相続した不動産。
相続人は誰も住むつもりはない。建て替えも検討していない。アパートを建てたとしても管理できない。それなら、保有していても手間が増えるから、売却しようかしら。このようなケースで、不動産売却を進めようと、インターネットや知り合いに聞いて調べてみると、どうやら不動産売却には測量が必要みたい・・・
といった情報に行きつくことが多いようです。
このコラムでは、相続した不動産を売却する場合に、本当に測量をする必要性があるかないかについて重要度を3段階に分けて確認し、不動産売却に伴う測量について、専門家に相談する前の予備知識として確認していただきたいと思います。。
【1.不動産売却に測量は必要か?】
相続した不動産を売却する際に、測量する必要はあるのでしょうか?測量するには費用も時間もかかります。境界確定測量であれば、50万円前後から、期間も約1カ月~3カ月程度、土地の大きさや隣接地の数、公道など官所有地に隣接していれば、さらに費用も時間もかかります。手間もお金も時間もかかるのが測量です。
現実問題、費用も時間も無い人はたくさんいて、この場合は測量しないで売却するケースは多くあります。測量するに越したことはないのですが、しなくて済むケースもあるのです。
【2.測量しないで売却するケース】
不動産を売却したとしても売主には現金が残らない、いわゆるオーバーローンの場合は、測量費用を準備することは困難です。任意売却や破産による売却がこれにあたります。この場合、測量費用どころか、売却後の引越し費用の捻出で精一杯になりますので、測量しないまま売り出しますが、多くの場合で売却できています。
相続税申告の期限が迫っており、相続税の納税資金を確保したいけど、スタートが遅れてしまった場合、測量する時間がありません。また、測量にはトラブルがつきもので、隣接地所有者の所在がわからなかったり、同意してくれない人がいる場合などは、完了させるのに1年以上を要することもあります。その場合には、測量しないで売却を優先して進めることもあります。
そうは言っても、必ず測量しなければならないケースもあります。まずは、測量の基本用語、測量、現況測量、境界確定測量の意味を抑えた上で、本当に測量は必要なのかを考えていきましょう。
【3.測量とは】
測量とは何か。測量の代表的なものである、現況測量と境界確定測量をともに確認していきましょう。
<測量>
土地の位置や形状、面積などを測る作業のこと。
<現況測量>
現地にある「物」を測って測量図等を作成します。
<境界確定測量>
目に見えない「境界」を測って測量図等にします。また、隣接地土地所有者と境界線の確認をして書面化したものが、境界確認書、筆界確認書です。
【4.測量の重要度】
重要度をABCの3段階に分けて説明します。
- 重要度A 必ず測量しなければならないケース
- 重要度B 測量した方がメリットは大きい
- 重要度C どちらかと言えば測量した方が良い
重要度A 必ず測量しなければならないケース
所有している土地の一部を分筆して売却する場合は、境界確定測量が必要になります。たとえば、実家の敷地が広く、敷地の一部を売却する場合や物納、寄付、払い下げをする場合です。
※1個の土地を現す単位を筆といい、1筆、2筆と数えます。この筆ごとに地番がつけられることになっています。分筆とは、1筆を2筆以上に分割することです。
重要度B 測量した方が良い
築40年以上の戸建住宅の場合、1区画当たりの土地面積が現在のものよりも大きいことが多く、今から戸建住宅を建てるとしたら、2区画もしくは3区画以上で分譲できる土地が多くあります。この場合は、1区画で売るよりも2区画以上で売る方が単価を上げられる可能性が高まるので、買主は、一般のエンドユーザーよりも、戸建分譲業者の方が売却価格は高くなる可能性が高まります。境界確定測量を事前におこなうことで、確実にプラスポイントになるので、より多くの購入検討者を天秤にかけることができます。
重要度C どちらかと言えば測量した方が良いが、しなくても・・・
普通の戸建住宅用地で、2区画以上に区画割りできる規模でもなく、隣接地との境界がわかりやすい物件であれば、現況のままで、測量せずに売却できるケースは多くあります。そうはいっても、現況測量はやっておいた方が、購入検討者が検討をしやすくなることは確かです。
測量しない場合は、売買契約書に「境界非明示」という言葉を記載することで、売主は、境界明示の責任から逃れることができます。状況によっては、購入検討者や買主から、買主側の費用負担で測量したいと言ってくる場合もあるので、意向をよく確認しながら売買を進めていきましょう。
【5.お持ちの書類の確認】
まずは、手元にどんな書類があるかを確認しましょう。過去に測量をしているのに、再び測量してしまうような無駄はしないでください。測量の成果物として、境界確認書、筆界確認書、現況測量図などが必要に応じてあれば問題ありません。隣接地の一部しか境界確認書が無い場合は、その一部については有効な書面なので、全ての隣接地との境界確認をする必要は無くなります。つまり、測量費用が安くなりますので大切に保管してください。
一番有効な書面は、測量図が付いている境界確認書です。全ての隣接地との署名押印がある書面があれば、測量する必要性はほぼ無くなります。ほぼというのは、書面の作成が古いと再度測量をする必要がある場合もあるので、書面の作成時期も確認してください。2006年より前のものは、座標で管理されていない図面の可能性が高いので、改めて測量が必要な場合があります。専門家に確認してもらってください。
【6.まとめ】
測量が必要なのは、重要度Aの敷地の一部を売却するケースです。その他の重要度B、重要度Cの場合には、状況に応じて対応していく必要があります。測量することは、購入検討者や買主に、売買対象の土地の形状、面積、境界を明示することになるので、売却しやすくなるのは確かです。しかし、費用や時間が無い場合は、測量しないで売却する選択肢もあります。また、測量費用の支払いができるように、不動産の売却後に測量費用を支払いできるように調整できる場合もあります。
不動産を売却する場合は、測量の問題だけでなく、税制や登記、相続税の申告期限などにも考慮する必要がありますので、弁護士、税理士、司法書士、土地家屋調査士や測量士などの専門家とスムーズに連携ができる不動産業者に相談しましょう。これらの知識と経験を持った相続診断士である不動産業者が近くにいると安心です。
柏原 健太郎(かしわばら けんたろう)
株式会社クレス
NPO法人資産と暮らしの相談センター 理事
笑顔相続道正会員
宅地建物取引士、相続診断士、終活カウンセラー2級、2級ファイナンシャルプランナー
不動産業界19年、ご相談内容によって、弁護士、税理士、司法書士、行政書士などの各専門家と連携しながら、問題を解決していく不動産屋です。相続、離婚、借金の問題に誠心誠意取り組みます。
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