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シニア向け分譲マンションの購入とその相続

公開日:2023-04-24 06:00

目次

豊かなシニアライフを過ごすために、自宅からアクティブシニア向けの住まいへ転居される方がいらっしゃるのをご存じですか。

今回は、「シニア向け分譲マンションの購入」が相続に与える影響について発信します。

まず、選択肢としては、健康型有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅などが挙げられますが、相続と深くかかわるものとしてシニア向け分譲マンションというものがあります。

シニア向け分譲マンションは、2022年6月時点で全国98物件の供給があります(2023年までに竣工予定を含む)。分布は特定エリアに集中しており、全国くまなく供給されているわけではありません。比較的、高額な物件も多いため、富裕層向けというイメージもあります。

(出典:東京カンテイ「シニア向け分譲マンションの供給動向について調査・分析」)

シニア向け分譲マンションの特徴としては、
・レストランやカラオケルームなどの娯楽設備の完備
・サークル活動や体操教室などのレクリエーションの充実
・所有権を購入するという契約形態
・所有権を得ることでリノベーションも自由、誰かに賃貸することも可能
・資産として相続人に相続できる

などがあります。

今回は、Aさんの事例を通して、シニア向け分譲マンションの購入時に相続という視点を持つことの大切さをお伝えします。ちなみに、Aさんは富裕層の方ではなく、自宅は所有していますが年金が主な生活資金である方です。

Aさんは、自分が所有する一軒家で一人暮らしでした。

Aさんは、自宅も老朽化していて、ひとりで住むには広すぎるし、住みやすいようにリフォームするにもお金がかかります。娘が1人いますが、一緒に住めないと言われています。

Aさんは、今後のことを考えようと、自宅購入したときの不動産業者に相談したところ、不動産業者からAさんにはシニア向けの分譲マンションの購入が提案されました。

Aさんはその提案を聞き、娘にも相談しました。初期費用は相当額かかるけど、その後の管理費などは年金で賄えるから大丈夫じゃないと娘が言うので、Aさんは自宅を売却して分譲マンションを購入しました。

分譲マンションは、駅から徒歩5分。充実した施設に広い中庭があり、看護士が常駐しています。年金と自宅売却の残金があれば問題なく生活できることから快適に住んでいたAさんですが、ある日このマンションに住む仲良くなった友人からこんな話を聞きました。

「このマンション、売ろうと思っても売れないし、自分が死んだあと家族に迷惑かけちゃう。同じ悩みを抱えている人、このマンションにたくさんいるのよ。」

Aさんは、この時自分が亡くなった後のことを何も考えず購入してしまったことに気が付いたのでした。

友達の言葉にはどんな意味があるのでしょうか。

Aさんが見落としていたことは何だったのでしょうか。

  • 施設やサービスが充実している代わりに月々の管理費が高く設定されており、
    相続でマンション所有者になった相続人は高い管理費を支払い続ける必要がある
  • 物件によっては入居の条件(例えば55歳以上など)があるので、
    相続人が条件に合わないと入居できない
  • 入居の審査もマンションの管理会社が行い、
    相続人の身体や精神の状態によっては入居を断られる可能性がある
  • 相続後に賃貸物件として貸す場合も入居条件が厳しいため
    賃貸に向かないケースがある
  • 売却しやすい物件かどうか。売れないマンションだと、
    負動産になりかねない

シニア向け分譲マンションはアクティブシニアにとっては、非常に快適で豊かな日常を提供してくれる物件です。

ただし、物件によっては、相続人に過度な負担を残してしまうケースもあります。

もし、シニア向け分譲マンションの購入を検討される場合は、契約内容をしっかり理解すること、そして、自分が亡くなった後のことも含めて家族だけでなく、不安な時は相続に詳しい専門家と一緒に検討することで、享受できる豊かさを次世代にも引継げるのではないでしょうか。

蓮見 倫代(はすみ みちよ)
笑顔相続道正会員
相続診断士
都内法律事務所でパラリーガルとして約20年勤務。

自身が経験した相続を通し、家族間のトラブルは相続放棄でも起こることを実感。そんな中でも「相続放棄をしても奪われない遺産」を受け継いでいることに気づけたことで相続の力を知る。「物」も「想い」も余すところなく次の世代へ引き継ぐ相続を目指し、各専門家と連携し日々奮闘中。

戸籍収集、相続発生後の相続手続きを得意としています。

【お問い合わせ先】
hasuminhelp@gmail.com