生前に専門家に頼んで対策をしていないと、亡くなった後の手続きは、すべて自身でしなければならないと思っている人もいるのではないでしょうか?
また、相続手続きを自身でやり始めたものの、思いのほか手間がかかり、専門家を頼りたいけれど、今さら相談してよいのか悩まれている人もいると思います。
「父が遺言書を書いていなかったので、亡くなった後の処理を自分でしましたが大変でした。」
「母が亡くなったときは、相続財産も少なく、どうにか自分でしましたが、わからない事ばかりでした。」
筆者の事務所へ来られる相談者から、このような言葉をよく聞きます。
その大変だった経験をしたから、自身は今のうちに準備しておこうと、思われるのでしょう。
思いのほか大変だと感じる、亡くなった後の基本的な事務手続きについて紹介していきますので、自身でするのか専門家に依頼するのか、判断の参考にしてみてください。
1.亡くなった後からすぐに始まる手続き
相続は亡くなった時から始まりますが、実際には相続手続きをする以前から、残された家族が対応すべき様々な手続きが始まります。
病院で亡くなると死亡診断書、自宅など病院以外の場合は死体検案書を受け取り、葬儀会社を決めて、準備をしながら親族や関係者への連絡をおこない、葬儀までに死亡届と埋火葬許可申請を行います。
葬儀が終わると年金や健康保険などの公的手続きを、それぞれの窓口へ出向き、平日の営業時間内に処理しなければなりません
人によっては、公共料金、クレジットカード、携帯電話などの解約や名義変更、預金や生命保険、不動産などの数多くの煩雑な手続きになることもあります。
公的な手続きから、故人のさまざまな契約、そして相続の対象となる財産の手続き、その他にも、遺品整理などが必要な場合もあります。
その中で、公的手続きなど、期限内にしなければいけないものも多くありますが、いずれにしても、なるべく早くおこなうべきです。
2.相続手続きの順番
亡くなった時から相続が開始されているといっても、実際手続きを始めるのはどれだけ早くても葬儀後になるので、早くても1週間、人によっては1カ月ほど経っていることもあります。
そこから期限の定められているものは、手続きを終えなければなりません。
① 遺言書の有無の確認
遺言書の有無により、そのあとの手続きが変わるので、すぐに調べる必要があります。
公正証書遺言の有無は、最寄りの公証役場に問い合わせて確認します。
自筆証書遺言は、自宅に保管しているか誰かに預けていることもありますが、最近では、法務局の保管制度を利用していることもあります。法務局に保管されていない自筆証書遺言は家庭裁判所での検認が必要になります。
遺言書に遺言執行者が指定されていると、その人へ相続が開始したことの連絡も必要です。
② 相続人の調査
家族は当然相続人が誰なのかは把握していると思いますが、相続手続きには公的に証明された客観的な資料が求められ、それを基に相続人が誰なのか、そして相続順位を確定しなければなりません。その為に、故人の出生から死亡までに作成されたすべての戸籍謄本や除籍謄本を取得する必要があります。
また、相続財産の基礎控除額を知るためにも相続人数の確定が必要です。
③ 相続財産の調査
相続財産にはプラスの財産とマイナスの財産があります。
プラスの財産は、不動産や預貯金、有価証券などです。マイナスの財産は、ローンなど金融機関からの借入れや、事業をしていた場合は取引先への支払債務などもあります。
もし財産の調査をしなければ、マイナスの財産が多い場合に、相続放棄や限定承認の手続きをおこなえず、多額の債務を相続してしまいます。
④ 相続放棄、限定承認の判断
マイナスの財産が多い場合におこなう相続放棄と限定承認は、家庭裁判所で手続きをする必要があり、相続開始を知った時から3カ月以内という期限があります。
つまり、相続人と相続財産の調査は3カ月以内に完了していることが必須になります。
*限定承認・・・プラスの財産の範囲内まででマイナスの財産を引継ぐ相続方法
⑤ 遺産分割協議
有効な遺言書が無い場合には、相続人全員で遺産をどう分けるかについて、話合いをしなければなりません。また相続人に未成年者がいる場合には、代理人の参加が必要です。
遺産分割の話合いがまとまれば、遺産分割協議書を作成して財産を分けます。
まとまらなければ、家庭裁判所の調停を利用する方法もあります。
⑥ 税の申告
確定申告をする必要のある人が亡くなった場合には、相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内に準確定申告をしなければなりません。
また、相続財産の評価をおこない、基礎控除や税額軽減の特例など受けても、相続税が課税される場合は、死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内におこなうことになっています。
遺産分割協議がまとまっていないからといって、相続税の申告期限が延びることはなく、各相続人が納めることになります。そして、遺産分割協議が終わっていなければ、特例の適用も受けることができなくなります。
さいごに
これらの相続手続きは、相続人が複数人いても、その中の誰か一人がする場合がほとんどです。
仕事をしている人にとって、期限内に手続きを完了させることは、時間的にタイトです。また、相続人同士の話し合いがまとまらず、争いになる場合もあります。
多岐に渡る手続きは窓口も違い、大変な手間になります。そして、相続手続きの期限に間に合わなければ、経済的損失が発生することもあります。 相続は一人の専門家で完結することは少なく、多くの専門家は、総合窓口となって他の相続業務の専門家とチームになって手続きを完了します。
誰に相談すればいいかわからないという人は、相続の専門家に相談すると必要な業務の各専門家に繋いでもらえます。
時間的に余裕があり、相続手続きの経験がある人なら、自身ですることも負担にならないかもしれませんが、依頼するかどうかを判断するためにも、まずは相続の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
上田静香
行政書士上田静香事務所 https://www.su-souzoku.com/
代表 上田静香(うえだ しずか)
2013年行政書士事務所を開所
一般社団法人相続診断士協会パートナー事務所
相続診断士
笑顔相続道正会員
終活カウンセラー
1. 健康である今、何も対策をしないと相続が起きた時にどんなリスクが起きるのか?を明確にして対策をお伝えします
2. 難しい法律用語を使わずにわかり易い言葉でご説明します
3. 忙しいクライアント様の手間を最小限にします
家族が争うことなく大切な毎日を笑顔で送る生前対策を提案し
悲しみの中で慣れない相続手続きをする大変さや不安を解消します。