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家族で始める終活③~家系図をつくってみませんか?~

公開日:2023-10-30 06:00

目次

はじめに

筆者の子の通う小学校では、2学期の行事といえば文化発表会と作品展示会です。

夏休みの自由研究の展示では、おとな顔負けの力作も見られます。様々な研究や芸術作品を鑑賞しながら、ふと思い出したのは、自身の小学校時代のこと。自由研究への取組みを楽しみにしている筆者に、母が「家系図をつくったらいいわ」と言うのです。何だか地味で華やかさのかけらもないと思って断固拒否したところ、少し寂しそうな表情の母の横顔が心の隅に残っていました。

現在、母は79歳、一軒家での一人暮らしも早2年に。せめてもの親孝行にと月に一度は訪ねる日を決めているのですが、そんな時、ふと思い出して聞いてみたのです。「小学校の自由研究に家系図作成を勧めたのはなぜか」と。

すると、意外な答えが。なんと、母自身がむかし小学生だった頃に家系図作成をしたことがあるというのです。なんでも、歴史の勉強がきっかけで興味を持ち、家紋の意味や自分の家のルーツについて親戚中に尋ねながら大きな和紙に筆で記入していったそうです。

【家系図をつくる目的】

最近では、TV番組などの影響もあってか自分のルーツを知ろうという思いや、還暦や結婚のギフトとして作成される方もいらっしゃるようで、きっかけは様々ですが、家系図の需要は増えてきているようです。主な目的としては、

  • 終活の一環として
  • 遺言作成に役立てるため
  • 相続手続きをスムーズにするため

などが挙げられそうです。ただ、遺言や相続などの言葉が出てくると一見ハードルが高いように感じる方もいるかもしれません。

家系図というのは、その名の通り、一族の系図ですから、書き方に厳格なルールなどはありません。この点、『法定相続情報証明制度(※)』の利用のため法務局に提出保管してもらう『法定相続情報一覧図』とは異なります。

せっかくの家系図ですから、わかりやすく見えるように書き方に統一性を持たせておくとよいでしょう。

〈例〉・現に夫婦の場合は横二重線で繋ぎ常に夫を右側に書く

   ・先妻の名前は現在の妻より小さめに書く

   ・兄弟姉妹は生まれ順に右から書く

   ・生年月日や死亡年月日は名前の左側に書く

   ・実子は直線、養子は破線で書く

   ・同世代は同じ高さに揃えて書く

 というように記載しておくと、手作りでも立派な家系図になることでしょう。

欧米にならって横書きにするケースもあるので、それぞれのセンスで作成して構いません。

では、どのような手順で作成していけばよいのでしょうか。

【家系図のつくり方】

家系図をつくるには、主に下記のような方法があります。

●専門家(行政書士・専門業者など)に依頼する

●家系図作成アプリやソフトを使う

●すべて手作りする

専門家に依頼する場合には、様々なプランがありますので、目的にあったサービスを選ぶとよいでしょう。

自分で作成する場合は、アプリを使うにしても、ご先祖様を知るために必要な資料の準備を一からしなければなりません。

  • 戸籍の取得

まずはここからスタートです。戸籍は本籍のある自治体で管理しているため、遠方の場合は郵送請求が一般的です。自治体のホームページから請求書がダウンロードできるか確認し、必要事項の記入、必要書類を同封して請求します。

ただ、戸籍謄本を請求できるのは、直系の子孫のみ、つまり、親子関係で続く一直線上の血縁関係にある人のみとされています。

例えば、祖父の戸籍は請求できますが、祖父のきょうだいの戸籍は請求できません。

また、戸籍で遡れる直系には限界があります。

2010年の戸籍法改正により、戸籍の保存期間は80年から150年に変更されましたが、1930年(昭和5年)までに除籍となったものは廃棄されている可能性もあります。

また、昔の戸籍(改製原戸籍・除籍謄本)を読み解くには、事前の知識も必要になってきます。

  • 戸籍で辿れない場合

菩提寺の過去帳や図書館での文献調査、現地調査等を行っていくこともあります。

自分で調べてまとめるには膨大な時間と手間がかかるので、どこまでの範囲で家系図を作成するか予め決めておくとよいでしょう。

ここまでが事前準備です。

戸籍の取得ひとつにしても、時間や手間がかかりますので、よい体験となるでしょう。将来の相続のために事前準備をしておくきっかけにもなりそうですね。

【家系図づくりの魅力】

すべての人には家系があります。この家系を先祖代々でまとめたものが「家系図」ですから、額に入れて毎日家族の目に触れるところに飾ってあれば、自分の血縁にどのような人物がいてどんな人生を送ったご先祖様なのか思いを馳せることもできるでしょう。それが、自分のルーツを知るということではないでしょうか。

自分が生まれてくるまでの歴史を再確認できる唯一無二のもの。そうした特徴が、結婚祝いやご両親の還暦へのプレゼント等に使われる理由かと思います。

まとめ

家系図のつくり方は色々で形式も自由です。お孫さんが似顔絵つきで作ってくれた家系図をプレゼントしてくれたら、この先の長生きが本当に楽しくなりそうですね。遺言書の準備はおろか、エンディングノートですらハードルが高いと思っている方には、こうした家系図作りから取り掛かってみてはいかがでしょうか。家系図は次の代へではなく、自分自身のルーツを遡っていくもの。10代遡ると1,024人のご先祖様が登場し、全員足すと2,046人にもなるのです。どんなご先祖様が登場するのか、わくわくしますね。

世界でたった一つのファミリーヒストリーが

「そうだ!エンディングノートを書こう!」

と背中を押してくれるかもしれませんね。

※『法定相続情報証明制度』については、法務局の該当ページを参照ください

 ⇒ https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html

金田 京子(かねだ きょうこ)

ファイナンシャルプランナー
ライフプランニングや家計の見直しなどを中心に1万件を超える個別相談に携わり、
金融教育インストラクター、セミナー講師としても活動。
法律事務所・金融機関勤務での経験や知識を活かしながら、
専門用語を使わずにわかりやすい言葉で、世代間をつなぐ相続・終活コンサルティングをおこなっております。
【保有資格】
2級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)
相続診断士® 笑顔相続道正会員
終活カウンセラー®2級
トータルライフコンサルタント(生命保険協会認定FP)
【問い合わせ先】Mail: kyoko.kaneda.rk@gmail.com