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保険の契約形態にはご用心!

公開日:2023-06-26 06:00

目次

●はじめに 

生命保険文化センターのデータによると、生命保険の世帯加入率は89.8%。つまり日本人のほとんどが何かしらの生命保険に加入されていることになります。

※生命保険文化センター/令和3年度生命保険に関する全国実態調査より 

筆者は日々お客様の生命保険のご相談を受けておりますが、ご家庭によって保険契約の内容はさまざまです。
ただ時折「これ大丈夫かな?」と思う契約に出会います。
それは保険契約の中身(保険金額や保障の内容)が悪い、ということではなくて保険の契約形態に問題があるケースです。

●契約者じゃない人がお金を払っているケースは注意

保険の契約形態に問題があるとはどういうことでしょうか。こんなケースはありませんか?

名義(契約者)は私だけど、夫の口座から引落としをしている保険がある。

夫や親が私にかけてくれている保険がある。

筆者も現場でよく目にしますが、気をつけないと後々思わぬ事態を招くこともあります。何が問題なのでしょうか。実際の例を確認してみましょう。

事例A 夫が契約者、引落口座も夫名義である保険

契約者 夫

被保険者 妻

死亡保険金受取人 夫

保険料引落口座 夫名義

他社でご加入された保険でしたが、ご担当が退職されており、筆者のところへご相談がありました。契約内容は死亡保険で、「妻に万一の事があった場合は夫に1,000万円の保険金が支払われる」というものでした。ご夫婦の希望通りにはなっており、一見問題なさそうです。

では実際に保険期間中に妻が亡くなったとします。これまでに支払った保険料の総額は500万円、夫が保険金1,000万円を受け取ったとします。ドライに言うと「夫は500万円支払った後、1,000万円返ってきた(500万円増えた)」ことになります。すると今回のケースでは一時所得の対象となり、所得税(住民税)の対象となる可能性があります。

保険金もらって税金かかるなんて!」と思うかもしれませんが、ルール上こうなる可能性があります。筆者がご主人になぜこんな契約形態にしたのかを尋ねたところ、「契約当時妻が産後で育児にかかりっきりだったので、少しでも労力を減らすため」だったそうです。しかし税金の種類が変わることまでは知らなかったようでした。

では同じ目的を達成するために、こんな契約形態だった場合はどうでしょうか。

事例B 妻が契約者、被保険者。引落も妻の口座から。

契約者 妻

被保険者 妻

死亡保険金受取人 夫

保険料引落口座 妻名義

これなら夫が受け取った死亡保険金1,000万円は相続税の対象となります。いずれの場合も何らかの税金の対象となることは同じですが、相続税は全ての人がかかるわけではないため、この契約形態であれば納税する必要がない方が大半でしょう。現場ではこの契約形態がほとんどですし、特に注文がなければ保険営業マンもこの契約形態でご提案されるはずです。

●実際の保険料負担者に注目

事例C 契約者と保険料引落口座が違う。

契約者 妻

被保険者 妻

死亡保険金受取人 夫

保険料引落口座 夫

こんなケースもあります。筆者も現場で幾度となく見てきました。事例Bと同じですが、「夫の口座で全部引落しをまとめています。」とか、「妻の口座は銀行が遠くて不便だから夫の口座にしてください。」というご家庭によく見られます。外見上は事例Bと同じですが、実際は事例Aと同じく受け取った夫の一時所得の対象となる可能性があります。

●税金の種類はどこで変わるのか?

先ほどの事例Cのケース、なぜ夫の一時所得なのでしょうか。それは保険料負担者、被保険者、保険金受取人の関係性で税金の種類が変わるからです。要は「誰がお金を払って、誰が受け取るのか」で決まります。



※国税庁ホームページ「保険と税」より引用。

表面上は妻が保険料を支払って夫が受け取る契約ですが、実際は夫の口座から引落をしていますので、「夫が支払って、夫が受け取っている」わけですから事例Aと同じなのです。

また、親が保険料を払ってくれるケースもあります。事例Cの保険料引落口座が「妻の親」である場合や、「妻の親」が保険料を保険会社に全額振り込んでいる場合などです。

例えば「妻の親」が500万円払った生命保険の契約期間中に妻が亡くなり、夫が保険金1,000万円受け取ったとします。すると夫は1円も支払っていないのに「タダで」1,000万円もらったことになります。保険料を払ったのは妻の親なので、妻の親から夫への贈与税の対象となる可能性があります。このケースだとかなり高額な贈与税になる可能性もあります。

●契約形態を今一度確認しましょう

ご自身で保険証券、引落口座などを見れば確認は可能ですが、保険の種類によっては一般の方には判断が難しいこともあります。その場合はお近くの信頼できる保険営業マン、ファイナンシャルプランナーの方にまずはご相談ください。

保険契約とは大事なものです。だからこそ、これを機会にご家庭の保険契約を見直ししてみてはいかがでしょうか。

※税務上の詳細は、税理士やお近くの税務署におたずねください。

福本 知輝(ふくもと ともき) 

寺院コンサルタント
2級ファイナンシャルプランニング技能士
相続診断士 笑顔相続道正会員
終活カウンセラー

西日本を中心に寺院向けの生命保険、資産運用のご提案、檀信徒さま向けの相続相談業務を行っています。お寺ならではのお悩みに寄り添い、解決するお手伝いを致します。

【問い合わせ先】
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