首都直下地震」など多くの大地震が予測されており、いつどこで発生するか予断を許さない日本列島です。
とくに、高齢者が長年暮らす木造建築では、1981年6月1日の建築基準法改正の新耐震基準を満たさない建築物も多く、大震災が起こった際に大きな被害をもたらしています。
大切に守り育ててきた財産を守るための地震保険を検証してみましょう。
■地震保険とは?■
『地震による住宅などの損害を官民共同で補償し、被災後の生活再建を支える保険です。』(政府広報オンライン抜粋)
大地震が起こると甚大な被害により多額の保険金支払いが発生し、民間の損害保険会社だけでは対応できないおそれがあるため、再保険によって日本政府が保険金支払いを分担して成り立っています。そのため、一般の火災保険は損害保険会社によって補償内容や保険料率が異なり保険料が一律ではありませんが、地震保険部分は補償内容・保険料とも各損害保険会社共通となっています。
地震保険単独では加入できず、必ず、民間損害保険会社の火災保険とセットでないと加入できません。居住用の建物(店舗・住居併用の建物を含みます)や居住用の建物に収容されている家財(自動車や1個又は1組の価額が30万円を超える貴金属、宝石などは含まれません)に加入することができます。加入限度額は火災保険契約金額の30~50%の範囲内で、建物は5,000万円・家財は1,000万円までとなっています。また、一般の火災保険は原状復帰のための修理見積により損害額を査定し、実際の損害額を補償しますが、地震保険は損害の程度により決定される支払い割合による補償となっています。
■地震保険はどんなときに支払われるの?■
地震、噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊などによる建物や家財の損害を受けたときに支払われます。
たとえば、
・地震により火災が発生し焼失した
注意:地震による火災は、火災であっても一般の火災保険では補償されず、地震保険の加入がないと支払い対象とはなりません。
概ね、地震発生から72時間以内の火災については、地震による火災と判断されることが多いようです。
・地震により倒壊した
・津波により家が流された
・地震による地盤沈下により家が傾いた
などの損害が支払い対象となります。
大震災が起こると広域にわたり大きな損害が一斉に発生することが予想されるため、迅速かつ公正に保険金を支払う必要があることから、実際の損害額を詳細に査定するのではなく、損害程度を4区分(全損・大半損・小半損・一部損)に分け、加入地震保険金額の支払い割合を決めています。
(政府広報オンラインより)
■地震保険、必要なの?■
2022年度の都道府県別地震保険付帯率は全国平均 で69.4%にとどまっており、大規模地震が予想される地域の付帯率が高い傾向にあります。
生活再建が主目的である地震保険とはいえ、一般の火災保険金額(通常は、同程度の建物や家財を再取得するための金額)の50%が加入の上限となっているため、これだけではもとどおり今と同じ住宅を取得することが困難であることから加入をためらう人も多くいる要因だと考えられます。
このため、地震による火災の場合は100%補償できるオプションや地震保険で補償できない部分を補償できる保険会社もあり、より、ニーズにマッチした商品が登場しています。
さらに、一般の火災保険にプラスして地震保険に加入するとなると、保険料が高額になり負担が大きくなるのも加入をためらう要因かもしれません。
しかし、くり返し述べますが、地震保険は再建築を主目的としておらず、被害程度に応じて支払われる保険金によって生活再建を目的としています。
大規模地震で被災し大損害を被ったとしても生活再建費用を貯蓄などにより賄える場合は必要でないかもしれませんが、多くの場合は地震保険が生活再建の有効な手段となると思われます。
また、地震保険料には、建物の免震・耐震性能に応じた割引制度もあります。さらに、以下のように地震保険料の一定額が控除され、税制上のメリットが受けられる「地震保険料控除」があり、政府も地震保険加入を促進しています。
<地震保険の税法上のメリット>
所得税:地震保険料の全額(最高50,000円)
個人住民税:地震保険料の2分の1(最高25,000円)
火災保険の途中からでも追加することが可能ですので、取扱い保険代理店などにご相談されてみてはいかがでしょうか?
■まとめ■
地震保険では、保険金による生活再建資金で「モノ」の補填はできても、焼失・倒壊・流失してしまった「遺したい想い」や「大切な思い出」は補填できません。
地震保険の備えに加えて、縁ディングノート(エンディングノート)で大切な人に大切な気持ちを伝え遺すことも、いま求められている終活のひとつだと考えます。
岩井 真紀子(いわい まきこ)
株式会社 みらいふ 常務取締役
京都相続診断士会 副会長
相続診断士
終活カウンセラー
エンディングノート認定講師
笑顔相続道正会員
ファイナンシャルプランナー
損害保険トータルプランナー
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)
昭和61年から保険業に携わり、損害保険・生命保険の取り扱いや事故解決のアドバイスをしている。
また、数々のライフプランセミナーやエンディングノートの書き方セミナー講師をつとめる実績をもち、最近は、おひとりさまの終活・相続のコンサルティングに力を注いでいる。