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家族で始める終活② ~親子でお金の話ができますか?~

公開日:2023-09-04 06:00

目次

はじめに

9月に入っても相変わらずの猛暑が続きますが、もうすぐ秋のお彼岸ですね。

今年の彼岸の中日(秋分の日)は23日ですから、20日~26日までの7日間が秋彼岸の期間になります。一般的に、あの世(彼岸)とこの世(此岸)の距離が最も近くなる日、ご先祖様への日頃の感謝の気持ちを込めてご供養を行う行事とされています。

・お墓掃除とお墓参り

・お仏壇掃除とお参り

・おはぎのお供え

お彼岸にやることとして、主だったものを挙げてみましたが、皆さんの場合は、いかがでしょうか。

筆者が子どもの頃、両親の各々の実家では親戚がみな集まる時期でもありました。

普段はなかなか会えないいとこたちと、お供え物の争奪戦を繰り広げたりして、その賑やかさたるや、きっとご先祖様もさぞかしびっくりされたことでしょう。

ところで、筆者がお客様からご両親の介護や相続についてご相談を受ける際、多くの方から聞かれることがあります。

「お金のことを話すのはどうも気まずい」

「親にどう切り出したらよいのかわからない」

「お金のことを話したら、仲が悪くなるのではないか」

といったことです。

本当にそうでしょうか?

お金のことを話したら家族の関係性が悪くなってしまうのでしょうか?

実は、そうではないのです。

今回は、筆者が実際に受けたご相談事例から、思いがけない方向へと変わっていったケースをご紹介したいと思います。

【家族関係が変わった事例】

1 桃子さんのご相談 ~母を看ています~

もうすぐ還暦を迎える桃子さん(仮名)は一人娘で、30代半ばでご主人の太郎さん(仮名)とご結婚されました。当時、お母様の花子さん(仮名)は結婚に大反対だったのを押し切って一緒になりましたが、結婚後のご夫婦関係も決してよくはなかったそうで、一時期は離婚を検討、そして今も「いつか離婚をと考えています。」と仰るのです。

長い年月を経て、今、桃子さんは、ご両親の介護に頭を悩ませています。

実は、悩み事はそれだけではありません。十年以上前にご主人の太郎さんは大病が原因で障害が残ってしまい、障害年金をもらっている状況です。桃子さんは、その頃から生活のためにパートに出ていましたが、もともとお金の管理が苦手で貯金もほとんどなく、本格的におとずれる老後が心配で、ご相談にみえました。

90代のお父様は要介護4認定の状態で、民間の老人ホームに入所中。実はお父様の年金では足りずにお父様の貯金を取り崩している状況です。

80代後半のお母様が戸建てで一人暮らしをしていたのですが、転倒をきっかけに足腰が不自由になり要介護1認定となりました。

そこで、お住まいの賃貸マンションの一室(6畳和室)をお母様用のお部屋にして、三人で暮らすことに。戸建ての家はそのままで税金や光熱費の支払いも続けているのは、お母様のご意向とのことです。

2 三人の生活 ~ギクシャクからの始まり~

桃子さんの予想通り、三人の生活は厄介ごとばかり。桃子さんの言い分によれば、太郎さんは変わらず好き勝手なことをしているし、花子さんは眠るときしか自室に行かずにリビングのソファを常に独占している状態、同じ空間にいながら、食事も生活も全員がバラバラ、といった状態。桃子さんもどんどん不機嫌になり、『早く母を介護施設にやらねば。』と、そればかりを考える毎日になったそうです。

実は、初回の面談では、桃子さんの今の生活上の細かな愚痴までひとしきりお聞きして時間が終わりました。

3 一人娘の気持ちと母親のほんとうの気持ち

その後、しばらくご相談の日にちが開いたため、お盆の時期がやってきました。桃子さんは、お母様を連れてご実家のお墓参りに行き、ご自宅の仏壇もきれいに掃除して、ご先祖様をお迎えしたそうです。

〈お墓参り前〉

桃子さんの想いはこうでした。

・自分には子どももいないし、お墓があっても困る

・両親存命のうちに両親のお金で墓じまいまでしてほしい

・母の介護状態が進む前に父同様に介護施設に入ってほしい

・そのお金は、自宅や貸地などの不動産を売却して充ててほしい。

そして、そんな話をほんの少ししたら、「母がすべて財産を隠してしまい、どこに何があるかわからなくなってしまったのです。」と仰っていました。

桃子さんにとっても、ご夫婦の目の前の生活状況と老後の心配があり、ご両親の生活までは考えがまわらず、「私は一人っ子なのだからできれば財産を少しでも多く残しておいてほしい。」と考えていたようです。

