終活や相続対策、さらには相続発生後のタイミングで、不動産を売却するケースは多くなります。人生で一度は経験することかもしれません。どのようにして最善の方法で不動産を売却するかは、大きな課題となります。もちろん、近くに信頼できる不動産業者がいれば、その業者に相談するのが最善ですが、残念ながら多くの人は信頼できる業者を知らないのが現状です。

たとえ不動産業界の知り合いがいたとしても、その業者の専門分野や相性を確認するためには実際に会って話す必要があります。そして、相性が合わなければ新たに業者を探す手間が発生します。

そこで、多くの人がインターネットを利用して探し始めることとなり、不動産の一括査定サイトに行きつくことが多くなっています。一括査定サイトは、簡単な情報入力だけで複数の業者から査定額を取得できるため、非常に魅力的に見えます。

しかし、利用する前に一括査定サイトのメリットとデメリットをしっかり理解することが重要です。美味しい話には必ず裏があると言われるように、注意点が存在します。

以下、不動産の一括査定サイトについての詳細を順に説明しますので、じっくりと理解を深めてください。

1.一括査定サイトとは?

まず、一括査定サイトとは具体的にどのようなものなのかを解説します。

不動産の一括査定サイトは、オンライン上で自宅やその他の不動産の価格査定を無料で複数の不動産業者から一度に受け取ることができるサービスです。利用者はサイトにアクセスし、自身の物件に関する情報を入力することで、その情報が提携している多数の不動産業者へと送信されます。各業者は入力された情報を基に査定額を算出し、利用者へフィードバックします。このサービスの最大の利点は、一つ一つの業者に直接依頼することなく、時間を節約できる点にあります。さらに、複数の業者の査定額を比較することで、最も適切な査定を提供する業者を選ぶことや、自分の物件の市場価格の概要を把握することができます。このように見ると、不動産取引を考えている人々にとって、一括査定サイトは極めて有用なツールとして、インターネット上では書かれています。

もちろん、メリットは多く存在しますが、その背後に潜むデメリットも念頭に置きながら、別の選択肢も視野に入れて検討する必要があります。

2.不動産業者の視点から見る一括査定サイト

不動産業者の視点からみると、一括査定サービスを利用することは、競合他社との激しい競争を意味します。一括査定サービスの名前の通り、1件の問い合わせに対して、3社から6社程度がサイト運営会社からの紹介を受けます。この紹介を受けるための料金として、不動産業者は1件あたり1万5,000円から5万円程度を支払っています。そのため、業者は他社を出し抜いて、問い合わせ客と連絡を取り、売却の依頼を獲得したいと望んでいます。そのために、高額な査定額を提示して顧客を引き寄せる動機につながる可能性があるため、提示された査定が実際の市場価格と乖離することも考えられます。

不動産業者の立場を考慮すると、一括査定サービスを通じた取引では、以下の理由から効率的な売却が難しくなることが予測されます。

  1. 高額査定の誘惑:競合他社との競争で上回るため、市場価格以上の査定を行うインセンティブが存在する。
  2. 競合他社を差し置くための批判:他社の方法や評価を批判して自社の査定を正当化する場面が生じる。
  3. 査定と実際の売却価格の乖離:高い査定額を提示した後で、市場の状況や他の要因により、価格の下方修正が求められる場面が生じる。
  4. 顧客の期待とのギャップ:高額な査定を受けた顧客はその価格での売却を期待するが、実際の売却価格が予想より低くなると、顧客に不満が生じる可能性がある。
  5. 売却プロセスの長期化:不現実的な高価格での売却試みが、売却プロセスを遅延させるリスクがある。

一括査定サービスを利用するすべての不動産業者が高額査定を行うわけではありません。信頼性やブランドを重視する業者は、公正な査定を行い、長期的な関係の構築を目指すでしょう。しかし、顧客から査定額が低く思われてしまった業者は、選ばれにくく、収益が上がらなくなるため、一括査定サイトのサービス自体から撤退するリスクが生じます。

