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令和5年版 外貨建保険ってどんなもの?

公開日:2023-07-24 06:00

目次

●はじめに●

日本では長らく低金利の時代が続いていますので、「預金よりも高金利が期待できます」と外貨建保険を勧められた方もいらっしゃるのではないでしょうか。筆者も生命保険の取扱いがありますが、最近お問い合わせもかなり増えてきました。

令和5年現在、外貨建保険は日本円よりも相対的に高金利、死亡保障を大きく取れるなどのメリットがあります。一方で元本割れリスクがありますので、毎年一定数の苦情があることも事実です。

※生命保険協会によると、2020年度の外貨建て保険に関する苦情件数は1,866件。

それを踏まえて「外貨建保険、入った方が良いの」?というご質問を頂くことがありますが、筆者はいつも「目的によります」とお答えしています。外貨建保険に加入する目的はシンプルに考えると以下の3つです。

・保険金として家族に残すため。

・増やして自分で使うため。

・生命保険の非課税枠を使っておくため。

このうち、「生命保険の非課税枠」というのは、保険金額が「500万円×法定相続人の数」までは相続税が非課税になるもので、こちらは外貨建保険でなくても活用可能です。そう考えると数ある選択肢の中から外貨建て保険を選んで加入する目的は「家族に残す」、「増やして自分で使う」の2つと考えられます。

●外貨建保険とはどんな商品なのか●

外貨建保険は払い込んだ保険料を米ドルや豪ドル等の外貨で運用する保険です。保険金の受取は外貨でも可能ですが、日本円で受け取るケースがほとんどです。そのため為替レートの影響を受け、元本割れのおそれがあります。なぜ元本割れのおそれがある商品が存在しているのかというと、「貯蓄性が高い」、「保険料が割安なため、結果的に死亡保障が大きく取れる」というメリットがあるからです。例を見てみましょう。

(例1)米ドル建一時払終身保険

被保険者 65歳男性

一時払保険料1,000万円(71,428.57米ドル×140円)

保険金額15万米ドル

この商品は保険契約時に1,000万円の保険料を一括で支払うと、契約後は被保険者に万一の事があった場合15万米ドル支払います。最初に一括で保険料を払い込みますので、それ以降保険料を支払う必要はありません。

仮に為替レートが契約時と変わらず1米ドル=140円であれば、15万米ドルの保険金は約2,100万円に相当しますので、支払った1,000万円の約2.1倍の受け取りが可能です。一般的にこの倍率は被保険者の年齢が若ければもっと大きくなります。日本円建の商品だとここまで死亡保障の倍率は大きくありませんので、この点が外貨建保険の魅力だと言えるでしょう。

しかし注意点もあります。外貨建保険は、基本的に被保険者の死亡した日を基準に保険会社所定の為替レートで支払われますので、1米ドル60円の場合保険金は約900万円になってしまいますが、1米ドル200円の場合には保険金は約3,000万円に膨らむなど振れ幅があります。

●損をしないのか?●

結論から申し上げますと、損する可能性はあります。損する(元本割れする)のは大きく分けて2パターンです。

1つ目は保険金を受け取った際に円高だった場合です。

例1で保険金の15万米ドルを日本円で受け取った場合、契約時の1,000万円を下回ることが元本割れといえます。1,000万円÷15万(米ドル)≒66.6円、つまり1米ドル約66.6円よりも円高の時に死亡すると元本割れ、ということになります。

ここでの注意点は為替手数料です。保険会社によって異なりますが一般的に支払い時、受取時にそれぞれ1銭~50銭の為替手数料が必要ですので、仮に為替が全く変動しなかったとしてもこの分保険金は目減りします。

2つ目は解約した時です。一括で払い込んだ後はいつでも解約が可能ですが、こちらも解約時に円高だった場合は元本割れの可能性があります。加えて保険商品によっては、契約時に初期費用が差し引かれたり、毎月費用が差し引かれるものがありますので払い込んだ全額が運用されるわけではありません。また、解約控除や市場価格調整がかかるものもあり、解約のタイミング、市場金利によっては元本割れのおそれがあります。

※解約控除・・契約から一定期間内に解約、減額すると所定の控除(マイナス)がかかるということ。

※市場価格調整・・解約したタイミングでの市場金利によって解約返戻金が増減する仕組み。

●終わりに●

例1の商品は払った保険料よりも米ドルベースで保険金額が大きく設定されていますが、商品によっては運用に主眼を置いたものもあります。そちらは保険金額が例1のタイプよりも少なくなる可能性があります。

外貨建商品は種類も多く内容も複雑ですので、一般の方が初見で保険の内容を完全に理解することは難しいです。大切なことは、自身の保険加入の目的が「家族に残すため」なのか、「増やして自分で使うため」なのかを考え、それに沿った提案を受けることです。

増やすことが目的であれば、場合によっては保険以外も選択肢に入ります。

まずは目的を整理し、そのうえで為替リスクも許容できるのか。また自身の財産状況から考えて加入は妥当なのか。以上を踏まえて、信頼できる方から保険の説明を聞くことをお勧めします。

福本 知輝(ふくもと ともき) 

寺院コンサルタント

2級ファイナンシャルプランニング技能士

相続診断士 笑顔相続道正会員

終活カウンセラー1級

西日本を中心に寺院向けの生命保険、資産運用のご提案、檀信徒さま向けの相続相談業務を行っています。お寺ならではのお悩みに寄り添い、解決するお手伝いを致します。

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