サブスクリプションサービスという言葉を耳にしたことはありますか。サブスクリプションサービスとは、月単位あるいは年単位で定期的に利用料を支払うことで、その期間内にサービスを利用できる仕組みのことです。例えば動画配信であれば、月額料金を支払うことで様々な動画を必要に応じて視聴できる定額制サービスのことです。
数年前までは、聞きなれない人も多かったと思いますが、今や、テレビ、映画、音楽、書籍とありとあらゆるものの配信サービスにおいて、このサブスクリプションサービスが主流となっています。
図表1「世界の動画配信市場規模・契約数の推移及び予測」を見れば、サブスクリプション(定額制)の動画配信契約数は右肩上がりに上昇していることがわかります。また、図表2「世界の音楽配信市場規模・契約数の推移及び予測」からも、音楽配信において、サブスクリプションの契約数は上昇しており、今後もサブスクリプション契約数が増加するか、もしくは、横ばいであっても一定数の契約が存在することは当然予想できます。
【図表1】世界の動画配信市場規模・契約数の推移及び予測
(出典)Omdia/令和3年版情報通信白書
【図表2】世界の音楽配信市場規模・契約数の推移及び予測
(出典)Omdia/令和3年版情報通信白書
【サブスクリプション契約の具体例】
サブスクリプション契約と言われても、まだピンとこない人もいるかもしれないのでいくつか具体例を挙げてみます。
1 映画やドラマ、アニメなどの動画配信
Netflix、Hulu、U-NEXT、TVer、Amazonプライム・ビデオ
2 音楽配信
Spotify、Apple Music、YouTube Music
3 書籍、コミック
Kindle Unlimited、めちゃコミ、Shelf
この他にも、食品、車、洋服、バック、時計、アクセサリー、ゲーム、ワークスペース、パソコン、ソフトウェア、コンタクトレンズ、旅行、家具、家電、ビジネスコンテンツなどありとあらゆる分野でサブスクリプションサービスが提供されています。
【サブスクリプション契約おける死亡後の手続き】
ここまで述べてきたように、サブスクリプション契約は日常生活の中で利用されているケースが増えてきています。
ここからは相続の手続きでサブスクリプション契約をどう扱っていくかをお伝えします。
家族がサブスクリプション契約をしたまま死亡した場合、相続人は、サブスクリプション契約の有無などを見つけ、契約解除を行い、未払金があればその支払いをする必要があります。
まず、サブスクリプション契約があるかないか、あればどこと契約しているかの確認をしなくてはなりません。
被相続人がサブスクリプション契約について、何かしらの情報を残していれば、相続人はそれぞれの契約元に対し、死亡の通知を行い、解約の手続きを進めていくことになります。
もし、サブスクリプション契約について何の情報もない場合は、支払方法からその契約を探す必要があります。実際、筆者も、相続の手続きを行う際に、クレジットカードの利用明細書や通帳を確認して、サブスクリプション契約がないか調査をします。しかし、見ればすぐわかるかというと、なかなか難しい場合もあります。
ちなみに、筆者もいくつかのサブスクリプションサービスを利用しています。ここに筆者のクレジットカード利用明細のサブスクリプション契約部分を抜き出してみました。
クレジットカード明細にはこの他にも、多くの利用明細が並んでいて、その中から、サブスクリプションサービスを本人以外の相続人が見つけ出すことは、実はなかなか難しいものです。しかも、明細内の「ドコモ決済サービス等」の請求の中にも、サブスクリプション利用料が含まれているのですが、このクレジットカード明細では、その詳細が全く分かりません。この場合ドコモに別途問い合わせる必要が出てきます。サブスクリプション契約が特定できたとしても、次はどこに連絡をすればいいかを調べる必要があります。
手間暇がかかるからクレジットカードを止めてしまえばいいのではないかという考え方もあります。しかし、筆者も相続手続きで経験したことですが、クレジットカードの契約を停止しても、サブスクリプション契約を解除したことにはならない場合も多々あり、未払金がかさんでいくという状況になります(サービス提供元によっては、契約者が死亡しているので、死亡した日からの分は請求しないという場合もあります。)。クレジット決済ができなくなり、未払いが数か月続くと、サービス提供元から利用料金の請求書が郵送されてくるケースがあります。そうなればようやく連絡先が分かり、契約の解除などの対応できるようになるのです。毎月払いの契約であれば、数カ月で届くものもありますが、年払いであれば、いつ、いくら請求が来るかわかりません。
【サブスクリプション契約解除時に気を付けたい事】
サブスクリプション契約で利用しているサービスには、被相続人のブログやメルマガを管理するサービスや、写真のデータの保存に紐づいている時もあります。一度解約してしまうと、被相続人が残したものが消去され二度と戻ってこない場合もあるので、その契約がどのようなサービスを利用するためのものかを確認したうえで、解約の手続きをする必要があります。
【まとめ】
サブスクリプションサービスは利用している時は非常に便利なものです。毎月クレジットカードや引き落としなどで利用料金を支払うため、本人でさえも契約していることを忘れてしまうこともあります。
クレジットカードの利用明細を見て、今契約しているサブスクリプションサービスを確認してみてください。契約しているはずのものがない場合は、できれば決済方法を変更して、せめてクレジットカードを見れば分かるようにしましょう。
契約していたことを忘れていて、利用していないものはすぐに解約しましょう。
そして、契約を残すサービスについては、エンディングノートや財産目録に①支払先名②支払先の連絡情報③支払い方法④金額⑤サービス内容をまとめておきましょう。そうすることで、相続人はすぐに手続きをすることが可能になること、また、大切な思い出をしっかり残すことも可能になります。
蓮見 倫代(はすみ みちよ)
笑顔相続道正会員
相続診断士
都内法律事務所でパラリーガルとして約20年勤務。
自身が経験した相続を通し、家族間のトラブルは相続放棄でも起こることを実感。そんな中でも「相続放棄をしても奪われない遺産」を受け継いでいることに気づけたことで相続の力を知る。「物」も「想い」も余すところなく次の世代へ引き継ぐ相続を目指し、各専門家と連携し日々奮闘中。
相続発生後の相続手続きを得意としています。
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