一括査定サイトのメリットを押さえつつも、上述したような不動産業者の視点や問題点も考慮すべきです。

3.一括査定サイトのデメリット

  1. 過度な営業連絡:一括査定を依頼すると、多くの不動産業者から査定のための連絡が来ることがあります。一部の業者からは過度な連絡があり、断っても連絡が続くことが考えられる。
  2. サービスの質のばらつき:多様な不動産業者が参加しているため、業者ごとの対応やサービスの内容にばらつきが見られる。
  3. 一括査定サイトの質の差:すべての一括査定サイトが均等な質を保証するわけではない。一部のサイトでは不十分な情報提供や、不適切な業者の紹介のリスクがある。
  4. 複数業者への対応の負担:一括査定の性質上、複数の不動産業者とのやりとりが必要になり、それに伴う営業対応のストレスが生じる可能性がある。

一括査定サイトを利用する際には、これらのデメリットを意識し、自分のニーズに合わせて最適なサービスや業者を選択することが求められます。

それにしても、一括査定サイトを選択する人は多くなりました。一括査定サイトを選択する理由とは、何でしょうか?

一括査定サイトの利用者が増え続ける背景には、いくつかの要因が影響していると考えられます。

4.一括査定サイトを利用する理由

  1. 積極的な広告・マーケティング活動:多数の一括査定サイトがテレビCMやインターネット広告を用いて、積極的に宣伝を行っています。これにより、多くの人々にその存在が知られるようになっています。
  2. 消費者の意識の変化:かつては知人の紹介や地域の評判で不動産業者を選んでいたが、今日の消費者は、多くの選択肢から最適な業者を選びたいという意識が強まっています。
  3. 無料で手軽に査定額を出してもらえる。

インターネット広告への投資は、費用をかけるほど露出が増える傾向にあります。一括査定サイトの運営者は、不動産業者に比べて、インターネット集客を主軸に広告費を投じているため、その投資規模が大きいです。結果として、不動産売却や査定に関連するキーワードでインターネット検索を行うと、一括査定サイトの広告や情報に頻繁に出会うこととなり、多くの問い合わせが生じることが推測されます。知人の紹介や地域の専門家を頼らず、インターネットで情報を求める消費者が増えれば、一括査定サイトへのアクセスも増加します。

一括査定サイトの裏には不動産業者が待ち構えているので、情報入力すれば、営業を受けることになります。

一括査定サイト以外の不動産業者の探し方も選択肢に入れていきましょう。

以下の選択肢が考えられます。

5.不動産業者の選び方

  1. 店舗を直接訪問して面談を行う
  2. インターネットでの口コミやホームページ、SNSを通じた情報収集
  3. 知人や友人からの紹介
  4. 相続診断士や他の専門家を通じての紹介

特に、相続診断士やその他の専門家からの紹介は、非常に有効であると言えます。専門家同士のネットワークを通じて、共通の目的や価値観を持つ業者が紹介されることが多いからです。例えば、相続診断士は、「相続」が「争族」にならないようにサポートすることを主な目的としており、その社会的役割を共有しています。

6.まとめ

最終的には、ご自分の直感や、「この人に依頼したい」と感じるかどうかが重要だと考えます。一括査定サイトは必ずしも否定的なものではありません。適切に活用することで、多くの方が利益を得ています。ただし、一括査定サイトの背後にある目的や不動産業者の狙いを理解して、受けた営業に流されることなく、自身の目的を達成する方法を見つけることが大切です。直接営業マンとの面談を通じて判断する努力、あるいは信頼できる専門家の紹介を受けることが、良い不動産業者との出会いへの最短ルートと言えるでしょう。

柏原 健太郎(かしわばら けんたろう)

株式会社クレス
NPO法人資産と暮らしの相談センター 理事
笑顔相続道正会員
宅地建物取引士、相続診断士、終活カウンセラー2級、2級ファイナンシャルプランナー
不動産業界19年、ご相談内容によって、弁護士、税理士、司法書士、行政書士などの各専門家と連携しながら、問題を解決していく不動産屋です。相続、離婚、借金の問題に誠心誠意取り組みます。

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