一方で、母の花子さんの想いがこうでした。

・自分は婿養子をとった家付き娘、〇〇家のためにと頑張ってきた

・自分の幼少期と同様に、桃子さんにもいずれ婿取りをと考えて、かなり厳しく育ててきた

・娘の結婚の時には、感情にまかせて酷いことを言ってしまったが、桃子さんには誰よりも幸せになってほしい一心だった。

〈お墓参り後〉

ご実家のお墓は先祖代々の立派なお墓で、菩提寺さんの管理。ちょうど、お参りのときに住職さんとお話しできたそうで、桃子さんは、無理に急いで墓仕舞いをする必要のないこともわかったようです。「お墓を一人で守るのは大変という思い込みでしかなかった。」とも。

花子さんは、自分のお金や不動産のことを聞いてくるのは、桃子さんの夫の太郎さんの差し金に違いないと思い込んでしまっていたのだそうです。ところが、一緒に暮らしているうちに、太郎さんがつくる手料理がプロ並みの出来栄えであること、実は高齢のお母様が食べやすいようにと具材の切り方や煮込み時間までわざわざ変えて別皿に盛ってくれていること、言葉数が少ないけれど実はやさしいこと、に少しずつ気づいていったそうです。そこで、桃子さんが離婚を考えていると言うので、涙が止まらずに必死の思いで反対したのだそうです。

さて、このお墓参り後のお話、親子で実際に話したのは、どのタイミングだと思いますか?

実は、お墓参りの直後、ご実家のお仏壇のあるお部屋で、お話しされたそうです。

お盆でお迎えしたご先祖様たちが、みんなで見守ってくださったのかもしれませんね。

そのお墓参りの後、私がお会いした際は、桃子さんお一人ではなく、母の花子さん、それに夫の太郎さんも一緒に三人そろっての面談となりました。

私からのアドバイスは

・要介護の重いお父様の入所施設の見直し(特別養護老人ホームの検討)で費用負担減を

・不動産は売却するなら、利用していない土地からにし、ご実家を売るのは最後の最後に

・可能なら賃貸を出てご実家での三人暮らしの検討も

・親御さん世代と子世代との「つながる」ライフプランづくりを

・桃子さん太郎さんの夫婦二人の老後生活のために今からでも自助努力で資産形成を

・今の想いを大事に

といったことを中心にお伝えし、将来のお金の安心計画をおつくりしているところです。

4 終活で変わる家族関係

今回の花子さんの場合は、特によいかたちに向かっていった例ですが、お金の相談に専門家が入ることで、その後の家族関係がよくなっていくことは、よくあることなのです。

では、家族で終活・相続の話を円滑に進めていくポイントはどこにあるのでしょうか。

例えば、お墓の継承者がいない場合は早く墓仕舞いをすべき、といった思い込みを自分で変えることはなかなか難しいですね。また、良かれと思って聞いても、身体が思うように動かなくなった場合や高齢になるにつれて、意固地になってしまうこともよくあることです。

筆者のおすすめは、やはりエンディングノートを書いてみることです。できれば、家族みんなで楽しく取り組むとよいでしょう。

そして、もう一つのおすすめ。

今度のお彼岸には、親子やご夫婦でお墓参りをしながら、この先のお金のことも話してみませんか。きっと、ご先祖様も見守ってくれていることでしょう。

まとめ

エンディングノートとは、財産のことだけではなく、これまでの人生の振り返りをしながら、これからの人生をどう楽しんでいくかの計画を立てることで、実は、とても楽しいワークなのです。自分自身のルーツを知って、ご先祖様から自分、子へ、孫へ、と想いと縁を繋いでいきましょう。

取り組み方・書き方に不安のある方は、『エンディングノートの書き方セミナー』をご活用ください。

エンディングノートは様々なタイプのものが市販されていますので、どれを使っても構いません。セミナーでは、笑顔相続サロン®代表の一橋香織著、日本法令®から出ている「終活・相続の便利帖」(写真)を使用しております。

記入部分だけでなく、相続の周辺知識も習得できるつくりになっていて、おすすめです。

金田 京子(かねだ きょうこ)

ファイナンシャルプランナー
ライフプランニングや家計の見直しなどを中心に1万件を超える個別相談に携わり、
金融教育インストラクター、セミナー講師としても活動。
法律事務所・金融機関勤務での経験や知識を活かしながら、
専門用語を使わずにわかりやすい言葉で、世代間をつなぐ相続・終活コンサルティングをおこなっております。

【保有資格】
2級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)
相続診断士® 笑顔相続道正会員
2級終活カウンセラー®
トータルライフコンサルタント(生命保険協会認定FP)
【問い合わせ先】
Mail: kyoko.kaneda.rk@gmail.com