同居していた父が亡くなり10年経過し、今は母と妻と子供たちと住んでいます。
妻が母の面倒を見ている状態で、その母も高齢になり、母が先日公証役場で書いた遺言書を見せてくれました。母の遺言書では、『自宅は長男に』と書いてありますが、父の相続も終わっていません。そのため相続の件で調べていたところ、住んでいる自宅が祖父と亡父の共有名義のままでした。もし今後、母が亡くなっても現在住んでいる自宅にそのまま住み続けることが出来るのでしょうか。遠方に住んでいる妹家族もいます。
さてこの場合、祖父が亡くなった時に不動産の名義変更が出来ていればよかったのですが、
祖父から父への名義変更の相続登記ができていない状況でした。このように不動産を相続する際に、2代以上相続登記ができていなかったというケースもあるので不動産を相続する際は注意が必要です。この場合、まず懸念されるのは、時間が経ってしまったため、相続人の数が増加し、相続人の確定に時間がかかってしまうことです。
遺言書も無かった場合、まずは、遺産分割協議に関わる相続人が誰なのかを、漏れなく特定しなければなりません。
祖父の出生から死亡までに渡る戸籍の収集から始める必要があり手続が煩雑になってしまいます。父のきょうだいは6人いて、そもそも祖父が亡くなった時、自宅以外の相続をしたのかも調べる必要があります。
まずは戸籍収集については自力では時間もかかり、煩雑なため専門家に依頼するほうが楽でしょう。
相続人の中には、ご本人が今まで一度も会ったことがない方や既に亡くなっていて、代襲となっている方も出てくると予想されるので、遺産分割協議が整うか危惧されるところです。
相続時に不動産の名義変更をしなかったら
不動産の名義変更はいつまでしなければいけないのでしょうか。
土地や建物の相続時には相続登記(名義変更)の手続きが必要ですが、これまでは期限が設けられていませんでした。しかし、令和3年12月14日に相続登記を義務化する法律が閣議決定。令和6年4月1日から施行されます。改正法は遡及して適用され、今後不動産を相続される方だけでなく、過去に不動産を相続して現時点で名義変更をしていない方についても、相続登記をしないとペナルティの対象になります。
名義変更は何のためにするのでしょう
不動産の名義が故人のままでは、誰がその不動産を相続したのかが第三者にはわかりません。名義変更しないと相続人が不動産を売却又は担保を設定するには名義変更が不可欠です。相続した家をリフォームする場合や、不動産を賃貸に出す場合にも名義変更が必要になるケースもあります。
遺産分割のための書類も集まらない可能性が
相続による名義変更手続きをやらない場合、時間が経てば経つほど手続きに必要な書類が集まりにくくなってしまいます。相続による不動産名義変更手続きには、戸籍謄本や印鑑証明書などの各種書類が必要になりますが、役所で保管する書類には、保存期間が定められています。そして、その期間が過ぎると廃棄されしまう可能性があります。
住民基本台帳法の一部改正(令和元年6月20日施行)により、住民票の除票および戸籍の附票の除票の保存期間が5年から150年に延長されました。
ただし、基準日においてすでに保存期間を経過しているものは廃棄されており、各種自治体により対応が違うようです。
遺言書の作成で相続人を指定する
相続が発生すると基本的には法定相続人が遺産を引き継ぎます。
しかし遺言によって、遺産の贈与が指定されている場合は、指定された人が受け取ることができます。遺言書にもとづいて法定相続人が相続をする場合の名義変更の登記必要書類は、遺言で指定された相続人と被相続人の関係が証明できればよく、全相続人を確定する必要がないため、死亡から出生まで被相続人の戸籍を遡る必要はありません。
以上の事を踏まえ、相続が発生したら速やかに不動産相続登記をすることが大切ですね。
相続人間の関係性も複雑化しやすく、相続自体も複雑化する傾向にあります。
万が一、※数次相続
が発生した際には必ず相続の専門家に一度相談しましょう。
※数次相続 とは…数次相続(すうじそうぞく)とは、被相続人の遺産相続が開始したあと、「遺産分割協議」や「相続登記」を行わないうちに相続人の一人が死亡してしまい、次の遺産相続が発生してしまうことをいいます。今回の場合、祖父の相続財産についての遺産分割協議は、相続人である祖母と子どもである長男である父とそのきょうだいでおこないます。しかし、この協議の前に父親が亡くなってしまった場合、残された長男の子たちは祖父の相続財産についての遺産分割協議だけでなく、父親の財産の遺産分割協議をおこなう必要があります。そして、理論上は、父親の相続財産の中には、相続するはずであった祖父の相続財産も含まれるということになります。つまり、長男の子たちのおこなう遺産分割協議には、祖父→父→子という2回の相続分が含まれるということになり、このような相続が2回以上重なっている状態を数次相続といいます。 |