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相続相談ができる不動産業者の選び方

公開日:2023-04-03 06:00

目次

おひとりさまの終活相談を受けることが増えています。直近1週間で3件受けました。生涯未婚の方が増えていることもありますが、結婚していても、いずれはどちらかが先に亡くなります。結婚しているかどうかに関係なく、いずれはおひとりさまになる可能性は高いのです。

筆者は相続診断士5年、不動産屋の宅地建物取引士として19年のキャリアを持っており、相続診断士として学びを重ねながら、相続の知識と経験を持つ不動産業者として、相続や終活の相談を受けています。

このコラムでは、相続診断士であり宅地建物取引士でもある筆者が受けた、おひとりさま終活の相談事例を通して、相続診断士への相談こそが、不動産業者を含めた良い専門家と出会うきっかけとなり、問題解決への近道であることをお伝えします。

1.相続診断士とは?

相続診断士とは、相続が争族にならないように、円滑な相続手続きをサポートする専門家です。2021年12月時点で全国に43,076人の相続診断士がおり、彼らは相続に関する知識を継続的に学び、各分野の専門家とのネットワークを築いています。これにより、相続診断士は相談者からの相談内容に応じて、必要な専門家につなげる役割を果たしています。

2.おひとりさま終活の相談事例

あるおひとりさま終活の相談事例では、相続人のいない相談者から、「私が何も準備しないで死んだら、財産は国のものになってしまうのでしょうか?」や、「仲の良い親戚に財産を譲りたいのですが、何か良い方法はありますか?」といった話がありました。さらに深くヒアリングを重ねると、死後事務(例えば、葬儀、納骨、ライフラインの解約、病院代の支払いや債務の返済など)をやってくれる親戚がいないことにも不安があることがわかりました。相続診断士として相談内容を分析した結果、遺言書作成と死後事務委任契約が必要だと推測できましたので、相続診断士会で信頼関係を深めた、この分野の専門の司法書士と連携して対応することにしました。この対応は、相続診断士の定例会に参加し、相続の基礎知識を身につけ、相続診断士コミュニティの中で専門家との関係性を深めていたからこそできたことだと思います。

結果、相談者は司法書士に遺言書の作成と死後事務を依頼することで問題解決ができました。

3.一般的な不動産業者の対応

一般的な不動産業者は、不動産の取引を追い求めて営業活動をしています。そのため、相談者が不動産を所有していることが分かると、目先の利益を優先して売却を促すことが多いですし、不動産を所有してないことがわかれば、購入するメリットを強調することが多くなります。取引に進まないと判断されると、彼らはいつの間にか姿を消してしまいます。最近では、リースバックのような大してメリットがないと思われる提案を行い、売却を勧めるケースも増えています。確かに相談者が一歩を踏み出せない時などは、不動産業者が背中を押すことが必要な場合もありますが、一度売却した不動産は戻ってきません。細心の注意を払ってください。

4.相続診断士である不動産業者だからできること

先程の事例では、筆者は相談者からヒアリングを行い、司法書士を紹介して手続きを進めました。専門家を紹介しているだけのように感じるかもしれませんが、これこそが相続診断士の重要な役割の一つです。筆者はあくまで宅地建物取引士であるため、不動産以外の分野についての踏み込んだ話をすることはコンプライアンス違反になる可能性があります。相続診断士は、コンプライアンスについて細かく学んでいますので、法律を遵守して、各士業の専門領域を侵すようなことは避けます。

また、筆者が報酬を受領していないことから、読者の中には、相談しても無報酬であれば雑な対応になってしまうのではないかと不安に思う方もいるでしょう。しかし、相続診断士であれば、そのような心配は不要です。美辞麗句に聞こえるかもしれませんが、相続診断士である不動産業者は、報酬が無くても常に相談者に対して丁寧な対応を心がけています。その理由は、将来的に不動産取引が実現し、報酬を得られると考えているからです。

相続診断士である不動産業者が報酬を得る仕組みについて説明します。相続診断士は、相談内容が自身の業務範囲を超える場合、対応できる専門家へ相談者を橋渡ししようとする意識に切り替わります。その理由は、橋渡しを行った司法書士などから、別のタイミングで不動産案件が発生した際に、相談者を紹介してもらえる可能性が高まるためです。相続診断士である不動産業者は、目先の収益にとらわれず、将来を見据えた丁寧な対応ができる土壌として、相続診断士のコミュニティを活用しているのです。

一部、相談内容によっては有料相談の不動産業者もありますので、事前に不動産業者に確認してください。

5.相続の知識に疎い不動産業者

不動産業者であれば、不動産の取引は問題なく手続きできるでしょう。しかし、相続知識に疎い不動産業者が対応して、小規模宅地等の特例や空き家譲渡の3,000万円特別控除が利用できなかった例は多くあります。相談内容を俯瞰的に見て、相談者のメリットを総合的に提案できなければ、相続に関わる不動産が大きな不利益をもたらすこともあります。相続や終活に関する相談をする場合は、相続の知識を持った専門家に相談しましょう。

6.まとめ

筆者は、相続に関連する不動産の相談に際して、相続診断士である不動産業者を選ぶことをお勧めします。相続の知識や経験のない不動産業者に相談してしまうと、不利益を被る可能性が高まります。すべての相続診断士が同様の意識を持って対応しているわけではないかもしれませんが、相続診断士の資格があれば、定期的に相続知識を学び、相続の専門家チームと連携している可能性が高まり、相談者の問題解決に近づくでしょう。

不動産業者の選択は難しいものです。もし迷われている方がいらっしゃれば、不動産業者に直接相談するのではなく、お近くの弁護士、税理士、司法書士、行政書士、保険業などの相続診断士から紹介を受けるのも一つの方法です。相続診断士コミュニティの中にいる信頼できる不動産業者を紹介してくれるでしょう。

専門家から支持されている不動産業者を選ぶことが、より良い不動産業者を選ぶことにつながります

終活や相続のお悩みがある場合は、ぜひ一度、お近くの相続診断士に相談してみてください。

柏原 健太郎(かしわばら けんたろう)

株式会社クレス
NPO法人資産と暮らしの相談センター 理事
笑顔相続道正会員
宅地建物取引士、相続診断士、終活カウンセラー2級、2級ファイナンシャルプランナー
不動産業界19年、ご相談内容によって、弁護士、税理士、司法書士、行政書士などの各専門家と連携しながら、問題を解決していく不動産屋です。相続、離婚、借金の問題に誠心誠意取り組みます。

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