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再婚と相続~養子縁組について~

公開日:2023-10-02 06:00

目次

1 はじめに

ご主人の相続手続きが終わった時に、Aさんがこんな質問をしました。

「この子は、主人の前の奥さんとの子どもで、私とこの子とは血のつながりはありません。でも再婚して、同じ戸籍に入ったから、この子と私は、当然、親子ですよね。だから私が死んだときは、私の財産は、何もしなくても、この子に全部相続されますよね。」

Aさんは、何もせずに、自分の財産をご主人の連れ子(Bさん)に引き継ぐことができるのでしょうか。

2 近年の離婚件数などについて

まず、近年の離婚件数をみると、2000年を境に、減少傾向にありますが、それでも2020年では年間19.3万件の離婚が発生しています(図1)。また、親が離婚した未成年の子の数は、19.4万人となっています(図2)。

ちなみに、図1の緑の折れ線グラフによれば、全婚姻件数の26.4%が再婚件数となっています。再婚によって、新しい家族関係が作られている家庭が13.9万件あり、再婚相手に連れ子がいるケースも珍しいことではないと思います。

(図1)

(図2)

3 再婚で発生する「法律上の家族関係」

Aさんの例を取って、考えてみます。

Aさんの亡くなったご主人には、前妻との子どもBさんがいました。結婚したときBさんは8歳。Aさんは初婚でしたが、Bさんと時間をかけて親子としての絆を育み、とても仲の良い親子です。

Aさんは、婚姻によりご主人の戸籍に入籍して、戸籍には、ご主人、Aさん、Bさん3人の名前が並んで書かれていました。Aさんは、この戸籍を見てBさんと親子になったので、自分が亡くなった時は、Bさんが相続人になると思っていたのでした。

ご主人とAさんとは再婚によって「法律上の夫婦関係」ができました。よって、ご主人が亡くなったとき、Aさんは、相続人になることができました。

しかしAさんとBさんの関係は、戸籍に一緒に名前が並んでいたとしても、それだけでBさんがAさんの相続人になれるわけではないのです。

つまり、Aさんがこのまま何もしないと、AさんはBさんへ自分の財産を引き継ぐことはできません。

4 Bさんに自分の財産を残したいAさんは、何をすべきか?

一般的に連れ子へ自分の財産を確実に渡す方法として、「養子縁組」「遺言」「生前贈与」などがあります。

AさんとBさんの場合、長年親子として過ごしてきて、AさんもBさんも親子として生きていくことを希望していたことから、「養子縁組(※注)」を選択され、養子縁組届を提出して、「法律上の親子関係」を作ることができました。

戸籍には「養母」としてAさんの名前が記載され、養子縁組したことも新たに書き加えられました。これによって、Aさんの相続人としてBさんは財産を相続することができるようになりました。

※注 養子縁組には、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」がありますが、今回のケースの「養子縁組」は「普通養子縁組」です。

5 普通養子縁組の手続きについて

養子縁組とは、養親と養子の間に法律上の親子関係を作る制度です。養子縁組にはいくつかのルールがあります。

【養子縁組の要件】

1.養親が20歳に達していること
2.養子となる方が、養親となる方の嫡出子、養子ではないこと
3.養子となる方が養親となる方の尊属、年長者ではないこと
4.後見人が被後見人を養子とする場合は、家庭裁判所の許可を得ていること
5.配偶者のある方が未成年者を養子とする場合は、配偶者とともに縁組をすること
※配偶者の嫡出子を養子とする場合は、単独で可能
6.養子、または養親となる方に配偶者がいる場合は、配偶者の同意を得ていること
7.養子となる方が15歳未満であるときは、法定代理人が縁組の承諾をすること
※法定代理人以外に養子となる方の父母で監護をすべき方がいる場合は、その同意を得ていることが必要
8.養子となる方が未成年者の場合は、家庭裁判所の許可を得ていること
※自己または配偶者の直系卑属を養子とする場合を除く
9.地区町村役場へ養子縁組の届出を行うこと
10.養親養子ともに、養親子となる意思を持っていること
Bさん(養子)は、すでに結婚しており、配偶者と2人の子がいました。

養子縁組届には、配偶者が「養子縁組に同意します」という記載が必要でした)。また養子縁組によって、戸籍の筆頭者であったBさんは、養親の氏を名乗って(Bさんの場合は、Aさんと同じ氏であったので養子縁組による氏の変更は無し)配偶者と共に新しい戸籍を作ることになります。新しい戸籍には、Bさんと配偶者は記載されますが、2人の子については、別途、両親のいる新しい戸籍に転籍の手続きが必要です。

6 まとめ

血のつながりのない子は、戸籍が一緒となっても自動的に相続人にはなれません。

財産を連れ子に引継ぎたい場合は、「養子縁組」「遺言」などのアクションが必ず必要になります。認知症になった場合や自分が亡くなってしまった後では、取り返しがつかないことになってしまいます。

また、養子縁組は養子の婚姻などによって手続きが非常に複雑になります。養子縁組する意思があるのであれば、早めに養子縁組について検討することをお勧めします。

養子縁組届の書き方や手続きの方法は、その家族によって異なりますので、届出をする市区町村役場へ必ず確認をしてください。

血のつながりがなくとも、大切な子に財産を渡したいという気持ちを実現するためには、そのための行動を、今、起こしてください。

もし、よくわからないとき、手続きを手伝ってほしい方は、ぜひ相続診断士にご相談ください。

蓮見 倫代(はすみ みちよ)

笑顔相続道®正会員

相続診断士

都内法律事務所でパラリーガルとして約20年勤務。

自身が経験した相続を通し、家族間のトラブルは財産がなくても起こることを目の当たりにする。そんな中でも「相続放棄をしても奪われない遺産」を受け継いでいることに気づけたことで相続の力を知る。「物」も「想い」も余すところなく次の世代へ引き継ぐ相続を目指し、各専門家と連携し日々奮闘中。

相続発生後の相続手続きを得意としています。

【お問い合わせ先】

hasuminhelp@gmail.com